労働者は、業務中や通勤中に事故にあった場合、労働監督基準署へ必要な書類を提出することによって、労災指定病院での無償の治療や各種給付金を受給することができます。
具体的な給付内容としては、療養(補償)等給付、休業(補償)等給付、障害(補償)等給付、など様々な給付があります。
もっとも、労災の申請は、補償の内容によって提出する書類が異なるため、一見するとわかりにくいものです。
この記事では、労災の請求をするために必要となる書類の書き方やポイントを、解説していきます。
労災の請求とは
労災の請求とは、労働者が、業務中または通勤中にケガをしたり、病気になったり、あるいは死亡した場合、国に対して補償や給付を受けるための請求を行うことです。
なお、労災とは、正確には「労働災害」といい、労災保険とは「労働者災害補償保険」といいます。
労災には、業務中に生じた災害、通勤中に生じた災害、第三者の行為によって生じた災害(第三者行為災害)があります。
業務中に生じた災害とは、例えば、建築現場で働いているときに、物が落ちてきたことによって、ケガをした場合です。
通勤中に生じた災害とは、例えば、自転車で通勤途中に車に衝突されてケガをしたような場合です。
第三者行為災害とは、例えば、業務に関連して第三者から暴行を受けたような場合です。
業務中の災害について、詳しくはこちらをご覧ください。
通勤災害について、詳しくはこちらをご覧ください。
労働者が会社に対して、会社の責任によって生じた損害の賠償を請求する場合、労働者が会社側の過失を立証する必要があり、立証のハードルは高いものです。
そこで、労働基準法(75条以下)は、会社側の過失の有無を問わずに、会社側に一定の責任を課すによって(無過失責任)、労働者の保護を図っています。
さらに、労働者災害補償保険法(労災法)は、労働者を使用する全事業者から保険料を徴収し、政府が労働者に直接保険金を給付することによって、労働者の保護を図っています。
労働者は、労災法に基づく労災の請求を行うことによって、様々な給付や支援を受けることができます。
もっとも、労災の請求は、いつまでもできるものではなく、時効によって請求できない場合がありますので、注意が必要です。
労災請求の手続きの流れ
療養(補償)等給付の請求手続きの流れ
療養(補償)等給付の請求には、「療養の給付」の請求と「療養の費用の支給」の請求に分けることができます。
療養の給付とは、労働災害によって被災した従業員が、労災指定病院で直接治療を受けることをいいます。
療養の費用の支給とは、治療を受けた病院が労災指定病院でなかった場合、自分で治療費を立替えた後、国から治療費の後払いを受けることをいいます。
ここでは、「療養の給付」の請求の手続きと「療養の費用の支給」の請求の手続きに分けて解説していきます。
療養の給付の請求手続き
療養の給付の請求は、①被災した従業員が労災指定病院から診療を受け、②会社から療養給付の請求書に事業主の証明をもらい、③必要事項を記載した療養給付の請求書を労災指定病院に提出することによって行われます。
労災指定病院は、④請求書を所轄労働局へ提出し、⑤所轄労働局は労災指定病院に対して、治療費を支払います。
会社は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明が求められたときは、すみやかに証明をしなければなりません(労災法23条2項)。
仮に、会社が証明を拒むなどやむを得ない事情がある場合には、事業主証明欄が空白であっても請求手続きに支障はありません。
労災保険が適用された場合、一般の健康保険(被用者保険・国民健康保険)は、原則として適用されません(健康保険法1条、国民健康保険法56条)。
業務災害および通勤災害については、労災保険が優先適用されるためです。
もっとも、労災扱いにすべきところ、誤って健康保険で受診してしまった場合、診察から日が経っていないようであれば、初診から労災扱いに切り替えられる場合があります。
すでに健康保険扱いで事務処理が進行している場合は、加入する健康保険に対して、健康保険が負担した分を返納したうえで、自己負担分と返還金の合計を労災保険に費用請求することになります。
なお、処方箋によって病院外の薬局で薬を受ける場合、当該薬局が労災指定の薬局であれば、当該薬局に対しても請求書の提出が必要になります。
療養の費用の支給の請求手続き
療養の費用の支給を受けるためには、まず、①被災した従業員が指定病院等以外から診療を受け、②会社から療養の費用の支給の請求書に事業主の証明をもらいます。
