労災で後遺障害10級の金額とは?慰謝料や逸失利益の計算 

労災で後遺障害10級の場合、入通院慰謝料として約100万円〜約200万円、後遺障害慰謝料として550万円、さらに逸失利益を請求できる可能性があります

労災保険からも後遺障害に関する給付金は出ますが、その給付金では後遺障害慰謝料や逸失利益カバーできないことがほとんどです。

以下では、労災で後遺障害10級の場合の労災保険からの支給、慰謝料、逸失利益、労災の後遺障害10級で賠償金を受け取るポイントなどについて、詳しく解説しています。

是非とも参考にしてください。

労災で後遺障害10級とは?

労災で後遺障害10級とは、労働者災害補償保険法施行規則の障害等級表に定められている10等級に該当することをいいます。

後遺障害10級の障害等級表については、下記をご覧ください。

第10級
  1. 1. 一眼の視力が〇・一以下になつたもの
    1-2 正面視で複視を残すもの
  2. 2. そしやく又は言語の機能に障害を残すもの
  3. 3. 十四歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
    3-4 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
  4. 4. 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
  5. 5. 削除
  6. 6. 一手の母指又は母指以外の二の手指の用を廃したもの
  7. 7. 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
  8. 8. 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
  9. 9. 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
  10. 10. 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
  11. 11. 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの

 

 

労災で後遺障害10級|取得できる損害費目

労災事故にあった従業員の主な損害としては以下の項目が考えられます。

損害項目 損害の内容
治療費 事故によるケガや病気に対する治療費、入院費、薬代など
休業損害 労災事故により仕事ができなくなって、給料が減ってしまうことに対する補償
入通院慰謝料 労災事故で入院や通院をせざるを得なくなったことに対する慰謝料
後遺障害慰謝料 労災事故による負傷あるいは病気によって後遺障害が残ってしまった場合の慰謝料
逸失利益 後遺障害によって働きづらくなり、将来、収入が減ってしまうことに対する補償

このうち、労災保険から補償される損害項目としては、以下の項目があります。

給付項目 補償の内容
療養(補償)等給付 治療費、入院料、移送費など通常療養のために必要な場合に支給される給付
休業(補償)等給付 労働者が労働災害によって働けなくなった際に支給される給付
障害(補償)等給付 業務上又は通勤による傷病が治った(治ゆ)あと、身体に一定の障害が残った場合に支給される給付
傷病(補償)等年金 療養補償給付(療養給付)を受ける労働者の傷病が療養開始後1年6か月経過しても治らず、その傷病による障害の程度が傷病等級表に定める傷病等級に該当し、その状態が継続している場合に支給される給付

労災保険では、治療費、休業損害の一部、後遺障害の賠償の一部が支払われますが、慰謝料については支払いはありません。

また、後遺障害の賠償については、あくまで一部の支払いにとどまります。

 

 

後遺障害10級の労災保険からの支給

後遺障害10級が認定された場合、労災保険から、障害補償等給付、障害特別支給金、障害特別一時金が支給されます

以下では、10級の後遺障害等級に該当した場合の労災保険からの後遺障害部分の支給額について、具体例で解説します。

具体例の前提は以下のとおりです。

具体例
災害の種類:業務災害
年齢:42歳
事故日:7月10日
ケガの内容:骨折などレントゲンで確認できる障害を負っている
年収:700万円(月額50万円、ボーナスは50万円が2回の計100万円)
給付基礎日額:1万6483円
算定基礎日額:2739円

「給付基礎日額」とは、障害補償等給付の金額を算出する際に用いる1日単価であり、労災事故の直近3ヶ月の給与をその暦歴の日数で除して計算します。

今回のケースで、給料3ヶ月分の150万円を事故直近の6月、5月、4月の合計91日で除した金額である1万6483円が給付基礎日額となります。

「算定基礎日額」は、障害特別一時金の金額を算出する際に用いる1日単価であり、ボーナスなど3か月をこえる期間ごとに支払われる賃金の総額を365日で除して計算します。

