労災で14級が認定された場合には、後遺障害の慰謝料や逸失利益を請求することができます。
14級のそれぞれの相場や計算方法は以下のとおりです。
- 14級の後遺障害慰謝料の相場・・・110万円
- 14級の逸失利益の原則的な計算方法
基礎収入 × 5% × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
14級が認定されている場合でも、上記以外に治療費や休業損害などを請求することができます。
本記事では、労災で14級が認定された場合に請求できる損害やその計算方法、金額について解説しております。
目次
労災で後遺障害14級|取得できる損害費目
労災の後遺障害14級で取得できる損害費目として一般的なものは、以下のとおりです。
治療費
怪我をして治療に要する費用を全般は補償の対象です。
治療費に含まれるものとしては、診察代、リハビリ代、薬代、手術代、入院代、整骨院での施術代などが挙げられます。
通院交通費
病院や整骨院へ通院する際にかかる通院交通費も取得できます。
通院交通費として考えられるのは、車通院の際のガソリン代や駐車場代、公共交通機関を使用した場合の実費などです。
なお、タクシー代も認められることもありますが、症状が重傷などの場合に限られるため、14級の症状だと否定される可能性が高く、その点は注意してください。
休業損害
休業損害は、事故によって会社を休んで減収が生じた場合の損害のことです。
症状固定時までに生じた減収については、この休業損害として請求していく対象になります。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、事故によって入院や通院を余儀なくされたことの精神的苦痛に対する賠償のことをいいます。
入通院慰謝料の計算の仕方は、後述する「労災の後遺障害14級の慰謝料はいくら?」の箇所で詳しく解説します。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、事故によって後遺障害が残ってしまったことによる被害者の精神的苦痛に対する賠償のことをいいます。
後遺障害慰謝料は、認定される等級によって相場が決まっています。
逸失利益
逸失利益とは、後遺障害が残った場合の将来の減収に対する補償のことをいいます。
症状固定時までの減収は休業損害の問題であることに対し、症状固定から先の減収は逸失利益の問題ということになります。
逸失利益の計算方法については、後述する「労災の後遺障害14級の逸失利益はいくら?」の箇所で詳しく解説します。
後遺障害14級の労災保険からの支給
後遺障害14級が認められた場合、労災保険から以下の給付を受領することができます。
後遺障害14級が認められた場合の労災保険から受けることができる給付
- ① 障害補償等一時金
- ② 障害特別支給金
- ③ 障害特別一時金
①障害補償等一時金
障害補償等一時金は、給付基礎日額を算出し、その給付基礎日額の56日分がもらえるというものです。
(14級の障害補償等一時金)
14級の障害補償等一時金 = 給付基礎日額 × 56日
給付基礎日額とは、平均賃金のことを指します。
具体的には、以下のような計算式で算出します。
事由発生日(※1)の直前の賃金締切日から遡って3ヶ月間に支払われた賃金総額(※2)÷事由発生日の直前の賃金締切日から遡って3ヶ月間の暦日数(※3)
(※1)事由発生日とは、労災事故が起こった日や医師の診断によって疾病の発生が確定した日をいいます。
(※2)賃金総額からは、以下の金額が控除されます。
- ① 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:賞与)
- ② 臨時に支払われるもの(例:私傷病手当、退職金)
- ③ 労働協約に基づかない現物給与
(※3)暦日数には、以下の日数は含みません。
- ① 業務上の負傷等によって休業していた期間
- ② 産前産後の休業期間
- ③ 会社側の事情によって生じた休業期間
- ④ 育児・介護休業期間
- ⑤ 試用期間
②障害特別支給金
障害特別支給金は、後遺障害等級ごとに決められた定額の補償です。
14級の障害特別支給金は、8万円です。
(14級の障害特別支給金)
14級の障害特別支給金 = 8万円
なお、障害特別支給金で受領した金額は、会社等に請求する金額から差し引かなくてよいので、被害者にとってプラスでもらえる金額といえます。
③障害特別一時金
障害特別一時金は、算定基礎日額を算出し、その算定基礎日額の56日分がもらえるというものです。
障害特別一時金についても、受領した金額は会社等に請求する金額から差し引かなくてよいと考えられています。
(14級の障害特別一時金)
14級の障害特別一時金 = 算定基礎日額 × 56日
算定基礎日額とは、事由発生日以前の1年間の特別給与額を365日で割った額の事をいいます。
算定基礎日額=事由発生日(※1)以前の1年間の特別給与額(※2)÷365日
(※1)事由発生日とは、労災事故が起こった日や医師の診断によって疾病の発生が確定した日をいいます。
(※2)特別給与額とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されている賞与など3か月をこえる期間ごとに支払われる賃金をいいます。
なお、臨時に支払われた賃金は、特別給与額に含まれません。
特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の365倍に相当する額)の20%に相当する額を上回る場合には、給付基礎年額の20%に相当する額が算定基礎年額(ただし、150万円が限度額)となります。
労災の後遺障害14級の慰謝料はいくら?