被災した従業員は、③当該請求書に医師の証明をもらったうえで、④当該請求書を所轄労働局に提出し、労災認定された後、⑤所轄労働局から治療費の支払いを受けます。
療養(補償)等給付は、業務災害または通勤災害でケガをした場合、病気になった労働者が治療などを必要とする場合等において、傷病等が治癒するまで支給されます。
傷病等が治癒するとは、身体の諸機関や組織が健康時の状態に完全に回復した状態だけでなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態(症状固定)のことをいいます。
この状態に至った場合には、療養補償給付は支給されません。
治癒した後に後遺障害が残った場合は、障害の程度に応じて、障害補償給付を受けることができます。
障害補償給付の手続きについては後ほど解説します。
休業(補償)等給付の請求手続きの流れ
休業(補償)等給付を受けるためには、請求書に必要事項を記載し、会社から①事業主の証明、病院から①医師の証明を記載してもらいます。
②従業員は当該申請書を所轄労働局に提出し、国の審査を経た後、③休業(補償)等給付がされます。
労働者が、業務上または通勤による負傷や疾病による療養のために労働することができず、そのために賃金を受けていないときで、その休業が4日以上にわたる場合、4日目以降の休業について、休業(補償)等給付と休業特別支給金が支給されます。
休業初日を含む3日間(待機期間)については、休業(補償)等給付と休業特別支給金は支給されないため、業務災害の場合については、事業主が休業補償(1日について平均賃金の60%)を支給することになります。
休業(補償)等給付の支給要件は以下のとおりです。
休業(補償)等給付の支給要件
- ① 療養していること
- ② 労働することができないこと
- ③ 賃金を受けていないこと
休業(補償)等給付の支給額は以下のとおりです。
支給額
- 休業(補償)等給付=(給付基礎日額×0.6)×休業日数
- 休業特別給付金=(給付基礎日数×0.2)×休業日数
傷病(補償)等年金の請求手続きの流れ
傷病(補償)等年金は、業務上の事由または通勤により負傷し、または疾病にかかった労働者が、療養の開始後1年6ヶ月を経過した日またはその日以降において、次の要件に該当する場合に支給されます。
- ① その負傷または疾病が治っていないこと
- ② その負傷または疾病による障害の程度が傷病等級表の傷病等級に該当すること
傷病(補償)等年金の支給・不支給の決定は、所轄の監督署長の職権で行われるため、被災労働者が請求手続きを行うことはありません。
療養開始1年6ヶ月を経過し、所轄の労基署から「傷病の状態等に関する届」の提出が求められれば、医師の診断書、厚生年金等の加入及び受給状況等の届などを添付し、提出することになります。
傷病(補償)等年金の支給がなされると、それまで休業(補償)等給付を受給していれば、以降の支給はされなくなります。
ただし、療養(補償)等給付は引き続き受給することができます。
障害(補償)等給付の請求手続きの流れ
業務災害または通勤災害による負傷や傷病が治ったときに、身体に一定の障害が残った場合には、その残った障害の程度に応じて障害(補償)等給付がされます。
障害(補償)等給付を受けるためには、まず、①被災した従業員が会社から障害(補償)等給付支給請求書に事業主の証明をもらい、②医療機関から請求書の裏面に医師または歯科医師の診断を記入してもらいます。
被災した従業員は、③当該請求書を所轄労働局に提出し、支給決定がされた後、④所轄労働局から障害(補償)等給付を受けます。
障害(補償)等給付の内容
労災保険では、障害(補償)等給付の対象となる約140種類の障害を、その障害の程度に応じて第1級から第14級まで14段階に区分して「障害等級表」を定めています。
障害が残った場合に受けられる給付の内容は以下のとおりです。
障害等級第1級から第7級に該当するとき | 障害(補償)等年金 障害特別支給金 障害特別年金 |
---|---|
障害等級第8級から第14級に該当するとき | 障害(補償)等一時金 障害特別支給金 障害特別一時金 |
障害(補償)等給付の支給額は以下のとおりです。
【 障害等級第1級〜第7級まで 】
障害等級 | 障害(補償)等年金 | 障害特別支給金 | 障害特別年金 |
---|---|---|---|
