労災指定病院とは?メリットや必要な手続|検索一覧付

労災指定病院とは、正式名称を「労災保険指定医療機関」と言い、医療機関からの申請にもとづき、都道府県労働局長により「指定」された医療機関を指します。

労災被害にあった場合には、労災指定病院に通院することがお勧めです。

労災指定病院の場合、治療費の手出しをせず無償で治療を受けることができます。

また、労災指定病院や労災病院で治療をした場合には、必要な書類を労働基準監督署のサイトでダウンロードして記入して、治療を受けた病院に書類を提出をするだけで済み、労災補償の手続きが簡単というメリットがあります。

このページでは、労災指定病院で治療することのメリットや、受診する際の手続きの流れ、労災指定病院以外で治療した場合の対処法などについて弁護士がくわしく解説します。

労災指定病院とは

労災指定病院とは、正式名称を「労災保険指定医療機関」と言い、医療機関からの申請にもとづき、都道府県労働局長により「指定」された医療機関を指します。

全国には十数万の病院がありますが、そのうち数万(4〜5万と思われます)の病院が労災指定病院とされています。

労災被害に遭ってしまった方が労災指定病院へ通院することによって、治療に関する補償を治療という現物で受給することができます。

 

そもそも労災とは?

労災とは、「労働災害」の略で、従業員が通勤や仕事が原因で発生したケガや病気を指します。

もちろん、通勤や仕事が原因で障害を負ったり、死亡したりした場合にも労災となります。

労災には、通勤災害と業務災害があります。

通勤災害とは、従業員が、通勤をしている最中に受けたケガ、病気、障害、死亡を指します。

業務災害とは、従業員が、業務を原因として受けたケガ、病気、障害、死亡を指します。

通勤災害、業務災害、どちらの労災事故においても、通院が必要な場合には、労災指定病院や労災病院で治療を行うべきです。

 

労災病院と労災指定病院の違い

労災指定病院と似たものとして労災病院があります。

労災病院は、独立行政法人 労働者健康安全機構が運営している病院になります。

労災病院と労災指定病院とは、どちらも労災被害に対する補償を行う病院という意味では、共通していますが、民間の病院が指定を受けることによって労災指定病院となりますので、両者は、運営団体が異なります

そのほかにも違いがあり、主な違いは以下の表のとおりです。

労災病院 労災指定病院
目的 労災被害者の治療のため
  • 労災被害者の治療のため
  • 民間病院としての治療のため
費用 無償(労災保険により賄われる)
運営・管理 独立行政法人 労働者健康安全機構 各病院(民間団体が主)
規模 国立病院レベルの大規模 病院による
病院数 32箇所 数万箇所

このように労災指定病院と、労災病院とでは、運営・管理の違いはあるものの、手続の面においては、大きな差はないので、通院を継続しやすく、信頼できると感じた病院へ通院をすれば良いです

 

 

労災指定病院のメリットとデメリット

労災指定病院での通院のメリット・デメリットの概要は以下の表のとおりです。

メリット デメリット
  • 治療費の手出しをせず、無償で治療を受けることができる
  • 労災補償の手続きが簡単になる
  • 労災指定病院が遠い場合には、通院の時間などの負担が増える

 

労災指定病院のメリット

労災指定病院は、労災被害の治療に重きを置く病院ですので、労災の治療を行う場合には、労災指定病院で治療をするメリットが大きいです。

先ほどご紹介しましたメリットについて、これから詳細をご説明します。

 

治療費の手出しをせず、無償で治療を受けることができる

まず、労災指定病院での通院をする際には、治療費の手出しをせず、無償で治療を受けることができることが一番のメリットと言えるでしょう。

労災被害での通院の場合には、健康保険の使用はできないため、原則として、10割の医療費を被害者が負担することになります。

もっとも、労災指定病院での通院を行うと、労災保険から労災指定病院へ直接治療費が支払われるため、被害者と労災指定病院との金銭のやりとりは発生しません。

 

労災指定病院で通院をした場合

労災指定病院で通院をした場合の流れ図

労災指定病院で通院した場合は、図1のとおり、④労働基準監督署から病院への支払いのタイミングでしかお金の動きはありません。

※労災病院で通院した場合にも同様の手続きになります。

 

労災指定病院や労災病院以外で通院をした場合

労災指定病院や労災病院以外で通院をした場合の流れ図

労災指定病院や労災病院以外で通院をした場合は図2のとおり②被害者から病院への治療費の支払い、④労働基準監督署から被害者への支払いの2つのタイミングでお金の動きがあり、そのため、被害者が一度は治療費を手出しすることになります

このように、労災指定病院で通院した場合には、上記の図1のとおり、実質的に、被害者が、治療費の手出しをせず、無償で治療を受けることができることになります。

なお、初診の前に、所定の請求書を提出できなかった場合には、被害者が治療費を一度手出しした上、請求書を提出した後に返金を受けることになります。

 

