労災で病院代の支払いはどうなる?わかりやすく解説


労災の場合、病院代の自己負担金額は基本的に0円ですが、状況によっては一時的に立て替えが必要なケースもあります。

特に、労災指定病院を利用するかどうかで、支払いの方法が大きく異なります。

この記事では、労災で病院にかかった際の費用や返金の手続き等について、わかりやすく解説をしていきます。

労災の際の病院代について正しく理解することで、不要な自己負担を避け、適切な補償を受けることができますので、労災の病院代で不安を抱えている方は、ぜひ最後までお読みください。

労災で病院代の支払いはどうなる?

労災でかかった病院代は、労災保険によって全額まかなわれます。

しかし、労災指定病院以外の医療機関で治療を受けた場合は、1度病院代を立て替える必要があります。

お金に不安がある場合は、はじめから料金が一切かからない労災指定病院を受診することをおすすめします。

 

 

労災時の病院代の支払いは2パターンある

労災での病院代の支払い方法には、「原則として窓口での支払いが不要な場合」と「一時的に窓口で支払いを行う必要がある場合」の2パターンがあります。

どちらの方法になるかは、利用する病院が「労災指定病院」かどうかによって異なります。

 

 

指定病院で支払うパターン

労災で受傷した際に、「労災指定病院」を受診するパターンでは、労災保険に基づく治療費の請求手続きを病院側が代行してくれるため、窓口での支払いが不要になります。

この方法を利用することで、経済的な負担を軽減し、手続きの手間も大幅に省くことができます。

ここからは、労災指定病院での支払い方法と指定病院の探し方について詳しく説明します。

 

指定病院で支払う方法

労災指定病院を利用する場合、治療費を窓口で支払う必要はありません。

健康保険を利用した場合のような「3割負担」もなく、労働者の自己負担額は0円です。

支払い手続きの負担が最小限に抑えられるため、最も便利な方法といえます。

受診の際は、労災での受診であることを窓口で伝え、以下の書類を提出しましょう。

業務災害の場合 療養の給付請求書「様式第5号」
通勤災害の場合 療養の給付請求書「様式第16号の3」

なお、受診時にこれらの書類を提出できなかった場合は、一時預り金として1万円程度の支払いを求める病院もあります。

書類を提出すればお金は返ってきますが、余裕がある場合は受診までに書類を用意しておくと安心です。

参考:厚生労働省|労災保険給付関係請求書等ダウンロード

 

労災指定病院の探し方

労災指定病院を探す方法として、以下のような方法があります。

  • 厚生労働省のホームページから検索する
  • 独立行政法人労働者健康安全機構のホームページから検索する

 

厚生労働省のホームページから検索する

厚生労働省が公開している労災保険指定医療機関検索では、労災指定病院について、医療機関名や所在地、診療科目などから検索することができます。

以下にリンクを記載しておきますので、ぜひご活用ください。

参考:厚生労働省|労災保険指定医療機関検索

 

独立行政法人労働者健康安全機構のホームページから検索する

労災病院は全国に32ヵ所設置されており、その所在地は独立行政法人労働者健康安全機構が公開しています。

以下にリンクを記載しておきますので、ぜひご活用ください。

参考:独立行政法人労働者健康安全機構|労災病院全国地図

 

 

指定病院以外で支払うパターン

労災保険を利用する際に最も負担が少ないのは、「労災指定病院」を受診する方法です。

しかし、指定病院が近くにない場合や急を要する場合は、やむを得ず指定外の病院を受診することもあることと思います。

この場合、労災指定病院とは異なり、窓口で一時的に医療費を立て替える必要があります。

立て替えたお金については、後から請求することで全額の返金を受けることができます。

ここでは、指定病院以外で支払う方法について詳しく解説します。

 

指定病院以外で支払う方法

指定病院以外で受診する場合、一時的に治療費を立て替える必要があります。

その後、労働基準監督署へ請求手続きを行うことで、立て替えた分の費用が全額支給される仕組みです。

窓口での支払いでは、健康保険が使えず全額自己負担となるため、通常の医療費(3割負担)よりも高額になる点は注意しましょう。

 

 

自費で立て替えたときの返金手続

労災で受傷し、やむを得ず労災指定病院以外の医療機関で治療を受けた場合や、誤って健康保険を使用してしまった場合でも、適切な手続きを行うことで、治療費の全額について返金を受けることができます。

ここからは、返金までの一連の流れや必要な書類、返金時期の目安について、わかりやすく解説します。

 

返金手続の流れ

返金手続の流れは、以下の通りです。
返金手続の流れ
詳しく説明をしていきます。

治療費の支払いをする

労災指定病院以外で治療を受けた場合、一旦は全額を自己負担で支払う必要があります。

この際、健康保険は使用できないため、治療費全額について支払いを行う必要がある点に注意が必要です。

なお、療養の費用の支給を請求する際には、病院の窓口で発行される領収書の添付が必要となりますので、必ず大切に保管しておきましょう。

薬局で薬剤を処方してもらった際の領収書も、同様の理由から保管しておいてください。

 

療養の費用請求書を作成する

療養の費用を請求したいタイミングに合わせて、療養の費用請求書を作成します。

 