支給方法 | 年金 | 一時金 | 年金 |
第1級 | 給付基礎日額の313日分 | 342万円 | 算定基礎日額の313日分 |
第2級 | 給付基礎日額の277日分 | 320万円 | 算定基礎日額の277日分 |
第3級 | 給付基礎日額の245日分 | 300万円 | 算定基礎日額の245日分 |
第4級 | 給付基礎日額の213日分 | 246万円 | 算定基礎日額の213日分 |
第5級 | 給付基礎日額の184日分 | 225万円 | 算定基礎日額の184日分 |
第6級 | 給付基礎日額の156日分 | 192万円 | 算定基礎日額の156日分 |
第7級 | 給付基礎日額の131日分 | 159万円 | 算定基礎日額の131日分 |
【障害等級第8級〜第14級まで】
障害等級 | 障害(補償)等一時金 | 障害特別支給金 | 障害特別一時金 |
---|---|---|---|
支給方法 | 一時金 | 一時金 | 一時金 |
第8級 | 給付基礎日額の503日分 | 65万円 | 算定基礎日額の503日分 |
第9級 | 給付基礎日額の391日分 | 50万円 | 算定基礎日額の391日分 |
第10級 | 給付基礎日額の302日分 | 39万円 | 算定基礎日額の302日分 |
第11級 | 給付基礎日額の223日分 | 29万円 | 算定基礎日額の223日分 |
第12級 | 給付基礎日額の156日分 | 20万円 | 算定基礎日額の156日分 |
第13級 | 給付基礎日額の101日分 | 14万円 | 算定基礎日額の101日分 |
第14級 | 給付基礎日額の56日分 | 8万円 | 算定基礎日額の56日分 |
障害(補償)等年金
障害(補償)等年金は、給付基礎日額に等級により定められた給付日数を乗じて年金額を算出します。
ただし、同一の事由により障害厚生年金、障害基礎年金の支給を受ける場合は減額調整されます。
障害特別支給金
障害(補償)等年金が決定されたときに、原則として障害等級ごとに定められた定額が一時金として支給されます。
障害特別年金
負傷または発病以前1年間にボーナス等の特別給与が支給されていた場合は、障害特別年金が支給されます。
障害特別年年金は、負傷または発病以前1年間にボーナス等の特別給与額などにより算出される「算定基礎日額」に等級により定められた給付日数を乗じて年金額を算出されます。
障害(補償)等年金及び障害特別年金は、支給要件に該当することとなった月の翌月分から支給され、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の6期に、それぞれの前の2ヶ月分が支払われます。
特別支給金の支給申請は、原則として障害(補償)等給付の請求と同時に行うこととなっており、障害(補償)等給付と同一の様式となっています。
障害(補償)等年金前払一時金
障害(補償)等年金を受給することとなった者は、障害等級に応じて定められた日数を年金の前払いとして受けることができます。
障害(補償)等年金前払一時金は、原則として年金の請求と同時に請求します。
ただし、年金の支給決定の通知があった日の翌日から1年以内であれば、障害(補償)等年金を受けた後でも請求することができます。
障害(補償)等年金差額一時金
障害(補償)等年金を受けている者が死亡した場合において、すでに支給された障害(補償)等年金と障害(補償)等年金前払一時金の合計額が障害等級に応じて定められている一定額に満たない場合には、その差額に相当する額の障害(補償)等年金差額一時金が遺族に対して支給されます。
介護(補償)等給付の請求手続きの流れ
介護(補償)等給付は、一定の障害(補償)年金または傷病(補償)年金受給者であって、常時または随時介護を要する者に支給されます。
障害(補償)等給付を受けるためには、まず、①被災した従業員が介護人から介護(補償)等給付請求書・添付書類に記名・押印をしてもらい、②医療機関から医師または歯科医師の診断書をもらいます。
被災した従業員は、③当該請求書を所轄労働局に提出し、支給決定がされた後、④所轄労働局から障害(補償)等給付を受けます。
障害(補償)等年金の支給要件は以下のとおりです。
- ① 一定の障害の状態(常時介護状態・随時介護状態)に該当すること
- ② 民間の有料介護サービス、親族または友人・知人により、現に介護を受けていること
- ③ 病院または診療所に入院していないこと