今回のケースでは、ボーナス100万円を365で除した2739円が算定基礎日額となります。

※以下の逸失利益の計算については、一般的な概算を示しています。

各等級の号によっては、逸失利益が認められづらいものもあり、以下の金額に満たないケースもあります。

具体的事例において逸失利益の金額を計算したい場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。

労災の後遺障害10級に該当した場合、労災保険からは支給額は以下のとおりです。

支給項目 支払日数(金額)
障害補償等給付 302日
障害特別支給金 39万円
障害特別一時金 302日

障害補償等給付については、1万6483円 × 302日 = 497万7866円となります。

障害特別一時金については、2739円 × 302日 = 82万7178円となります。

労災からの支給額については、497万7866円 + 82万7178円 + 39万円 = 619万5044円となります。

等級毎の金額や認定の流れについて、詳しくは以下ページをご覧ください。

 

 

労災の後遺障害10級の慰謝料はいくら?

慰謝料とは、被災した従業員が被った精神的苦痛に対して支払われるものになります。

会社に安全配慮義務違反が認められる場合には、入通院慰謝料と後遺障害10級の後遺障害慰謝料を請求することができます。

 

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、労災事故によって負傷してしまったことで受けた精神的苦痛に対する賠償金のことをいいます。

入通院慰謝料の金額は、原則として通院期間・通院日数やケガの程度を考慮して算出します。

入通院慰謝料については、「赤い本 公益財団法人日弁連交通事故相談センターの入通院慰謝料基準」で算出される慰謝料基準額が一応の目安になると考えられます。

具体的には、入通院慰謝料の金額としては、以下の表のとおりとなります。

※縦軸が通院期間、横軸が入院期間となります。

ケガの程度:重症の場合

 

ケガの程度:軽症の場合

例えば、労災事故によって、従業員が右手親指を骨折して、210日間(=7ヶ月間)通院が必要だった場合、ケガの程度が重症だった場合の表を用いて計算します。

そこで、上記表の縦軸(通院)7ヶ月、横軸(入院)0ヶ月が交差するところをみると、入通院慰謝料の金額は124万円となります。

 

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、従業員が労災事故にあったことで、従業員の身体等に一定の障害が残ってしまった場合に請求できる慰謝料のことをいいます。

後遺障害には1級〜14級までの等級があり、後遺障害慰謝料の金額はその等級に応じて決まっています。

後遺障害10級の後遺障害慰謝料の相場は、550万円となります。

弁護士基準(裁判基準)の後遺障害慰謝料の金額は以下のとおりです。

等級 慰謝料額
第1級 2800万円
第2級 2370万円
第3級 1990万円
第4級 1670万円
第5級 1400万円
第6級 1180万円
第7級 1000万円
第8級 830万円
第9級 690万円
第10級 550万円
第11級 420万円
第12級 290万円
第13級 180万円
第14級 110万円

等級毎の金額や認定の流れについて、詳しくは以下のページをご覧ください。

 

 

労災の後遺障害10級の逸失利益はいくら?

逸失利益とは、後遺障害が残ったため、減額することとなった将来の収入のことをいいます。

被災した従業員に後遺障害が生じた場合の逸失利益は、一般的には次のように計算します。

収入金額(年収) × 労働能力喪失割合 × 稼働年数に対応するライプニッツ係数

収入額については、労災事故前の現実の収入を基準とするのが原則ですが、将来の昇給については、給与規定等から確実に昇給が見込まれるような場合には、これを考慮することができます。

労働能力喪失割合は、労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発551号)別表労働能力喪失率表(表1)が参考になります。

後遺症等級 労働能力喪失率
1級 100%
2級 100%
3級 100%
4級 92%
5級 79%
6級 67%
7級 56%
8級 45%
9級 35%
10級 27%
11級 20%
12級 14%
13級 9%
14級 5%

参考:労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発551号)|別表労働能力喪失率表(表1))

また、稼働年数は、原則として症状固定日から67歳までと考え、将来得られる収入を先に得ることに対して、その利息分を控除するために、稼働年数に対応するライプニッツ係数を用いて計算するのが一般的です。

