熱中症は労災となる?給付金額や認められない事例を解説


熱中症は、発生状況によっては労災(労働災害)として認定される可能性があります。

熱中症は、高温多湿な環境に長時間いた際に体温調節がうまくいかなくなることで発症し、時に重篤な状態を引き起こすこともある危険な疾病です。

熱中症は会社の業務や通勤に関連して起こることもあり、そのような場合には労災の対象となることもあります。

この記事では熱中症について、労災の認定基準や認定事例、会社の責任、労災の給付内容、熱中症の予防策などを弁護士が詳しく解説します。

熱中症は労災になるの?

熱中症は、会社の業務や通勤と関連して発症した場合、労災として認定される可能性があります。

労災(労働者災害補償保険)とは、労働者が仕事中や通勤中に怪我をしたり病気になったりした場合に、治療費や休業補償などの給付を行う公的な保険制度です。

労災の制度は、労働に関連して生じた病気や怪我に対して補償を行うことで、労働者の社会復帰を促進するとともに、労働者の安全や衛生の確保等を図ることを目的とするものです。

このような補償を行う必要性は、熱中症の場合でも異なりません。

熱中症も、業務上の事由や通勤に起因して発症した場合には、労災として認定されることがあります。

具体的には、以下のような状況で発症した熱中症が労災として認められる可能性があると考えられます。

  • 高温多湿な環境下での作業中に発症した場合
  • 直射日光の下での屋外作業中に発症した場合
  • 重労働や激しい肉体労働中に発症した場合
  • 適切な休憩や水分補給が確保されていない状況下で発症した場合

ただし、単に暑い環境下で働いていたというだけでは労災認定には不十分です。

後に労災の認定基準をご紹介しますが、業務災害であれば、業務と熱中症の発症との間に相当因果関係が認められる必要があります。

また、個人の体調や基礎疾患の有無なども考慮されます。

 

熱中症の労災を警戒すべき理由

熱中症は、高温多湿の環境で発生します。

仕事では、たとえば営業や現場での作業など、相手方の都合に合わせて動く必要のある場面も多く、暑いからといってその状況を回避することが難しいということがあります。

場合によっては、直射日光の下で作業せざるを得ないといったように、熱中症の危険がきわめて高い環境下での作業となることもあります。

実際の統計上も、職種別で見ますと建設業と製造業における発症が多くなっており、その他では運送業や警備業での発生が目立ちます。

参考:令和5年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」|厚生労働省ホームページ

このように、仕事によっては熱中症の起こりやすい環境に長時間さらされることもあるため、特に熱中症で労災とならないように警戒する必要があるのです。

 

 

労災の認定基準とは?

労災の認定基準は、労働者の怪我や病気が労働災害に当たるかを判断するための基準です。

労働災害には業務上の事由による業務災害と、通勤を原因とする通勤災害があり、それぞれに認定基準があります。

 

業務災害の認定基準

業務災害とは、業務上の理由による病気や怪我のことを指し、これに当たるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要件を満たす必要があります。

業務遂行性は、労働者が事業主の指揮命令下で業務を遂行中であったことを意味します。

これには事業場内での業務や休憩時間、さらに出張や配達などの外部での業務も含まれます。

業務起因性は、病気や怪我が業務によって引き起こされたものであることを意味し、法的には業務と傷病との間に因果関係があるという言い方をします。

事故による怪我の場合は比較的判断しやすいですが、病気の場合はより慎重な判断が必要です。

業務内容、労働時間、労働環境などの要素を考慮し、業務との具体的な関連性を評価します。

熱中症が業務災害と認定されるためには、以上の業務遂行性と業務起因性の両方の要件を満たすことが必要となります。

 

通勤災害の認定基準

通勤災害は、通勤を原因として労働者が怪我や病気になることをいい、通勤とは、合理的な経路及び方法によって次のような移動をすることをいいます(労働者災害補償保険法7条2項)。

参考:労働者災害補償保険法|電子政府の総合窓口

  • 住居と就業の場所との間の往復
  • 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
  • 住居と就業の場所の往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