- ④ 十分な介護サービスを提供されている施設(老人保健施設、障害者支援施設、特別老後老人ホームなど)に入所していないこと
遺族(補償)等給付の請求手続きの流れ
遺族(補償)等給付は、労働者が業務上の事由または通勤により死亡したとき、その遺族に対して、遺族補償給付(業務災害・複数業務要因災害)または遺族給付(通勤災害)が支給されます。
遺族(補償)等給付を受けるためには、まず、①遺族が医療機関から死亡診断書を取り寄せ、②市区町村から戸籍謄本を取り寄せます。
次に、③会社から遺族(補償)等給付の請求書に事業主の証明をもらい、④当該請求書を所轄労働局に提出し、支給決定がされた後、⑤所轄労働局から遺族(補償)等給付がされます。
遺族(補償)給付には、「遺族(補償)等年金(複数事業労働者遺族年金含む)」と「遺族(複数事業労働者遺族一時金含む)」の2種類があります。
この他に、遺族(補償)年金の前払いを受けられる「遺族(補償)年金前払一時金」があります。
葬祭料等(葬祭給付)の請求手続きの流れ
葬祭料等(葬祭給付)は、葬祭費用の補填を目的としており、業務災害の場合には「葬祭料等」、通勤災害の場合には「葬祭給付」が支給されます。
葬祭料等(葬祭給付)の支給を受けるためには、まず、①遺族等が医療機関から死亡診断書を取り寄せ、②会社から葬祭料等(葬祭給付)の請求書に事業主の証明をもらいます。
次に、③当該請求書を所轄労働局に提出し、支給決定がされた後、④所轄労働局から葬祭料等(葬祭給付)の支給がされます。
葬祭料等(葬祭給付)の支給対象は遺族に限りませんが、通常は葬祭を行う遺族が該当します。
葬祭料(葬祭給付)から支給される額は以下のとおりです。
(この額が給付基礎日額の60日分に満たない場合には、給付基礎日額の60日分が支給額となります。)
第三者行為災害の手続きの流れ
業務上または通勤上に発生した災害の中には、第三者の行為によって生ずる場合があります。
例えば、屋外で働いているときに車にはねられた場合や、仕事で外出中に建築現場の資材が落ちてきたことにより、傷病等を負った場合です。
このように、第三者の行為によって発生した労災を第三者行為災害といいます。
この第三者行為災害には、当該災害が第三者の行為によって発生したもののみならず、当該災害について第三者が損害賠償の義務を負う場合も含まれます。
第三者行為災害の成立要件は以下のとおりです。
- ① 保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じたものであること
- ② 第三者が被災労働者またはその遺族に対し、損害賠償の義務を負っていること
第三者行為災害について保険給付を受けようとする場合、所轄の労基署に遅滞なく「第三者行為災害届」を提出することになります。
第三行為災害の手続きの流れについては、労災保険給付が先行する場合と、第三者からの損害賠償が先行する場合に分けられます。
それぞれの手続きの流れについては以下のようになります。
労災保険給付が先行する場合の請求手続き
- ① 業務中または通勤中における第三者による不法行為によって被災した従業員は、当該第三者に対して、損害賠償を請求することができます。
- ② もっとも、従業員は労災として労災保険給付を政府に対して請求することができます。
- ③ 保険給付が第三者の損害賠償より先に行われると、第三者が行うべき損害賠償を政府が代わりに行ったことになります。
- ④ 政府は、保険給付に相当する額を受給権者が第三者に対して有する損害賠償請求権の権利の範囲内で、第三者から返金してもらうことになります。
このように、被災労働者またはその遺族が第三者に対して有する損害賠償請求権を、政府が保険給付の支給と引換えに代位取得し、政府が代位取得した損害倍書請求権を第三者に直接行使することを「求償」といいます。
損害賠償が先行する場合の請求手続き
- ① 業務中または通勤中における第三者による不法行為によって被災した従業員は、当該第三者に対して、
- ② 損害賠償を請求します。
- ③ 一方で、被災した従業員は、政府に対して保険給付請求権を有します。
- ④ そこで、被災した従業員またはその遺族が第三者から損害賠償を受けている場合、保険給付の額は、その損害賠償として受けた額を差し引いた額となります(保険給付の控除)。
また、本来の保険給付の額よりも受けている損害賠償額が多い場合、保険給付は行われません。
二次健康診断給付の手続きの流れ
二次健康診断とは、過労死予防のために労災保険から受けられる給付のことです。
