労災の様式7号とは、労災の給付を申請する際に使用する書式の一種であり、業務に起因して負傷した従業員が労災指定医療機関以外を受診した場合に使用する様式です。
労災の給付には多くの種類があり、申請するための様式も給付の種類に応じて多数存在するため、その区別が重要になってきます。
このページでは、労災の様式7号について、用途、入手方法、書き方や注意点などを、弁護士が解説しています。
労災の申請を検討中であれば、参考としていただければと思います。
労災の様式7号とは?
労災の様式7号とは、労災の給付申請に用いる書式の一種であり、労災指定医療機関以外の医療機関を受診した際の治療費を請求するために使用する書類です。
正式名称は、「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」といいます。
様式7号の特徴的なポイントは、次の3点です。
- 労災のなかでも業務災害の際に使用する
- 労災指定医療機関以外の医療機関を受診した場合に使用する
- 様式7号には5種類存在する
様式7号の種類
様式7号は細分化されており、様式7号の中にも、⑴から⑸までの5種類が存在します。
なぜ同じ様式7号が複数の種類存在するのかというと、治療等を受けた機関に応じて様式が分かれているためです。
様式7号と機関の対応関係は次のとおりです。
様式 | 機関 |
---|---|
様式第7号⑴ | 医療機関 |
様式第7号⑵ | 薬局 |
様式第7号⑶ | 柔道整復師 |
様式第7号⑷ | はり師・きゅう師、あん摩マッサージ指圧師 |
様式第7号⑸ | 訪問看護事業者 |
労働災害により負傷した場合、医療機関を受診する以外にも、薬局から薬剤の支給を受けたり、柔道整復師の手当を受けたりすることがあり得ますので、そのような場合に労災給付を請求する場合には、様式7号の⑵や⑶を使うことになるのです。
様式の外観上、非常に類似しているため区別が重要になりますが、様式左上の「様式第7号」の後に「⑴」「⑵」等の記載があるため、注意していれば区別すること自体は難しくありません。
また、⑵以降の様式については、様式の右上に⑵であれば薬局の「薬」、⑶であれば柔道整復師の「柔」の文字が丸囲みされているため、これによって判別することも可能です。
様式7号と5号との違い
様式7号は他の様式と混同されやすいものですが、その中でも様式5号との区別を間違える例が多くなっています。
様式5号と様式7号はいずれも療養補償給付のための様式であり、労災の治療に関する給付を請求する際に用います。
同じ療養補償給付に用いることから間違えやすいのですが、受診するのが労災指定医療機関かそれ以外の医療機関かで給付の形式が異なるため、様式も区別されています。
すなわち、労災指定医療機関であれば現物給付の形で直接医療サービスを受けられるのに対し、労災指定医療機関以外の医療機関を利用する場合は、治療費をいったん自己負担した上で後日還付されるというように、給付の形態が異なっています。
このように、受診するのが労災指定医療機関であるか否かによって給付形態が制度上異なっているため、様式を使い分ける必要が出てくるのです。
様式7号と8号との違い
様式7号は治療費の還付(療養補償)を受けるために使用する様式でしたが、様式8号は労災により休業が発生した場合の賃金の補填(休業補償)を受けるために使用します。
業務の中で負傷した場合、治療費だけでなく、休業による損害も発生する可能性があります。
労災保険では、休業損害に対する休業補償給付が存在し、これを申請する際には、様式8号を使用します。
様式7号と様式16号の5との違い
様式7号と同じく労災指定医療機関以外の医療機関を受診した場合に用いる様式として、様式16号の5というものが存在します。
労災指定医療機関以外の医療機関を受診した際に用いる点で様式7号と共通していることから混同されやすいのですが、様式16号の5は労災の中でも、業務災害ではなく通勤災害により従業員が負傷した場合に用いる様式となっています。
業務災害 | 通勤災害 | |
---|---|---|
労災病院又は労災指定医療機関 | 様式5号 | 様式16号の3 |
労災指定医療機関等以外 | 様式7号 | 様式16号の5 |
労災の様式7号はどこで手に入れる?