労働基準監督署に必要書類を提出する

療養の費用請求書が作成できたら、領収書と合わせて労働基準監督署に提出します。

書類を提出するべき労働基準監督署は、会社の所在地を管轄している労働基準監督署です。

 

労働基準監督署による調査が行われる

療養の費用請求書などの必要書類を提出したら、労働基準監督署による調査が行われます。

主に以下の点が調査対象となります。

  • 請求書の不備
  • 事故やけがの内容
  • 治療の内容

必要な場合には、会社や医療機関に聞き取りを行うこともあります。

 

支給決定通知が送付される

労働基準監督署の調査が完了すると、支給の可否が決定され、結果が「支給決定通知書」として送付されます。

 

治療費が返金される

労働基準監督署の調査が完了し、支給が決定されると、指定した口座に治療費が振り込まれます。

 

返金のための必要書類

返金を請求するために、労働基準監督署に提出する必要がある書類は、以下の通りです。

  • 療養の費用請求書
  • 治療費等の領収書

なお、療養の費用請求書は、費用を支払った医療機関によって提出するべきものが異なりますので、以下を参考にしてください。

業務災害の場合
病院での治療 療養の費用請求書第7号(1)
薬局での薬剤処方 療養の費用請求書第7号(2)
柔道整復師による手当 療養の費用請求書第7号(3)
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師による手当 療養の費用請求書第7号(4)
訪問看護事業者による訪問看護 療養の費用請求書第7号(5)
通勤災害の場合
病院での治療 療養の費用請求書第16号の5(1)
薬局での薬剤処方 療養の費用請求書第16号の5(2)
柔道整復師による手当 療養の費用請求書第16号の5(3)
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師による手当 療養の費用請求書第16号の5(4)
訪問看護事業者による訪問看護 療養の費用請求書第16号の5(5)

これらの療養の費用請求書は、厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。

引用:厚生労働省|労災保険給付関係請求書等ダウンロード

 

立替金が返金される時期

労災で立て替えた治療費が返金される時期は、労働基準監督署の調査状況等によって異なります。

一般的には、申請から1ヶ月から2ヶ月程度で返金されることが多いですが、場合によっては3ヶ月以上かかることもあります。

 

 

労災で病院にかかるときの注意点

労災で病院にかかるとき、特に注意していただきたいポイントが2点あります。

労災で病院にかかるときの注意点

詳しく解説をしていきます。

 

薬局でも給付請求書を提出する

労災保険は医療機関での治療費だけでなく、薬局で処方される薬代も補償の対象となります。

労災保険指定薬局で薬剤を処方してもらう場合は、「療養の給付請求書」を提出することで、薬代を支払う必要がなくなります。

病院外の薬局で処方を受ける場合は、薬局でも療養の給付請求書を提出する必要がありますので、合計2通の請求書を作成しておかなければならないという点に注意しましょう。

なお、労災保険指定薬局で処方を受ける場合は、1度お金を立て替えた上で、労働基準監督署に「療養の費用請求書」を提出し、返金を受けることになります。

 

健康保険は使用しない

労災で治療を受ける場合、健康保険を使用してはいけません。

なぜなら、労災に該当する怪我や病気は、健康保険ではなく労災保険の対象になるためです(健康保険法第55条1項)。

また、労災保険では治療費はかかりませんが、健康保険では3割の自己負担がありますので、金銭的にも健康保険を利用するメリットはありません。

健康保険から労災保険に切り替える手続きを行うことは可能なため、すでに健康保険を使ってしまったという方は、すぐに労災保険に切り替える手続きをしましょう。

健康保険から労災保険に切り替える方法については、以下の記事で詳しく解説をしていますので、合わせてご活用ください。

 

 

病院代の支払いについてのQ&A

病院代の支払いに関して、よくあるご質問にお答えします。

 

労災時、病院代の10割負担を払えないときどうすればいい?

病院代の10割負担を払えない場合は、労災指定医療機関を利用することをおすすめします。

労災指定医療機関であれば、受診前に「療養の給付請求書」を窓口で提出することで、医療費を負担することなく、治療を受けることができます。

 

労災時、病院代をカードで支払えますか?

労災による治療で病院代を支払う際、クレジットカードやデビットカードが使えるかどうかは、病院次第です。

労災による治療費であっても、現金で支払わなければならないという決まりはありません。

そのため、カード払いに対応している病院であれば、問題なくカードで支払いをすることができます。

なお、クレジットカードの利用明細は、領収書の代わりにはなりませんので、必ず医療機関が発行した正式な領収書を保管しておきましょう。

 

 

まとめ

労災で病院にかかる際は、労災指定医療機関では、窓口負担なしで治療を受けることができます。

一方、労災指定医療機関以外では、一旦全額を支払い、その後返金を受ける形になります。

また、薬局でも同様の扱いとなるため、注意が必要です。

病院代の支払いが不安な場合は、早めに労災に詳しい弁護士に相談するのが有効です。

弁護士に相談することで、返金手続きのサポートが期待できます。

当事務所では、労災問題を多く取り扱う人身障害部の弁護士が被災労働者の方を強力にサポートしています。

電話相談、オンライン相談(LINE、ZOOM、Meetなど)により、全国対応も可能ですので、お困りの方はぜひお気軽にご相談下さい。

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