二次健康診断の手続きの流れは、まず、二次健康診断等給付請求書に必要事項を記載し、①会社に二次健康診断等給付請求書に事業主の証明を記載してもらったうえで、②当該請求書を健診給付病院等に提出します。
③従業員は、健診給付病院等で二次健康診断を受診した後、健診等の結果をもらいます。
④健康給付病院等は、給付請求書と費用請求書を労働局へ提出し、⑤厚生労働省から支払いを受けます。
二次健康診断等給付は、一次健康診断の結果において、次に掲げる全ての検査項目において医師による「異常の所見」があると診断された方が支給の対象となります。
二次健康診断等給付の対象となる有所見項目
-
- ① 血圧検査
- ② 血中脂質検査 次の検査のいずれか1つ以上
・低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコレステロール)
・高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)
・血清トリグリセライド(中性脂肪) - ③ 血糖検査
- ④ 腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定
一次健康診断の担当医が異常なしの初見と診断した検査項目について、当該検査を受けた労働者の産業医等が、就業環境等を総合的に勘案し異常の所見が認められると診断した場合には、産業医等の意見を優先して、当該検査項目については異常の初見があるものとみなします。
労災請求に必要な書類
必要書類チェックリスト
療養(補償)等給付
療養(補償)等給付の申請に必要な書類は以下のとおりです。
業務災害の場合 | 療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書(様式5号) |
---|---|
様式6号(労災指定病院等から他の労災指定病院等へ移転する場合) | |
通勤災害の場合 | 療養給付たる療養の給付請求書(様式16号の3) |
様式16号の4(労災指定病院等から他の労災指定病院等へ移転する場合) |
業務災害の場合 | 通勤災害の場合 | |
---|---|---|
病院 | 様式7号(1) | 様式16号の5(1) |
薬局 | 様式7号(2) | 様式16号の5(2) |
柔道整復師 | 様式7号(3) | 様式16号の5(3) |
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師 | 様式7号(4) | 様式16号の5(4) |
訪問看護事業者 | 様式7号(5) | 様式16号の5(5) |
治療材料(器具等)の費用、移送費、はり師・きゅう師の費用、マッサージの費用、訪問看護事業者の費用について、添付書類は以下のようになります。
治療材料(装具等) | ①当該治療材料(装具等)の費用を負担した際の領収書 |
---|---|
移送費 | ①領収書(公共交通機関の運賃等で療養の費用請求書の医師証明欄の実診療日数によってその費用を算定できる場合は不要) |
はり師・きゅう師 |
|
マッサージ |
|
訪問看護事業者 | ①当該訪問看護に要した費用の領収書 |
休業(補償)等給付
休業(補償)等給付の申請に必要な書類は以下のとおりです。
業務災害の場合 | 通勤災害の場合 | |
---|---|---|
休業した場合 | 「休業補償給付、複数事業労働者休業給付支給請求書」(様式8) | 「休業給付支給請求書」(様式16号の6) |
休業期間中に所定労働時間のうち一部休業し、一部分を就労した場合 | 休業期間中に所定労働時間のうち一部休業し、一部分を就労した日の年月日及び一部分の就労に対して支払われた賃金額等を記載した「様式8号(別紙2)」 | 休業期間中に所定労働時間のうち一部休業し、一部分を就労した日の年月日及び一部分の就労に対して支払われた賃金額等を記載した「様式16号の6(別紙2)」 |
同一の事由により障害厚生年金、障害基礎年金の支給を受けていて、休業(補償)等給付を請求する場合 | 障害基礎年金の支給額、支給開始年月日等を証明する書類 | 障害基礎年金の支給額、支給開始年月日等を証明する書類 |
傷病(補償)等年金
傷病(補償)等年金の申請に必要な書類は以下のとおりです。
業務災害の場合 | 通勤災害の場合 | 添付書類 | |
---|---|---|---|