具体例 年齢が42歳で年収が600万円の場合

逸失利益は、以下の計算方法で計算します。
600万円 × 27% × 17.4131(25年のライプニッツ係数) = 2820万9222円よって、年齢が42歳で年収が600万円の場合の逸失利益は、 2820万9222円となります。

 

 

労災の後遺障害10級でもらえるその他の賠償金

上記した治療費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益以外の賠償項目としては、通院交通費、入院雑費、入院付添費・通院付添費があります。

これらの損害項目も会社に安全配慮義務違反が認められる場合に請求することができます。

 

通院交通費

通院交通費は、自家用車の場合には燃料代として1kmにつき15円、公共交通機関の場合は実費を請求することができます。

 

入院雑費

入院雑費とは、労災事故にあってしまい入院が必要になった場合に、入院中に支出した費用のことをいいます。

例えば、入院中に使用する衣類、寝具、おむつ代、洗面具、食器などが考えられます。

入院雑費は、入院1日あたり1500円を請求することができます。

入院雑費について、詳しくは以下ページをご覧ください。

 

入院付添費・通院付添費

入院付添費・通院付添費とは、入院や通院にともない、ケガの内容や程度を考慮し、ご家族(近親者)の付き添いが必要な場合に、被災者本人の損害として請求できるものになります。

入院付添費は、付き添い1日あたり6500円となります。

通院付添費は、付き添い1日あたり3300円となります。

 

 

労災の後遺障害10級で賠償金を受け取るポイント

労災の後遺障害10級の賠償金を受け取るポイント

過失相殺の主張に注意しましょう

過失相殺とは、労災事故が発生したことについて、労働者本人にも落ち度があった場合に、その程度に応じて損害額を一定割合減額するというものです。

過失相殺は、会社側から主張されることが多く、過失相殺が認められれば、会社側の賠償金額が減額されます。

過失割合は、労災事故時の状況、従業員の職務内容、会社の指導内容等、様々な事情を考慮して決定されます。

労災事故の過失割合について、詳しくは以下ページをご覧ください。

 

会社側が提示する示談内容は専門家に確認してもらいましょう

会社側が作成した示談内容は、判例上認められる賠償額を大きく下回っている可能性があります

一度サインして示談してしまうと、示談をやり直すことは非常に困難であるため、しっかりと内容を確認してからサインすることが重要となります。

会社側から示談を提示された場合は、労災に強い弁護士に相談されることをおススメします。

 

労災に強い弁護士に相談しましょう

示談交渉や裁判で適切な賠償を獲得できる

従業員の方やご遺族の方で賠償額の計算をして会社側と交渉することは、とても大変なことです。

弁護士に依頼した場合には、弁護士が、裁判所で使用される最も高い賠償水準で賠償額を計算し、示談交渉を行います

もし、示談交渉で会社側が誠意のある回答をしない場合には、裁判をして適切な補償の獲得を目指します。

 

会社との対応を弁護士に全て任せることができる

怪我の後遺症で悩まされているときに、会社とやり取りすることは大きな負担です。

また、従業員の方が亡くなっている場合には、ご家族が会社とやり取りしなければなりません。

弁護士に依頼した場合には、弁護士が窓口となり会社とのやり取り全般を弁護士が全て行いますので、従業員やそのご家族が対応する必要はなくなります。

 

労災申請のサポートを受けることができる

労災の申請は、会社が代行して行ってくれることもありますが、会社によっては全く対応してくれなかったり、事案に争いがあるような場合には対応してもらえない可能性もあります。

こうした場合には、自分で申請の準備をする必要がありますが、書類の準備や作成はとても大変です。

弁護士に依頼した場合には、労災申請を代行して申請してもらうことができます。

 

