労災病院とは?普通の病院との違いやメリットを紹介


労災病院は、労災や職業病の治療に特化した医療機関です。

一般の病院とは異なり、労災に関する専門的な治療や職場復帰支援が充実している点が特徴です。

本記事では、労災病院と一般の病院の違いを詳しく解説し、労災病院を利用するメリット・デメリットについてもご紹介します。

労働災害は、誰にでも起こり得るリスクです。

万が一の際に適切な対応ができるよう、労災病院の仕組みを理解し、スムーズな治療と職場復帰を目指しましょう。

労災病院とは?

労災病院とは、労働災害(仕事中や通勤途中に負った怪我や病気)や職業病(仕事が原因で発症する病気)に特化した医療を提供する病院です。

労災病院は、独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)が全国に設置・運営し、仕事による傷病について適切な治療をし、労働者が職場復帰を目指せるよう支援しています。

現時点(令和7年1月)では、全国32ヵ所に設置されています。

 

労災病院の業務

労災病院では、診療・治療・リハビリテーション等の一般的な医療の提供に加えて、以下のような専門性の高い研究等も行われています。

  1. ① 疾病に対する高度・専門的医療の提供
  2. ② 労災疾病に係る調査研究
  3. ③ 被災労働者の早期職場復帰に向けた先導的医療の実践
  4. ④ メンタルヘルス対策、過労死予防など産業保健の実践
  5. ⑤ 労災保険給付に係る業務上外の決定等での医学的判断の基礎の提供
  6. ⑥ 研究成果等の普及・教育

 

労災病院の特徴

労災病院は、国が認定する高度な医療機関であり、全国32ヵ所に設置されており、総病床数は11、703床にも及びます。

労災病院は、労働者の健康と安全を守るため、以下のような特徴的な医療サービスを提供しています。

労災による傷病の治療 整形外科、外科、内科、リハビリテーション科を中心に、労災に特化した医療を提供
包括的な医療支援 予防から治療、リハビリテーション、職場復帰支援までを一貫して実施
職業病の治療 アスベスト関連疾患、じん肺、脊髄損傷、産業中毒などの特殊な職業病に対する専門的な治療
メンタルヘルスケア 長時間労働やストレスに起因するメンタルヘルス疾患の治療とサポート

また、労災保険が適用される患者は、窓口での自己負担がなく、病院が直接労災保険から医療費を受け取る仕組みになっています。

このため、労災患者の経済的負担が軽減されるのが大きな特徴です。

 

 

労災病院の一覧

全国32ヵ所に設置されている労災病院の一覧は、以下の通りです。

施設名 所在地
北海道中央労災病院 〒068-0004
北海道岩見沢市4条東16-5
釧路労災病院 〒085-8533
北海道釧路市中園町13-23
青森労災病院 〒031-8551
青森県八戸市白銀町字南ケ丘1
東北労災病院 〒981-8563
宮城県仙台市青葉区台原4-3-21
秋田労災病院 〒018-5604
秋田県大館市軽井沢字下岱30
福島労災病院 〒973-8403
福島県いわき市内郷綴町沼尻3
千葉労災病院 〒290-0003
千葉県市原市辰巳台東2-16
東京労災病院 〒143-0013
東京都大田区大森南4-13-21
関東労災病院 〒211-8510
神奈川県川崎市中原区木月住吉町1-1
横浜労災病院 〒222-0036
神奈川県横浜市港北区小机町3211
新潟労災病院 〒942-8502
新潟県上越市東雲町1-7-12
富山労災病院 〒937-0042
富山県魚津市六郎丸992
浜松労災病院 〒430-8525
静岡県浜松市中央区将監町25
中部労災病院 〒455-8530
愛知県名古屋市港区港明1-10-6
旭労災病院 〒488-8585
愛知県尾張旭市平子町北61
大阪労災病院 〒591-8025
大阪府堺市北区長曽根町1179-3
関西労災病院 〒660-8511
兵庫県尼崎市稲葉荘3-1-69
神戸労災病院 〒651-0053
兵庫県神戸市中央区籠池通4-1-23
和歌山労災病院 〒640-8505
和歌山県和歌山市木ノ本93-1
山陰労災病院 〒683-8605
鳥取県米子市皆生新田1-8-1
岡山労災病院 〒702-8055
岡山県岡山市築港緑町1-10-25
中国労災病院 〒737-0193
広島県呉市広多賀谷1-5-1
山口労災病院 〒756-0095
山口県山陽小野田市大字小野田1315-4
香川労災病院 〒763-8502
香川県丸亀市城東町3-3-1
愛媛労災病院 〒792-8550
愛媛県新居浜市南小松原町13-27
九州労災病院 〒800-0296
福岡県北九州市小倉南区曽根北町1-1
九州労災病院門司メディカルセンター 〒801-8502
福岡県北九州市門司区東港町3-1
長崎労災病院 〒857-0134
長崎県佐世保市瀬戸越2-12-5
熊本労災病院 〒866-8533
熊本県八代市竹原町1670
吉備高原医療リハビリテーションセンター 〒716-1241
岡山県加賀郡吉備中央町吉川7511
総合せき損センター 〒820-8508
福岡県飯塚市伊岐須550-4
北海道せき損センター 〒072-0015
北海道美唄市東4条南1-3-1