これらの間における移動の経路を逸脱し、または移動を中断した場合は、その後の移動は原則として通勤となりません(労働者災害補償保険法7条3項)。

ただし、逸脱又は中断が日用品の購入など日常生活上必要な行為でやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱・中断が終了し経路に復帰して以降は、通勤と認められることがあります(労働者災害補償保険法施行規則8条)。

参考:労働者災害補償保険法施行規則|電子政府の総合窓口

また、疾病に関しては、個人的な病気がたまたま通勤中に発症したようなものを除くため、「通勤による負傷に起因する疾病その他通勤に起因することの明らかな疾病」に限られています(労働者災害補償保険法施行規則18条の4)。

参考:労働者災害補償保険法施行規則|電子政府の総合窓口

 

熱中症は労災認定の基準を満たすか

熱中症についても、以上の基準を満たせば労災となります。

業務災害

業務災害は、業務遂行性と業務起因性を満たす場合に認定されます。

業務遂行性は、労働者が会社の指揮命令下で業務を遂行中であるときに発生することが条件となるため、たとえば工事現場での作業中や屋外での営業活動中、あるいは施設内での業務中に熱中症が発生した場合にこの要件を満たします。

業務起因性は、熱中症が業務によって引き起こされたものである場合に認められ、たとえば高温多湿な環境での長時間労働や、十分な休憩が取れない状況、冷房設備のない場所での業務などが考えられます。

これらのような状況で体調を崩し熱中症となった場合、業務と熱中症の因果関係が認定され、業務起因性が認められる可能性があります。

ただし、因果関係の認定は個別判断となりますので、個々のケースによって判断が異なる可能性があります。

労災の認定基準についての詳細は、以下のページをご覧ください。

 

通勤災害

通勤災害では、主に通勤経路から逸脱していないかという点と、通勤に起因するものか、つまり通勤に通常伴う危険が具体化したものといえるかが労災認定のポイントとなります。

経路については、一般的な通勤として職場と自宅とを移動している場合は通勤災害と認められやすいですが、買い物などで経路を外れると、日常生活に必要な最小限度のものといえるかが問題となります。

また、疾病については通勤の危険が具体化したかという点も判断基準となりますが、熱中症の場合は、そのときの気温などの状況から、ある程度客観的な判断が可能です。

熱中症を発症したのが一般的な通勤の途中であり、高温多湿な状況であれば、他に特別な事情がない限り、通勤災害と認められる可能性があるといえそうです。

 

 

熱中症が労災と認められた事例

以上のように、業務中や通勤中に熱中症を発症した場合、労災の認定基準を満たせば、業務災害や通勤災害として労災と認められる可能性があります。

ここでは、熱中症が労災として認められた具体的な事例をいくつか紹介します。

参考:労働災害事例集|厚生労働省ホームページ

 

真夏の木造家屋建築工事現場での作業の事例

被災者は、朝方より木造家屋建築工事現場で家屋の基礎の型枠材の加工、組み立て作業に従事していた。

休憩は、1時間に1回(50分労働の後、10分の休憩)、昼休憩は12時から13時まで、午後も1時間に1回の休憩をとっていた。

夕方の休憩時、被災者がふらふらし始めたので、頭に水をかけて冷やした。

しかし、その後ろれつが回らなくなり、痙攣を起こしたので、空のポリタンクを枕にして寝かせた。

それでも回復する兆しがなかったので、救急車の出動を要請したが、搬送された後「熱射病による多臓器不全」により死亡した。

 

道路補修工事現場での交通誘導業務の事例

被災者は交通警備員として、道路補修工事現場に配置され、交通誘導業務を行っていた。

その際、被災者は、会社の警備員の制服(上下)を着用し、保護帽を被り、交通誘導中も適宜ペットボトルにより水分補給を行っていた。

午後になり交通誘導が不要になったため、被災者は、現場内の跨線橋の桁の日陰で休憩をとるように指示された。

休憩の指示がなされてからほどなく、当該補修工事とは関係のない測量会社の社員が、被災者が休憩をとっていた跨線橋の桁の日陰から当該補修工事場所までの通り道で、仰向けになり、嘔吐し、鼻血を出し、意識不明の状態になっていた被災者を発見した。