適切な後遺障害認定を受けることができる

後遺障害等級に該当した場合には、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求することができます。

認定される等級によっても変わりますが、後遺障害に認定されるかどうかで賠償額が数十万円〜数千万円変わってくることがあります

弁護士に依頼した場合には、後遺障害等級で最も大切な書類の一つである後遺障害診断書のチェックや、事案によって意見書の作成などのサポートを受けることができ、適切な後遺障害認定が期待できます。

 

疑問や不安をその都度解消できる

労災事故にあって、仕事を休んでいる最中には、後遺症は残らないか、適切な補償をしてもらえるのかなど、体のことや賠償のことで様々な不安や疑問が生じます。

弁護士に依頼している場合には、そうした不安や疑問が出れば、その都度、アドバイスや見通しについて話を聞くことができ、不安や疑問をその都度解消することができます。

労災事故で弁護士に相談すべきメリットについて、詳しくは以下ページをご覧ください。

 

 

労災の後遺障害10級の解決事例

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないように内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

  • 依頼者:会社側(建設業を営む株式会社)
  • 相手方:現場作業員(Yさん50代)
  • 解決までの期間:約1年8か月

Yさんは、会社が請け負った作業現場で現場作業員として、同僚であるAさんと同じ現場で作業していたところ、ちょっとしたことで口論になりました。

その場はすぐに収まりましたが、同日の終業前に再び口論となり、揉み合いになって、Yさんは転倒しました。

その際に、Yさんは、手首を骨折してしまいました。

その後、Yさんが、労災申請を行ったところ、業務災害として認められ、後遺障害10級の認定がなされました。

Yさんは、この等級に基づき、会社に対して約4000万円を請求してきました。

会社は、Yさんが骨折したのは、Yさん自身に責任があると考えていました。

そこで、会社は、Yさんからの請求について当事務所の弁護士に相談し、今後の対応を全て依頼されたのです。

弊所にご依頼した結果、以下の金額で解決することができました。

従業員側の請求金額 結果 利益
4000万円 350万円 3650万円減額

労災の後遺障害10級の解決事例について、詳しくは以下ページをご覧ください。

 

 

労災の後遺障害10級についてのQ&A

労災の後遺障害10級で一時金はいくらもらえる?

労災で後遺障害10級に認定された場合、労災保険から受け取ることができる一時金には、①障害補償一時金、②障害特別一時金、③障害特別支給金(一時金)の3種類があります。

労災の後遺障害10級に該当した場合、労災保険からは支給額は以下のとおりです。

支給項目 支払日数(金額)
障害補償等給付 302日
障害特別支給金 39万円
障害特別一時金 302日

詳しくは前述した「後遺障害10級の労災保険からの支給」で解説しておりますので、ご参照ください。

 

労災で後遺障害10級に認定される確率は?

労災の後遺障害の認定率の正確な数字は、明らかではありませんが、交通事故の後遺障害の認定率は、5%前後と言われています。

労災は、被災した従業員の救済を目的とする部分もあるため、交通事故の後遺障害の認定よりも、やや緩く認定される傾向があります。

 

 

まとめ

  • 労災で後遺障害10級とは、労働者災害補償保険法施行規則の障害等級表に定められている10等級に該当することをいう
  • 労災保険では、治療費、休業損害の一部、後遺障害の賠償の一部が支払われるが、慰謝料については支払われない
  • 後遺障害10級の後遺障害慰謝料の相場は、550万円である
  • 労災で後遺障害10級に認定された場合、労災保険から受け取ることができる一時金には、①障害補償一時金、②障害特別一時金、③障害特別支給金(一時金)の3種類がある
  • 過失相殺は、使用者側から主張されることが多く、過失相殺が認められれば、使用者側の賠償金額が大きく減額されることがある

当法律事務所では、労災事故を多数取り扱っており、労災事故などの人身障害に詳しい弁護士が在籍しております。

労災事故の被害にあって後遺障害等でお困りの方のために、当法律事務所では、対面でのご相談だけではなく、オンライン相談や電話相談でも相談を受け付けております。

全国各地からお気軽にご相談、ご依頼していただくことができるため、少しでもお困りの方はぜひ1度ご相談ください。

 

 

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