公務災害とは?労災との違いや公務員のデメリットを解説


公務災害とは、公務員が仕事をしている最中や通勤中に怪我をしたり、病気になってしまうことです。

公務災害が起きた場合、公務員は、一般的な労働者を対象とする「労災保険制度」ではなく、「公務災害補償制度」という補償制度から補償を受けることになります。

公務災害は、公務員にとって非常に重要な制度ですが、認定基準や手続きが厳しく、すべての事故や病気が認められるわけではありません。

また、公務員は民間の労働者とは異なる立場であるため、公務災害補償制度には独自の申請ルールなどがあります。

本記事では、公務災害と労災の違いや、公務災害に認定される条件、公務員にとってのメリット・デメリットについて詳しく解説をしていきます。

公務災害について詳しく知りたいという方は、ぜひ最後までお読みください。

公務災害とは?

公務災害とは、公務員が職務を遂行する最中または通勤中に発生した怪我や病気のことであり、民間労働者の労働災害(労災)に相当するものです。

ただし、公務員の場合は、仕事中や通勤中に起きた怪我や病気について、労災保険制度ではなく、公務員災害補償制度から損害が補償されます。

なお、国家公務員の場合は「国家公務員災害補償法」、地方公務員の場合は「地方公務員災害補償法」に基づいて補償が行われます。

 

公務災害の意味

公務災害とは、公務員が仕事をしている最中や通勤中に発生した怪我や病気のことです。

職務に関連する事故であると認められれば、医療費や休業中の補償等を受けることができます。

民間企業で働く労働者向けの労災と仕組みは似ていますが、公務員専用の補償制度が適用される点が特徴的です。

 

公務災害と労災との違い

公務災害は、基本的には一般的な労災と大きな違いはありません。

ただし、あくまで民間の労働者と公務員では、別の制度による補償を受けることとなるため、一部異なる点もあります。

公務災害と労災との違いについては、以下の表をご覧ください。

公務災害 労災
対象者 公務員 民間の労働者
根拠となる法律 【国家公務員の場合】
国家公務員災害補償法
労働者災害補償保険法
【地方公務員の場合】
地方公務員災害補償法
認定機関 【国家公務員の場合】
人事院が指定する37の機関
労働基準監督署
【地方公務員の場合】
地方公務員災害補償基金
補償内容 大きな違いはない

 

対象者

公務災害の対象者は国家公務員および地方公務員であり、民間企業で働いている労働者には適用されません。

民間企業で働いている労働者については、労災保険制度による補償が行われます。

 

根拠となる法律

公務災害は、国家公務員災害補償法および地方公務員災害補償法に基づいて補償されます。

一方、労災は労働者災害補償保険法に基づいて補償が行われます。

 

認定機関

公務災害の場合、国家公務員は人事院が指定する37の機関、地方公務員は地方公務員災害補償基金が認定を行います。

これに対し、労災の場合は、労働基準監督署が労災の認定や給付手続きを担当します。

 

補償内容

公務災害も労災も、基本的な補償内容(療養補償、休業補償、障害補償など)は共通しています。

ただし、適用法律が異なるため、対応が異なる場合がありますので、詳しくは認定担当機関や弁護士にご相談ください。

 

 

労災が適用される公務員とは?

先にご説明した通り、公務員災害補償制度では、国家公務員と地方公務員で適用される法律が異なります。

また、常勤か非常勤か、現業職か非現業職かといった雇用形態によっても適用される法律が変わります。

例えば、地方公務員の場合、適用される法律は以下のように分類されます。

常勤職員 非常勤職員
現業職 地方公務員災害補償法 労働者災害補償保険法
非現業職 地方公務員災害補償法 地方公共団体の補償条例

※現業職とは、技術者、監督者、行政事務担当者以外の職です。
非現業職とは、現業職員以外の公務員です。

このように、「公務員」でも、雇用形態によっては労災保険の適用を受けることがあります。

雇用形態等に応じて、根拠となる法律や補償内容等が異なりますので、自分がどの法律に基づいて補償を受けることができるのか?を確認することが大切です。

公務災害に関する補償制度の判断が難しい場合は、人事院や労働基準監督署、弁護士等に相談することを検討されてください。

 

 

公務災害で公務員に補償される内容

公務災害が起きた場合、公務員は以下の補償を受けることができます。

補償の種類 補償の内容
療養補償 療養に必要な費用を支給
休業補償 療養のため勤務することができない場合に支給
傷病補償年金 療養開始後1年6ヶ月経過しても傷病が治癒せず、障害の程度が傷病等級(第1級〜第3級)に該当する場合に支給
障害補償 傷病が治癒したものの、障害が残った場合に支給
介護補償 障害補償年金または傷病補償年金の受給者で、常時または随時介護を要する状態にある場合に支給
遺族補償 公務員が公務災害によって死亡した場合に、遺族に対して支給
葬祭補償 公務員が公務災害によって死亡した場合に、葬祭を行う者に対して支給

 

療養補償

療養補償は、公務災害により負傷または疾病にかかった公務員に対して支給されます。

公務災害の場合、診察費、薬剤費、処置料、手術費、入院費、移送費などの治療に必要な全ての費用が補償されます。

補償の期間は、傷病が「治癒」するまでです。

 

【公務災害における治癒とは】

負傷や疾病が完全に回復することだけでなく、医学的にこれ以上の改善が見込めない状態に達した場合も含みます。

つまり、傷病が固定し、それ以上の治療を行っても効果が期待できないと判断された場合、その時点で「治癒」とみなされることになります。

 