 

焼成室内でパンの焼き具合等の監視業務の事例

災害発生当日、被災者は昼前より、昼食及び適宜休憩をとりながらパン製造工程ラインの監視業務に就いていたが、夜分、焼成室におけるトンネルオーブン出口付近で、トンネルオーブン側に頭を向けて仰向けに倒れているところを、焼成室に隣接する仕上げ室の労働者により発見された。

直ちに救急車が要請され、到着までの間、身体が熱く意識がなかった被災者の身体を氷水で冷やすなどの応急措置が施されたが、翌朝、熱中症により搬送先の病院で死亡した。

熱中症予防のためには適切な休憩と水分補給の確保が重要なことはいうまでもありませんが、これらの事例から、たとえ適宜休憩を取っていても油断はできないことがわかります。

熱中症に対する理解を深め、予防のための適切な対策を講じる必要があります。

 

 

熱中症が労災と認められなかった事例

熱中症では、労災として認められなかった事例も存在します。

労災不支給決定に対する再審査請求を棄却した裁決(平成30年労335号)では、熱中症の発症を否定して労災と認めませんでした。

理由としては、医療機関の記録に熱中症の症状や所見を呈していたことを示唆する記載が認められないこと、災害発生当日の現場付近の気象は、気温30.1℃であり、発症前1週間においても最高気温が30℃を下回る日が散見されること、従業員に持病があったことなどから、業務によって熱中症を発症したのではなく、従業員の個人的な疾病が発症したものと判断したのです。

参考:平成30年労第335号|厚生労働省ホームページ

このように、労災の認定においては、疾病が業務に起因するものといえるか、さまざまな事情を考慮して因果関係が判断されます。

そのため、業務中に発症したものであっても、事案によっては労災として認定されないことがあるのです。

 

 

熱中症は会社の責任となるの?

熱中症が労働災害として認定された場合、会社に責任が生じる可能性があります。

 

会社の法的責任

会社は、従業員がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする法的義務を負っており、これを「安全配慮義務」といいます(労働契約法5条)。

参考:労働契約法|電子政府の総合窓口

会社が従業員の熱中症予防のための適切な措置を講じておらず、従業員が熱中症を発症した場合、安全配慮義務違反となる可能性があります。

また、労働安全衛生法や労働安全衛生規則では、事業者に対して労働者の安全と健康を確保するための措置を義務付けています。

たとえば、以下のような措置をとることが義務付けられています。

  • 暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、有害のおそれがあるものについては、冷房等により適当な温湿度調節の措置を講じなければならない(労働安全衛生規則606条)
  • 暑熱環境等一定の事業場については、定期的に気温等を測定しなければならない(同規則607条1項)。

参考:労働安全衛生規則|電子政府の総合窓口

このような措置を怠った場合も法令違反であるため、会社に法的責任が生じる可能性があります。

 

会社に生じるリスク

以上のように、会社の熱中症対策が不十分であった場合、法令違反となるおそれがあります。

会社の責任が認められた場合、以下のようなリスクが生じる可能性があるため、従業員の熱中症にも十分注意する必要があります。

 

労災保険料の上昇

熱中症で労災認定された場合、治療費等の従業員に対する補償は労災保険から給付されますが、保険料率の上昇につながる可能性があります。

労災保険では、災害率等を考慮して事業の種類ごとに保険料率が定められていますが、事業場での労働災害の発生状況に応じて保険料や保険料率が調整される制度となっており、これを「メリット制」といいます。

従業員が熱中症で労災認定を受けた場合、メリット制により保険料や保険料率が上昇する可能性があります。

 

損害賠償請求

会社に安全配慮義務違反が認められた場合、従業員から民事上の損害賠償請求を受ける可能性があります。

労働災害によって従業員に損害が生じた場合、労災保険によって補償されるのが原則ですが、労災の給付対象とならない損害が生じているときは、その部分は労災によってカバーされません。

そのようなケースでは、会社に法的な責任があるとして、被災した従業員から損害賠償請求を受ける可能性があるのです。

 

行政処分・行政指導

熱中症の背景として、前述の温度管理のような安全衛生上の義務違反が認められた場合、是正勧告などの行政指導を受ける可能性があります。

 