労災給付を申請するには、給付の種類に対応した所定の様式に必要事項を記入して申請する必要があります。
労災の様式は厚生労働省のホームページでダウンロードすることができます。
参考:厚生労働省ホームページ
労災の様式7号のダウンロードはこちらから
厚生労働省のホームページのほか、当事務所でも申請にご利用いただける様式をご用意しております。
下記のリンク先からダウンロードしてご利用ください。
労災の様式7号の作成方法
労災の申請では、給付に対応した様式を用いて申請する必要があります。
様式7号は、「業務災害」について、「労災指定医療機関以外の機関を受診した場合」に用いるものです。
特に様式7号では、利用したのが医療機関なのか薬局なのか等によって、さらに様式が細分化されています。
ここからは、様式7号の中でも特に使用頻度が高いと思われる7号⑴を例にとって、作成方法を解説していきます。
⑵から⑸を作成する場合でも多くの項目が⑴と重複していますので、参考としてください。
労災の様式7号(表面)の記入例
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労災の様式7号(表面)の書き方
様式に「※印の欄は記入しないでください。(職員が記入します。)」とあるとおり、様式上※印が印字されている欄については労基署の職員が記入しますので、申請の際に記入する必要はありません。
したがって、それ以外の項目を記入して申請します。
以下に記入が不要な項目を整理しますので、これ以外の項目はすべて記入するのが原則となります。
帳票種別
- ①管轄局署
- ②業通別
- ⑧受付年月日
- ⑩三者コード
- ⑪委任未支給
- ⑫特別加入者
- ⑬審査コード
- ⑭金融機関コード
- ⑮郵便局コード
- ㉑費用の種別
- ㉒療養期間の初日
- ㉓療養期間の末日
- ㉔診療実日数
- ㉕転帰事由
ここからは、記入に特に注意が必要な項目の書き方を解説します。
③労働保険番号
被災した従業員が勤務している事業所の労働保険番号を記入します。
労働保険番号は、労働局が事業所に付与する番号で、府県、所掌、管轄、基幹番号、枝番号の計14桁からなる番号です。
労働保険番号が分からない場合は、労働保険の年度更新申告書の控えで確認することができます。
④年金証書の番号
年金証書の番号は、管轄局、種別、西暦年及び番号からなる計9桁の番号です。
この欄は、申請者が傷病補償年金や障害補償年金などの労災年金を受給している場合にのみ記入しますので、労災年金を受給していない場合は記入する必要はありません。
⑨労働者の氏名、住所、職種
労働者の職種については、従業員が従事していた作業の内容がわかるような具体的な記載とします。
たとえば、単に「作業工」とするよりも、「塗装工」「溶接工」「配管工」のように作業内容が具体的にイメージできるような記載とする方が望ましいでしょう。
事業主証明欄
「⑨の者については、⑦並びに裏面の(ヌ)及び(ヲ)に記載したとおりであることを証明します。」の欄は、従業員の負傷日時及び災害の発生状況について、様式に記載のとおりであることを事業者が証明する欄となります。
したがって、会社の方でこれらの欄の記載が事実と相違しないことを確認した上で、事業の名称等を記入します。
「医師又は歯科医師等の証明」の欄
この欄は、傷病の部位や療養期間、療養に要した費用などを担当医が証明する欄です。
診療を受けた医療機関に記入を依頼することになります。
(ホ)看護料、(ヘ)移送費
付添看護人を必要とした場合の費用や病院等が遠距離で移送に費用を要したような場合に記入します。
この欄に記入した場合は、要した費用を証明できる領収書等などを添える必要があります。
(チ)療養の給付を受けなかった理由
「療養の給付」とは、労災制度による給付の一種で、労働災害により負傷した従業員が労災病院や労災指定医療機関を受診して現物給付の形で医療サービスを受けることをいいます。
様式7号を使用しているということは、労災指定医療機関等以外の医療機関を受診してその費用の還付を受けようということですので、この欄では、なぜはじめから労災指定医療機関を受診しなかったのかについて事情を説明します。
「上記により療養補償給付又は複数事業労働者療養給付たる療養の費用の支給を請求します。」の欄
宛名は、被災した従業員が所属している事業場を管轄する労働基準監督署長とします。
たとえば様式の記入例のように、従業員の所属する事業所が千代田区であれば、これを管轄する中央労働基準監督署が宛名となります。
宛名を記入するには、事業所の住所からその住所地を管轄する労基署を特定する必要があります。
労基署の管轄は、厚生労働省のホームページから、都道府県を選択し、労働基準監督署の「管轄一覧表」をクリックして確認できます。
引用元:厚生労働省ホームページ
労災の様式7号(裏面)の記入例
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労災の様式7号(裏面)の書き方
(リ)労働者の所属事業場の名称・所在地
従業員の所属している事業場が、表面の事業主証明欄の事業場と異なる場合に記入します。
通常これらは一致するはずですが、本社で社会保険を一括して管理している、いわゆる「一括適用事業所」の場合には、表面が本社の所在地、裏面が実際に所属する事業場という風にずれが生じることになります。