引用:独立行政法人労働者健康安全機構|労災病院一覧

 

 

労災病院と普通の病院との違いとは?

労災病院は、労働災害や職業病に特化した医療を提供するために設立された専門機関です。

一方、普通の病院は、一般的な診療を提供する目的で運営されていることが多く、特定の疾患や外傷に特化している病院は少ないという特徴があります。

労災病院と普通の病院との違いについて、まずは以下の表をご覧ください。

労災病院 普通の病院
運営主体 JOHAS 国立または民間
専門性 労災や職業病に特化 一般的な医療
規模 大規模 小規模〜大規模
設備 高度な医療機器 病院によって様々
窓口での支払い 労災の場合、不要
※労災保険より直接支払い
労災の場合でも必要
※後に労災保険より返金

労災病院は、労働災害や職業病に特化した医療を提供することが最大の特徴です。

整形外科、外科、理学療法科、内科などに重点を置き、仕事が原因で発生した疾患や怪我の治療に適した専門医療を提供しています。

普通の病院では、労災患者への対応が可能な場合もありますが、その規模や専門性は病院により様々であり、必ずしも労災に関する専門的な治療やリハビリテーションを実施しているとは限りません。

また、労災病院では、労災保険の適用を受けた患者は窓口での支払いが不要です。

これは、労災病院が直接労災保険から医療費を受け取る仕組みになっているためです。

一方、普通の病院では、患者が一時的に治療費を負担し、その後労災保険の請求手続きを行う必要があるという点に注意が必要です。

 

 

労災病院と労災指定病院の違いとは?

労災病院と労災指定病院は、どちらも労災患者を受け入れる医療機関です。

しかし、以下のような違いがあります。

労災病院 労災指定病院
運営主体 JOHAS 国立または民間
専門性 労災や職業病に特化 一般的な医療
規模 大規模 小規模〜大規模
設備 高度な医療機器 病院によって様々
窓口での支払い 労災の場合、不要
※労災保険より直接支払い
労災の場合、不要
※労災保険より直接支払い

労災病院はJOHASが運営する大規模な病院です。

一方、労災指定病院は、医療機関や診療所が、都道府県労働局長の指定を受け、労災保険の適用を受けられる医療機関として登録されたものです。

そのため、労災指定病院には小規模な診療所から総合病院まで幅広く含まれ、どのような医療を受けることができるかは、病院によって異なります。

なお、どちらの病院でも、労災保険の適用を受ければ自己負担なしで治療を受けることができます。

ただし、専門的な労災医療や職場復帰支援を求める場合は、労災病院を選択する方が望ましいでしょう。

 

 

労災病院を利用するメリットとは?