社会的信用の低下

熱中症による労災が発生したことで、会社の安全管理体制が疑問視され、会社の社会的信用が低下する可能性があります。

以上のように、熱中症で労災が発生すると、会社には大小さまざまなリスクが生じます。

このようなリスクを回避するためにも、会社は適切な熱中症対策を講じることが重要です。

具体的には、作業環境の改善、適切な休憩時間の確保、水分補給の奨励、熱中症に関する教育の実施などが求められます。

また、熱中症の兆候が見られた場合の速やかな対応策を準備しておくことも重要です。

 

 

熱中症で労災となった場合の給付内容

熱中症が労災と認定された場合、労働者災害補償保険法に基づき、以下のような給付を受けることができます。

熱中症で労災となった場合の給付内容

療養(補償)給付

治療に必要な医療費が、全額支給されます。

療養(補償)給付は、原則として医療サービスの現物給付の形で支給されます。

このため、労災指定医療機関での治療であれば、原則として自己負担なく受診することができます。

 

休業(補償)給付

療養のために休業し、賃金を受けられない場合、休業4日目から給付が始まります。

給付額は、休業1日につき給付基礎日額の80パーセントに相当する額です(特別支給金含む)。

 

障害(補償)給付

熱中症の結果、後遺障害が残った場合に支給されます。

障害(補償)給付では、後遺障害が該当する障害等級に応じて、一時金または年金が支給されます。

 

遺族(補償)給付

不幸にも熱中症により従業員が死亡した場合、遺族に対して支給されます。

遺族の人数や状況に応じて、年金または一時金が支給されます。

 

葬祭料(葬祭給付)

熱中症により従業員が死亡した場合、葬祭費用の給付として、葬祭を行う者に対して支給されます。

 

傷病(補償)年金

療養開始後1年6ヶ月を経過しても症状が完全に治ゆせず、かつその症状が傷病等級(1級~3級)に該当する場合に支給されます。

 

介護(補償)給付

熱中症により重度の障害を抱え、介護が必要な状態になった場合に、介護の必要な程度に応じて支給されます。

これらの給付を受けるためには、労働基準監督署に対して請求手続きを行う必要があります。

また、給付の内容や金額は、被災した従業員の賃金や障害の程度などによって異なってきます。

熱中症が重症化すると、長期的な治療や後遺症が残る可能性もあるため、適切な給付を受けることが重要です。

労災認定や給付の請求手続きは複雑であるため、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

労災の補償内容の詳細については、以下のページをご覧ください。

 

 

会社が熱中症を防止するために注意したいこと

会社が熱中症を防止するために注意すべき点は多岐にわたります。

ここでは、熱中症を予防するための主な対策をまとめます。

中には、従業員の安全確保の一環として法令上義務づけられているものもあります。

熱中症は、最悪の場合死に至るおそれもある、きわめて危険な疾病です。

従業員を熱中症の危険から守るため、次のような対策を積極的に検討しましょう。

 

作業環境の管理

熱中症は暑熱環境で発症しやすいため、従業員の作業環境の管理は大変重要です。

屋外作業であれば、日よけや涼しい休憩場所を確保するように注意するとともに、熱中症は室内でも発症することがあるため、室内作業であっても、適切な温度管理と換気を行う必要があります。

また、熱中症は高温多湿の環境で発生しやすく、温度だけでなく湿度も考慮する必要があります。

このため、気温だけでなく、日射・輻射など周辺の熱環境や湿度も考慮した指標である「WBGT値(暑さ指数)」を測定するなどして、適切な作業環境の管理を行うとよいでしょう。

 

作業内容の管理

従業員が暑熱環境で業務に当たる場合、作業環境とともに、作業内容にも注意を払う必要があります。

作業時間の短縮や、こまめな休憩を与えるなどのほか、熱に慣れていない作業者には徐々に作業量を増やすといったことも有効です。

人体では、暑熱環境に晒されることによって「暑熱順化」という反応が起き、これは簡単にいうと「暑さに慣れる」ことを意味します。

急に暑熱環境での長時間作業を命じるのではなく、徐々に作業時間を延ばすなどして暑熱順化を意識することで、熱中症の予防効果が期待できます。

 