このような事情がない場合は、この欄は空欄となります。
(ヲ)災害の原因及び発生状況
発生した災害の概要を記載します。
この項目には、次の(あ)から(お)までの事項を記載するよう様式上求められています。
- (あ)どのような場所で
- (い)どのような作業をしているときに
- (う)どのような物又は環境に
- (え)どのような不安全な又は有害な状態があって
- (お)どのような災害が発生したか
災害の概要を簡潔かつ正確に伝達するためにも、これらの項目を網羅するように記入します。
「療養の内訳及び金額」の欄
この欄は、従業員がどのような療養を受け、それに対しどのような費用がかかったのかの内訳を示す欄です。
医療機関側で記入することになりますので、記入を依頼しましょう。
労災の様式7号の提出先
労災の様式7号の提出先は所轄の労働基準監督署であり、署長宛てに提出します。
労働基準監督署は住所地によって管轄が分かれているため、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署を確認して提出します。
労災の様式7号の注意点
ここまで、様式7号の記載方法を解説しました。
以下では、様式7号に関して注意すべき点をご紹介しますので、作成の際には気を付けてください。
①給付と様式の関係を正しく理解する
労災の給付には、今回ご紹介した療養補償給付以外にも、さまざまな種類が存在します。
これに応じて様式も細分化されており、それぞれの給付ごとに専用の様式が存在します。
労災指定医療機関以外を受診した際の療養補償給付に使用するのが、様式7号です。
同じ療養補償給付を申請する場合でも、労災指定医療機関を受診するのであれば様式5号を使用しますし、業務災害ではなく通勤災害を原因とするときは、様式16号の5を使用します。
このように、労災を申請する際は、給付と様式の関係性を正しく理解しておく必要があります。
労災の制度は非常に複雑になっていますので、まず制度の全体像を把握した上で、様式の選択についても慎重に検討していただければと思います。
②様式ごとの注意点をきちんと理解する
この記事では、様式7号の中でも医療機関用の様式7号⑴を例にとってご説明してきました。
これ以外の⑵から⑸の様式についても基本的な書き方はおおむね共通していますが、それぞれの様式ごとに、医師とは別の証明欄が存在します。
医師の証明が不要なわけではなく、医師の証明に加えて、様式ごとに次の証明が合わせて必要になります。
⑴以外の様式7号を使用する際は、この点についても注意してください。
様式 | 証明 |
---|---|
様式7号⑵ | 薬剤師 |
様式7号⑶ | 柔道整復師 |
様式7号⑷ | あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師 |
様式7号⑸ | 訪問看護事業者 |
③労災に強い弁護士に相談する
労災問題では、労災に強い弁護士に相談することも重要です。
この記事では、様式7号について解説しました。
この記事を参考にしていただければ、様式7号の⑴から⑸まで適切に作成することも可能と思われますが、他方で、労災は制度も様式も非常に複雑になっています。
このため、たとえ慎重を期したとしても、専門家以外が適切に対応するのはなかなかハードルが高いのが現状でもあります。
労災問題に強い弁護士であれば複雑な労災制度についても熟知していますので、依頼があればスムーズに処理することができます。
さらに、労災が起こった場合、従業員の立場からすると「会社の落ち度のために負傷した」と思ってしまうケースもあり、後に法的な紛争へと話が派生していくことも稀ではありません。
そこで、労災問題についてはできるだけ早期に弁護士に相談しておけば、申請だけでなくその後の法的対応まで含めた、包括的なサポートを受けることが可能となります。
労災の分野は高い専門性が要求される分野でもありますので、労災については労働問題の取り扱い経験を多く持つ弁護士に依頼するのが重要です。
労災問題における弁護士選びの重要性については、こちらをご覧ください。
まとめ
このページでは、労災の様式7号について、様式5号や様式8号、様式16号の5との違い、入手方法や記入上の注意点について詳細に解説しました。
記事の要点を改めて整理しますので、ご確認ください。
- 労災の様式7号は、労災指定医療機関以外の医療機関を受診した場合に療養補償給付を受けるために使用する書式である。
- 様式7号は、医療機関を受診した場合に用いる様式7号⑴のほか、薬局、柔道整復師、はり師・きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、訪問看護事業者からサービスを受けたときに使用するために、様式7号⑵から様式7号⑸までが存在する。
- 治療に関する給付であっても、労災指定医療機関を受診した場合は様式5号を使用する。また、労災指定医療機関以外を受診する場合であっても、業務災害ではなく通勤災害を原意とするときは、様式16号の5を使用する。
- 労災問題は労災に強い弁護士に早期に相談することで、申請からその後の対応まで含めた一貫したサポートが受けられる。
当事務所では、労災問題を多く取り扱う人身傷害部の弁護士が相談から受任後の事件処理を行っています。
また、電話相談、オンライン相談(LINE、ZOOM、Meetなど)により、全国対応が可能ですので、お気軽にご相談下さい。