労災病院を利用することで、以下のようなメリットがあります。

労災病院を利用するメリットとは?

治療費の負担が不要

労災病院では、労災保険が適用される場合、窓口で治療費を支払う必要がありません。

医療費は労災保険から直接病院へ支払われるため、自己負担を気にせずに治療を受けることができます。

一般の病院では、労災患者が一時的に治療費を支払い、後で労災保険の請求を行う必要がありますが、労災病院ではその手続きが不要です。

特に、長期治療や入院、手術を伴う場合などでは、この制度は大きな経済的メリットとなります。

 

労災に特化した専門的な医療を受けられる

労災病院は、労災や職業病の治療に特化した医療機関です。

整形外科やリハビリテーション科をはじめとした診療科が充実しており、症状に適した専門的な治療を受けることができます。

特に、骨折や外傷、職業病(腰痛、じん肺など)の治療に強みを持ち、リハビリテーション施設も整備されています。

最新の医療技術を活用することで、労働者が早期に職場復帰できるようなサポート体制も整っています。

 

手続きがスムーズ

労災病院では、労災保険の申請手続きに精通した職員が対応しているため、必要な書類の準備や申請をスムーズに進めることができます。

一般の病院では、労災保険の取り扱いに慣れていないことが多く、手続きが複雑になるケースもありますが、労災病院では迅速に対応してもらえるため、安心して治療を受けることができます。

 

 

労災病院を利用するデメリットとは?

労災病院の利用には、以下のようなデメリットが考えられます。

労災病院を利用するデメリットとは?

労災病院は全国に32ヵ所しかなく、地域によっては近隣に労災病院がない場合があります。

特に、地方では最寄りの労災病院が遠く、通院のために長距離移動が必要になることもあります。

そのため、通院が困難な場合は、労災指定病院を利用するという選択肢も検討する必要があります。

 

待ち時間が長い場合がある

労災病院は、労災患者の専門医療を提供するため、多くの労災患者が利用しています。

そのため、診療やリハビリの待ち時間が長くなることがあります。

特に、専門医の診察や手術が必要な場合は、予約が取りにくく、受診までに時間がかかることがあります。

 

 

労災病院についてのQ&A

労災病院について、よくあるご質問にお答えします。

 

労災病院で働く方は公務員ですか?

労災病院で働く方は、公務員ではありません。

労災病院は、厚生労働省が所管する独立行政法人「労働者健康安全機構」が運営しています。

そのため、そこで働く医師や看護師、職員は公務員ではなく、独立行政法人の職員となります。

独立行政法人の職員は、法律上は民間企業の従業員と同じ扱いを受けますが、国の機関に準じた形で運営されているため、一定の公的性格を持っています。

 

労災病院の病院代は誰が払うのですか?

労災病院の病院代は、労災で受診する場合は労災保険から支払われます。

労災保険は、企業が負担する保険料によって運営されており、労働者自身が保険料を支払うことはありません。

そのため、労働者が労災病院で治療を受ける際の自己負担は、原則としてゼロになります。

 

 

まとめ

労災病院は、労働災害や職業病に特化した専門的な医療を提供する機関であり、労働者の健康と安全を支える重要な役割を担っています。

労災保険が適用されるため、自己負担なしで治療を受けられるほか、リハビリテーションや職場復帰支援も充実しています。

一方で、全国にある労災病院の数が限られていることや、診療の待ち時間が長くなる可能性がある点には注意が必要です。

労災病院が近くにない場合は、労災指定病院を利用することも選択肢となります。

労働災害は、予期せぬタイミングで発生する可能性があります。

万が一の事態に備えて、労災病院の仕組みや受診の流れを理解しておくことが大切です。

また、労災に関する問題で不安に感じることがある場合には、労災に強い弁護士に相談し、安心して治療に専念できるような環境を整えることをおすすめします。

当事務所では、労災問題を多く取り扱う人身障害部の弁護士が被災労働者の方を強力にサポートしています。

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