水分・塩分補給

発汗により水分と同時に塩分が体から失われるため、暑熱環境ではこれらを十分に補給することが大切です。

労働安全衛生規則でも、発汗作業に関する措置として、多量の発汗を伴う作業場においては、労働者に与えるために塩及び飲料水を備えなければならないとされています(労働安全衛生規則617条)。

参考:労働安全衛生規則|電子政府の総合窓口

水分や塩分は、熱中症を発症した場合に速やかに補給することも大切ですが、こまめに補給することで熱中症の予防にもつながります。

最近では熱中症対策グッズとして塩タブレットや経口補水液などが充実していますので、発汗作業に従事する従業員には十分な量を配布しましょう。

 

緊急時の対応

従業員に熱中症の疑いがある場合、迅速な処置が鍵となります。

いざというときに適切な処置を取れるよう、緊急時の対応手順を明確にしておきましょう。

炎天下や工場などの暑熱環境での肉体労働はもちろん、昨今の猛暑は「災害級」などとも評されますので、オフィスでの事務仕事であっても油断はできません。

すべての従業員に熱中症の危険があることを認識し、従業員全体で対応方法を共有するとともに、熱中症発生時の対応を訓練のような形でシミュレーションしておくことも有効な対策となります。

以上のような対策を適切に実施することによって、熱中症のリスクを低減することができます。

また、対策の実施状況を記録し、定期的に見直すことも重要です。

熱中症対策は、労働者の安全と健康を守るだけでなく、労災リスクの軽減や生産性の維持向上にもつながります。

 

 

熱中症と労災についてのQ&A

熱中症で労災を申請する際の手続きの仕方を教えて下さい。

労災の給付を受けるためには、所定の手順で手続きを行う必要があります。

熱中症で労災を申請する際の手続きのおおまかな流れは、次のとおりです。

熱中症で労災を申請する際の手続きのおおまかな流れ

①会社への報告

業務上の事故や疾病が発生した場合、速やかに会社に報告します。

 

②労災保険の請求手続き

労働者は、必要な請求書と添付書類を準備し、管轄の労働基準監督署に提出します。

 

③労働基準監督署による審査・決定

労働基準監督署は、提出された書類をもとに、業務上の災害であるかどうかを調査します。

労働基準監督署は調査結果に基づいて、労災保険給付の支給または不支給を決定し、結果を請求者に通知します。

労災申請の手続きについては、こちらの記事をご覧ください。

 

通勤中に熱中症になったら労災になりますか?

通勤中に発症した熱中症も、一定の条件を満たせば労災の対象となる可能性があります。

労働者災害補償保険法では、労働者の通勤途上の災害も保護の対象としています。

ただし疾病については、従業員の個人的な疾病がたまたま通勤中に発症したようなケースは対象外となりますので、通勤に通常伴う危険が具体化したといえることを要します。

熱中症は、個人的な素因よりは暑熱環境という環境的要因が発症に深く関わっていると考えられます。

労災の認定は最終的には事案ごとの個別判断となりますが、通勤中に発症した場合、通勤環境と無関係に発症する可能性は高くないと思われることから、労災と認められる可能性はあると考えられます。

 

まとめ

この記事では熱中症について、労災の認定基準や認定事例、会社の責任、労災の給付内容、熱中症の予防策などを解説しました。

記事の要点は、次のとおりです。

    • 熱中症は、業務や通勤に関連して発症した場合、労災として認定される可能性がある。
    • 労災は、業務災害であれば業務遂行性と業務起因性、通勤災害あれば、通勤に通常伴う危険が現実化したかという基準によって判断される。
    • 熱中症の労災認定事例には、建設現場や工場での高温作業などがある。
    • 熱中症で労災認定された場合、療養補償給付や休業補償給付などの保険給付を受けられる。
    • 会社には従業員に対する安全配慮義務があるため、適切な熱中症対策を講じる必要がある。

当事務所では、労災問題を多く取り扱う人身傷害部の弁護士が相談から受任後の事件処理を行っています。

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