傷病(補償)等年金 | 傷病の状態等に関する届 | 傷病の状態等に関する届 |
|
障害(補償)等給付
傷害(補償)等給付の申請に必要な書類は以下のとおりです。
業務災害の場合 | 通勤災害の場合 | 添付書類 | |
---|---|---|---|
障害(補償)等年金・一時金 | 「障害補償給付・複数事業労働障害給付支給請求書」(様式10号) | 「障害給付支給請求書」(様式16号の7) | 様式16号別紙(通勤災害の場合) |
障害(補償)等年金差額一時金 | 「障害(補償)年金前払一時金請求書」(年金申請様式10号) | 「障害(補償)年金前払一時金請求書」(年金申請様式10号) | なし |
障害(補償)等年金差額一時金 | 「障害(補償)年金・複数事業労働者障害年金差額一時金支給請求書」(様式37号の2) | 「障害(補償)年金・複数事業労働者障害年金差額一時金支給請求書」(様式37号の2) |
|
介護(補償)等給付
介護(補償)等給付の申請に必要な書類は以下のとおりです。
業務災害の場合 | 通勤災害の場合 | 添付書類 | |
---|---|---|---|
介護(補償)等給付 | 「介護補償給付・複数事業労働者介護給付支給請求書」(様式16号の2の2) | 「介護給付支給請求書」(様式16号の2の2) |
|
遺族(補償)等給付
遺族(補償)等給付の申請に必要な書類は以下のとおりです。
業務災害の場合 | 通勤災害の場合 | 添付書類 | |
---|---|---|---|
遺族等年金 | 「遺族補償年金・複数事業労働者遺族年金支給請求書」(様式12号) | 「遺族年金支給請求書」(様式16号の8) | なし |
遺族(補償)等一時金 | 遺族補償一時金・複数事業労働者遺族一時金支給請求書 | 遺族一時金支給請求書 | なし |
遺族(補償)等年金前払一時金 | 「遺族(補償)年金前払一時金請 求書」(年金申請様式1号) | 「遺族(補償)年金前払一時金請 求書」(年金申請様式1号) | なし |
葬祭料等(葬祭給付)
葬祭料等(葬祭給付)の申請に必要な書類は以下のとおりです。
業務災害の場合 | 通勤災害の場合 | 添付書類 | |
---|---|---|---|
葬祭料等(葬祭給付) | 「葬祭料又は複数事業労働者葬祭給付請」(様式16号) | 「葬祭給付請求書」(様式16号の10) | 労働者の死亡の事実・死亡年月日を証明する書類(死亡診断書、死体検案書等) |
第三者行為災害
提出書類 | 添付書類 | |
---|---|---|
交通事故による場合 | 第三者行為災害届 |
|
交通事故以外の場合 | 第三者行為災害届 |
|
二次健康診断等給付
提出書類 | 添付書類 | |
---|---|---|
二次健康診断等給付 | 「二次健康診断等給付請求書」(様式16号の10の2) | 一次健康診断の結果を証明することができる書類(一次健康診断結果の写しなど) |
労災請求のための書類の書き方
ここでは、「療養補償給付請求書(様式第5号)」を例にあげて、労災請求のための書類の書き方を解説します。
記入例
書き方
①については、労働者の生年月日、負傷又は発病年月日の項目になります。
この記入枠の年については、和暦で表記しましょう。
②については、職種の項目になります。
この記入枠については、必ず記入するようにしましょう。
職種については必ず記入しましょう。
③については、災害発生の事実を確認した者の職名、氏名の項目になります。
現認した者がいない場合は、報告を受けた者を記入しましょう。
④については、災害発生の原因及び発生状況の項目になります。
災害の発生状況については、どこで、どのような状況で、どのような作業をしているときに、何が原因で、どのような災害が発生したか、を具体的に記入してください。
例えば、建設業の現場での災害では、工事名称と現場住所を記入し、具体的な事故状況を記入することになります。
⑤については、指定病院等の名称、所在地、傷病の部位及び状態についての項目になります。
この記入枠については、必ず記入するようにしましょう。
⑥については、事業主の証明を記載する項目になります。
「事業主の氏名」の欄及び「請求人の氏名」の欄は、記名押印することに代えて、自筆による署名をすることができます。
事業主が証明を拒むなどやむを得ない事情がある場合には、事業主証明欄が空白であっても請求手続きに支障はありません。
⑦については、労働者の所属事業場の名称・所在地の項目になります。