労災(補償)給付の手続きが簡単になる

労災(補償)給付の手続きが簡単になることもメリットです。

労災指定病院に通院をした場合には、その後、休業(補償)給付などの労災(補償)給付を受給するための手続きが簡単になります。

実際の手続は、必要な書類を労働基準監督署のサイトでダウンロードして記入して、治療を受けた病院に提出をするだけで済みます

なお、業務中の労働災害(業務災害)か、通勤災害かによって様式が変わりますので、注意が必要です。

業務災害 通勤災害
療養補償給付たる療養の給付請求書 (様式第5号) 療養給付たる療養の給付請求書 (様式第16号の3)

書式のダウンロードは以下の参考ページからできます。

参考:労災保険給付関係主要様式|厚生労働省 主要様式ダウンロードコーナー

 

労災指定病院のデメリット

労災指定病院は、労災被害の治療に重きを置く病院ですので、労災被害で通院をする場合、基本的にはデメリットはありません。

もっとも、労災指定病院は、民間病院のうち、都道府県労働局長により指定された医療機関に限られますので、自宅や職場の近所になく、通院がしにくい可能性があります

そのため、労災指定病院が遠い場合には、通院の負担が増えることがデメリットとなるでしょう

 

 

 

労災指定病院の手続きの流れ

労災指定病院で受診した場合の大まかな手続の流れは以下フローチャートの通りです。

なお、労災病院で受診した場合も同じ流れになります。

労災指定病院の手続きの流れ

 

労災(補償)保険の受給について

治療の状況に応じて、各種労災(補償)保険を受給するための申請を行います。

各種労災(補償)給付の一覧は、以下の通りです。

名称 内容
休業(補償)給付 労災による被害のために休職をして、賃金を受け取れない場合の補償・給付です。
傷病(補償)年金 労災被害によるケガや病気の治療を行って、開始から1年6か月を経過しても治らず、その傷病が重い場合の補償・給付です。
障害(補償)給付 労災被害によるケガや病気が症状固定(治療の効果が上がらなくなったこと)となった後に、一定程度の障害が残った場合の補償・給付です。
遺族(補償)給付 労災被害が原因で死亡した場合に、一定範囲の遺族に対して支給される補償・給付です。
介護(補償)給付 一定の障害により傷病(補償)年金を受け取っており、かつ、介護を受けている場合の補償・給付です。
葬祭料(葬祭給付) 葬祭を行った者に対する給付です。

労災(補償)給付について、詳しくは以下をご覧ください。

 

勤務先への損害賠償請求

労災の発生の原因が、勤務先の会社にある場合には、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求や不法行為や使用者責任に基づく損害賠償請求を検討すべきです。

 

安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求

安全配慮義務とは、会社が従業員に対して、仕事をするために安全な環境を提供をする義務をいい、これに違反した場合には、会社は賠償責任を負うことになります。

具体的には、職場に危険な場所があるのに、会社がなんの対策もせずに長期間放置し、それが原因で労災が発生した場合には、賠償請求できる可能性があります。

 

不法行為に基づく損害賠償請求

また、不法行為とは、違法に他人の権利を害することをいい、加害者は被害者に対して、その行為によって生じた損害を賠償する義務があります。

例えば、他の従業員の操縦する機械に巻き込まれてケガをした場合には、不法行為に基づく損害賠償請求ができる可能性があります。

また、会社に対しては、ケガをさせた従業員を雇用する者への責任追及として、賠償請求ができる可能性があります(この請求を使用者責任に基づく賠償請求といいます。)。

労災の発生の原因が、勤務先の会社にある場合には、弁護士に相談の上、会社などに対して損害賠償請求を行うかどうかを相談すべきでしょう。

安全配慮義務について、くわしくは以下をご覧ください。

 

 

労災指定病院ではない場合の問題点

労災事故で通院した病院が、労災指定病院でない場合には、労災指定病院のメリットの裏返しの問題が起こります。

具体的には、被害者は、少なくとも1度は治療費の全額を手出ししないといけないことや、労災(補償)給付を受けるための手続きが比較的面倒になることが挙げられます。

 

被害者は、少なくとも1度は治療費の全額で手出ししないといけないこと

労災指定病院でない病院に通院をした場合には、労災保険から病院へ直接治療費が支払われることはありません。

少なくとも、一度は、被害者が手出しをする必要があります

また、労災の治療に関しましては、健康保険の使用ができませんので、3割負担ということもできません

そのため、被害者は少なくとも一度は治療費の全額を手出ししないといけないことになります。

病院での治療費は、最初の1か月で数十万円にまでなる場合もあり、そのような金額を一気に手出しすること難しい方もいらっしゃると思います。

また、金銭面について心配をするあまり、適切な治療を行わない場合には、その後の治りが悪く、完治していたかもしれないのに、完治できなかったことにもなりかねません。

このように、労災指定病院での通院を行わない場合には、被害者は、少なくとも1度は治療費の全額で手出ししないといけないという大きな問題があります。

 