後遺障害慰謝料
労災の後遺障害14級でもらえる後遺障害慰謝料は、110万円が相場です。
後遺障害慰謝料は、労災保険から出ませんので、会社や加害者などに請求していくことになります。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、後遺障害等級に関わらず、入院や通院した期間に応じて以下の表で算出されます。
入通院慰謝料は、原則的にこの表を用いて計算します。
14級の場合、14級1号〜14級8号までの症状の場合、この表を用いることになります。
通院と入院がそれぞれ何ヶ月かを確認します。
ここでいう「通院」とは、実際に通った日数の実通院日数ではなく、通院期間のことを指します。
通院期間とは、通院開始日から最終通院日までの総日数のことをいいます。
そして、ここでの1ヶ月は全て30日として計算します。
例えば、3月1日から通院を開始して、その年の4月29日に治療を終了した場合、その通院期間は60日となります。
このケースで入院がないことを前提とすると、通院2ヶ月のところの52万円が入通院慰謝料ということになります。
軽傷の場合とは、軽い打撲、軽い挫傷、捻挫などの症状の場合を指します。
14級の中でも最も多いのが14級9号で、14級9号だと基本的にはこの軽傷の場合の表を用いることが一般的です(症状が上記の打撲や捻挫等に該当しない場合は、最終的に認定された等級が14級9号でも、「原則的な表」の方を用いる余地があります)。
表の見方については、上記の「原則的な表」で解説したものと同じようになります。
事案によっては、上記の表の金額が修正されることがあります。
修正されるケースは、以下のような場合です。
【減額修正の例】
通院期間が長期にわたって実通院日数が非常に少ない場合
→原則的な表だと実通院日数の3.5倍、軽傷の場合の表だと実通院日数の3倍をそれぞれ通院期間とみなすという修正がなされる可能性があります。
【増額修正の例】
会社や加害者に故意や重過失があったり、労災事故後に不誠実な対応が行われたりした場合
入通院慰謝料も、労災保険から出ませんので、会社や加害者などに請求していくことになります。
労災の後遺障害14級の逸失利益はいくら?
逸失利益は、以下のような計算式で算出します。
(計算式)
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
基礎収入について
基礎収入は、原則的に被害者の事故前年の年収額になります。
なお、会社の給与規程などから確実に昇給が見込まれる場合は、例外としてその金額を考慮することもあり得ます。
労働能力喪失率
労働能力喪失率は、労働基準局長通達(昭和32年7月2日基発551号)・労働能力喪失表に記載されている喪失率を参考に、被害者の年齢、職業、性別、後遺障害の部位や程度、労災事故前後の稼働状況などを総合考慮して決められます。
後遺障害14級の労働能力喪失表は5%になっていますので、14級事案では基本的に5%で計算することになります。
労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
労働能力喪失期間は、原則、67歳から症状固定日の年齢を差し引いて算出します。
例えば、症状固定日の年齢が35歳の場合の労働能力喪失期間は、32年(67歳ー35歳)となります。
そして、中間利息を控除するため、労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数というものを用いることになります。
ライプニッツ係数は、下記のサイトに記載されている表の数字を用いることになります。
なお、14級9号の場合は、労働能力喪失期間は、5年間に制限されることが多いです。
(前提条件)
・症状固定時40歳の被害者が14級6号の後遺障害を負った
・事故前年の年収は400万円(計算)400万円 × 5% × 18.3270(27年)= 366万5400円
このケースでの逸失利益は、366万5400円となります。
労災の後遺障害14級でもらえるその他の賠償金
休業損害
休業損害は、会社を休んで減収した場合に請求できるものになります。
なお、有給休暇を使用して会社を休んだ場合には、その分を会社や加害者に請求できる余地があります。
その他にも、上記でも解説したとおり、治療費や通院交通費等も請求できます。
労災の後遺障害14級で賠償金を受け取るポイント
労災に対して後遺障害の申請を行う
後遺障害14級分の賠償金をもらうためには、前提として労災に後遺障害の申請をする必要があります。
後遺障害の申請は、症状固定時期(これ以上症状の改善が見込まれない時期のことです)まで通院をして、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、その他必要書類を揃えて労災に提出して行います。
会社や加害者に対しても請求する
労災からもらえる金額は、全部の損害の一部に過ぎません。
特に、労災から入通院慰謝料や後遺障害慰謝料はもらうことができません。
労災からもらえない金額については、会社や加害者などに請求していくことになります。
もっとも、会社に対して請求する場合には、労災事故が起きたことについて、会社に過失や安全配慮義務違反があることが前提となります。
労災に強い弁護士に相談する
適切な14級の賠償金を受け取るためには、労災に強い弁護士に相談してアドバイスを受けたり、その弁護士に依頼して代理交渉や訴訟を任せることが望ましいです。
労災に強い弁護士であれば、14級の適切な賠償金を把握しているでしょうし、適切な証拠収集や主張の仕方をしてくれることが期待できます。
労災に強いかどうかは、ホームページ上の取扱分野や、労災に関しての情報発信をしているかどうかを参考にしてみるのが良いでしょう。
労災の後遺障害14級についてのQ&A
労災の後遺障害14級で一時金はいくらもらえる?
上記でも解説したとおり、労災の後遺障害14級でもらえる一時金の種類には以下の3つがあります。
- ① 障害補償等一時金
- ② 障害特別支給金
- ③ 障害特別一時金
以下、具体例でもらえる金額をご説明いたします。
(前提条件)
・給付基礎日額:1万2000円
・算定基礎日額:1500円①障害補償等一時金
1万2000円 × 56日 = 67万2000円
②障害特別支給金
8万円
③障害特別一時金
1500円 × 56日 = 8万4000円
このケースで14級の一時金の合計は、
67万2000円 + 8万円 + 8万4000円 = 83万6000円
となります。
まとめ
本記事では、労災で後遺障害14級が認定された場合にもらえる金額について説明してきました。
被害者がもらえる金額は、大きく分けて、労災から支給されるものと、会社や加害者から受領するものがあるということがわかっていただけたと思います。
もっとも、労災にはきちんと申請しなければ適切な金額はもらえないし、会社や加害者にも一定の要件を満たさなければそもそも請求もできません。
労災で14級が認定された方は、適切な金額を受領できているかを弁護士に相談されることをお勧めいたします。
デイライト法律事務所には、労災案件に注力する人身障害チームがあります。
労災で14級が認定されている方は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。