労働者の所属事業場の名称・所在地については、事業主記載と同じ場合は、「同上」と記入します。
⑧については、請求人の住所・電話番号・郵便番号の項目にないます。
この項目については連絡先になるため、必ず記載するようにしましょう。
労災保険給付関係請求書の書式は以下サイトからダウンロードできます。
- 押印は不要請求人の自筆による署名がある場合は、請求人の押印は不要です。
- 訂正する場合訂正する場合についても、訂正印は不要です。修正インクや修正テープの利用は控え、二重線を引き余白に記入するか、新しく書き直すようにしましょう。
書類の提出先
労災指定病院(診療所)にかかったとき、労災指定薬局で投薬を受けるときは、労災指定病院等に請求書を提出し、その他の場合については、所轄労働監督基準署に提出します。
二次健康診断等給付請求書については、健康診断給付病院等を経由して都道府県労働局長に提出します。
柔道整復師等に施術を受けた場合には、受任者払いの承認を受けている柔道整復師(施術料金を傷病労働者に変わって所轄の監督署に請求書を提出し、その監督署から直接支払いをうけることができる柔道整復師)とそれ以外の柔道整復師の場合とでは、提出先が異なります。
-
- 受任者払いの承認を受けている柔道整復師等の場合:施術を受けた柔道整復師等
- 受任者払いの承認を受けていない柔道整復師等の場合:所轄の監督署
提出方法
郵送でも可能ですが、労基署へ直接提出した方が請求書の不備について聞くことができます。
労災請求に必要な費用
実費
「療養の給付」のために労災指定病院を受診した場合、診断書は労災指定病院を経由して所轄労働局に送られるため、診断書の作成について実費はかかりません。
労災指定病院以外で受診した場合、診断書の作成について、一旦自分で立て替え、後日労災保険に対して請求することになります。
弁護士に依頼する場合
労災の請求、労災に対する異議申立て、民事上の損害賠償請求等について、弁護士に相談できます。
弁護士報酬については、旧弁護士報酬基準を参考に算出します。
労災請求をスムーズに行うためのポイント
①労災の申請について、会社に協力してもらうようにしましょう
労災を申請する場合、基本的には事業主の証明が必要になるため、会社の担当者と相談するようにしましょう。
仮に会社の協力が期待できない場合、事業主の証明部分は保留のまま、請求書を労基署に提出しましょう。
後日、労基署が事業主の証明を拒否する理由について、調査することになります。
②労災保険を適用して治療を受ける場合、労災であることを病院に申し出るようにしましょう
労災保険適用の申出が後日となった場合、これまでに支払った治療費の精算について、手続きが煩雑化することがあります。
労災保険を適用する場合は、事前に申し出るようにしましょう。
緊急で治療を受ける場合は、治療を受ける際に、労災であることを病院に申し出て、その後速やかに請求書を提出するようにしましょう。
③病院院や薬局等で受領した領収書は、保存しておくようにしましょう
病院や薬局等で立て替えた治療費を請求するためには、領収書が添付資料として必要となる場合があるため、保存しておくようにしましょう。
④時効に注意しましょう
労災の請求には時効があります。
労災の請求はできるだけ速やかに行いましょう。
⑤労災として認定されるか不安がある場合は、弁護士等の専門家に相談しましょう
労災の認定に不安がある場合や、労災の請求について会社の協力が期待できない場合は、弁護士等の専門家に相談しましょう。
まとめ
- 労災の請求とは、労働者が、業務中または通勤中にケガをしたり、病気になったり、あるいは死亡した場合、国に対して補償や給付を受けるための請求を行うことである。
- 労災には、業務中に生じた災害、通勤中に生じた災害、第三者の行為によって生じた災害(第三者行為災害)がある。
- 労災保険が適用された場合、一般の健康保険(被用者保険・国民健康保険)は、原則として適用されない(健康保険法1条、国民健康保険法56条)。
- 第三者行為災害について保険給付を受けようとする場合、所轄の監督署に遅滞なく「第三者行為災害届」を提出する必要がある。
- 各種請求書について、請求人の自筆による署名がある場合は、請求人の押印は不要である。
労災事故は、お立場が従業員か会社かで、必要となるサポートが異なります。
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