労災(補償)給付を受けるための手続きが面倒になること

労災指定病院や労災病院以外の病院で治療をした場合には、書類を被害者が記入し、主治医の証明書をもらい、手出しした治療費の領収書とともに労働基準監督署に提出することになります。

一方、労災指定病院や労災病院で治療をした場合には、必要な書類を労働基準監督署のサイトでダウンロードして記入して、治療を受けた病院に書類を提出をするだけで済みます。

そのため、労災指定病院や労災病院以外での治療を行うと、労災(補償)給付を受けるための手続きが面倒になり、そのような点も問題です。

なお、業務災害と通勤災害で書式が違いますので、その点も注意が必要です。

業務災害 通勤災害
療養補償給付たる療養の費用請求書 (様式第7号) 療養給付たる療養の費用請求書 (様式第16号の5)

書式のダウンロードは以下の参考ページからできます。

参考:労災保険給付関係主要様式|厚生労働省 主要様式ダウンロードコーナー

 

 

労災指定病院の探し方

先ほど、労災指定病院に通うデメリットとして、自宅などから労災指定病院が遠い場合には、通院の時間などの負担が増えることをご説明しました。

もっとも、通いやすい場所に労災指定病院があることがわかれば、その病院に通うことによって、デメリットはなくなります。

そのため、労災被害に遭って治療を行おうとする場合には、近所に労災指定病院があるかどうかを探した方が良いでしょう。

探す方法は、複数ありますので、これから紹介いたします。

 

 

労災指定病院の検索と注意点

労災指定病院は、下記の厚生労働省のホームページから検索することが可能です。

労災指定病院の検索はこちら

病院の名称、キーワードによる検索、所在地からの検索、診療科目からの検索ができます。

通院をする病院を決めた際には、念のためにその病院へ問い合わせをして、労災指定病院かどうかを確認するとより確実でしょう。

 

病院に直接問い合わせをする

かかりつけ医がある場合には、その病院の受付で、その病院が労災指定病院かどうかを直接確認する方法もあります。

職場や自宅の付近に通いたい科のある病院があれば、その病院に直接問い合わせをする方が早く確実な場合もあります。

なお、その他、民間の医療機関検索サイトもありますが情報の更新がなされている保証はないので、ただいまご紹介しました、2つの方法で検索することをお勧めします。

 

 

労災指定病院の一覧と注意点

労災指定病院は、下記の厚生労働省ウェブサイトから検索できます。

労災指定病院の一覧検索はこちら

条件を全く指定せずに検索をすると、4万5000近い数の病院が該当します。

そのため、労災指定病院の一覧を作成することは不可能ですが、ご自身のお住まい、勤務先、症状などの状況から、検索を行い、一番条件にあった労災指定病院に通院された方が良いでしょう。

 

 

労災病院の一覧と検索方法

労災病院が最寄りの方や大規模な病院で治療を受けるべき状況の方もいらっしゃると思います。

そのため、労災病院の所在地の検索方法についても説明いたします。

労災病院は、全国に43設置されており、その所在地は、次の労働者健康安全機構のウェブサイトで確認することができます。

労災病院の一覧検索はこちら

なお、労災病院と労災指定病院の違いについては先ほどご説明したとおりですが、労災被害に遭って通院をする際の手続きは同じです。

したがって、いずれを利用するかは、症状・通院の便などを踏まえて、主治医と相談して決めると良いでしょう。

 

 

労災指定病院以外で受診した場合の対処法とは

労災指定病院以外で受診した場合は、手出しした治療費の請求を行ったり、適切な労災(補償)給付を受けられるように準備する必要があります。

これから、労災指定病院以外で受診した場合の対処法をご説明します。

 

手出しした治療費の請求

手出しした治療費を請求することが最優先かと思われます。

そのために、まずは手出しした治療費に関して、領収書を保管する必要があります。

また、業務災害、通勤災害の区分に応じて、被害者及び主治医が書類を記入して領収書とともに労働基準監督署に提出する必要があります。

これにより、手出しした治療費を回収することができます。

 

適切な労災(補償)給付を受けられるための準備

場合によっては、労災(補償)給付の対象となっていることがあります。

状況に応じた労災(補償)給付の申請の準備を行う必要があります

なお、場合によっては、会社への賠償請求を検討することが必要なことについては変わりありません。

 

 

まとめ

ここまで、労災指定病院について解説いたしました。

労災被害に遭ってしまった場合、労災指定病院や労災病院に通院することを強く推奨しますので、お近くの労災指定病院や労災病院を検索の上、これらの病院で通院をするべきです。

また、第三者や会社に非のある労働災害については、会社に賠償請求をすることができる可能性があります。

そのため、労災被害に遭った場合には、労災被害への対応について詳しい弁護士に相談をすべきです。

デイライト法律事務所では、人身障害部を設け、労災被害をはじめとする人身障害に特化したチームを編成しています。

また、zoomやLineでの相談についても初回無料で対応しており、ご相談の予約は24時間受け付けております。

労災被害に遭った方は、お気軽にご相談いただければと思います。

 

 

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