休業補償

公務災害による療養のため、勤務できず、給与が支払われない場合には、休業補償が支給されます。

休業補償では、平均給与額(または平均給与額とその日支払われた給与との差額)の60%にあたるお金が支給されます。

また、休業援護金として平均給与額の20%が支給されるため、実質的には給与の80%が補償されることとなります。

 

傷病補償年金

療養開始後1年6ヶ月を経過しても傷病が治癒せず、障害の程度が傷病等級(第1級〜第3級)に該当する場合は、「傷病補償年金」「傷病特別給付金」「傷病特別支給金」が支給されます。

支給される金額は、傷病の等級に応じて次のとおりです。

傷病等級 補償年金 特別給付金 特別支給金
第1級 平均給与額の313日分 補償年金の額×特別給支給率(上限20%) 114万円
第2級 平均給与額の277日分 107万円
第3級 平均給与額の245日分 100万円

 

障害補償

公務災害によって後遺障害が残った場合、障害の程度に応じて「障害補償(年金または一時金)」「障害特別給付金」「障害特別支給金」「障害特別援護金」が支給されます。

支給される金額は、障害の等級に応じて次のとおりです。

障害等級 障害補償 障害特別給付金
第1級 年金 平均給与額の313日分 障害補償の額×特別給支給率(上限20%)
第2級 平均給与額の277日分
第3級 平均給与額の245日分
第4級 平均給与額の213日分
第5級 平均給与額の184日分
第6級 平均給与額の156日分
第7級 平均給与額の131日分
第8級 一時金 平均給与額の503日分
第9級 平均給与額の391日分
第10級 平均給与額の302日分
第11級 平均給与額の223日分
第12級 平均給与額の156日分
第13級 平均給与額の101日分
第14級 平均給与額の56日分

 

障害等級 障害特別支給金 障害特別援護金
公務災害 通勤災害
第1級 342万円 1,435万円 915万円
第2級 320万円 1,395万円 885万円
第3級 300万円 1,350万円 855万円
第4級 264万円 865万円 520万円
第5級 225万円 745万円 445万円
第6級 192万円 620万円 375万円
第7級 159万円 500万円 300万円
第8級 65万円 320万円 190万円
第9級 50万円 255万円 155万円
第10級 39万円 200万円 125万円
第11級 29万円 150万円 95万円
第12級 20万円 110万円 75万円
第13級 14万円 80万円 55万円
第14級 8万円 50万円 40万円

 

介護補償

障害補償年金または傷病補償年金の受給者で、日常生活において常時または随時介護が必要な場合は、介護費用が支給されます。

支給される金額については、以下のとおりです。

常時介護が必要な場合 177,950円(上限額)
随時介護が必要な場合 88,980円(上限額)

 

遺族補償

公務災害で死亡した場合、遺族に対して「遺族補償(年金または一時金)」「遺族特別給付金」「遺族特別支給金」「遺族特別援護金」が支給されます。

支給される金額は、要件を満たす遺族の数に応じて次のとおりです。

人数 遺族補償 遺族特別給付金
0人 一時金 遺族の区分に応じ、以下のいずれか

  • 平均給与額の1,000日分
  • 平均給与額の700日分
  • 平均給与額の400日分
遺族補償の額×特別給支給率(上限20%)
1人 年金 平均給与額の153日分
55歳以上または一定の障害のある妻の場合は175日分
2人 平均給与額の201日分
3人 平均給与額の223日分
4人以上 平均給与額の245日分

 

遺族特別支給金 遺族特別援護金
公務災害 通勤災害
一時金の受給者 遺族の区分に応じ、以下のいずれか

  • 300万円
  • 210万円
  • 120万円
遺族の区分に応じ、以下のいずれか

  • 1,735万円
  • 1,215万円
  • 695万円
遺族の区分に応じ、以下のいずれか

  • 1,045万円
  • 730万円
  • 420万円
年金の受給者 300万円 1,735万円 1,045万円

 

遺族補償年金の受給者

遺族補償年金を受け取ることができるのは、以下にあてはまるご遺族で、公務員が死亡した際に、その公務員の収入によって生計を維持していた方です。

順位
1 配偶者(妻又は60歳以上の夫)
2 子(満18歳になる年度の年度末まで)
3 60歳以上の父母
4 孫(満18歳になる年度の年度末まで)
5 60歳以上の祖父母
6 兄弟姉妹(満18歳になる年度の年度末までか60歳以上)
7 55歳以上60歳未満の夫、父母、祖父母、兄弟姉妹

なお、公務員の死亡当時、一定の障害の状態にあった夫、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹については年齢の制限はありません。

 

葬祭補償

公務災害で死亡した場合、葬儀を行う遺族に対し、以下の金額のうち、いずれか高い方の金額が支給されます。

給与の60日分に相当する額:31万5000円

 

 

公務災害の請求の流れ

公務災害の請求の流れは、以下のとおりです。

公務災害の請求の流れ

公務災害が発生した場合、所属機関の所属長や事務担当者に連絡しましょう。

報告が遅れると、事実関係の確認が困難になり、結果として公務災害の認定に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、できるだけ早い段階で関係者へ連絡を入れることが重要です。

また、医療機関を受診する場合は、公務災害での受診であることを伝えることが大切です。

 

認定機関に対して認定と補償の請求を行う

被災職員や遺族は、所属長に認定と補償の請求を行うことになります。

そして、所属長から任命権者(役所の長など)に対し、認定と補償の請求があったことが伝えられます。

最終的には、任命権者を経由し、認定機関に対する請求を行うこととなります。

 

認定機関による調査と認定

認定機関では、提出された書類をもとに公務災害かどうかの審査が行われます。

場合によっては追加資料の提出を求められることや、関係者へのヒアリングが行われることもあります。

医学的見地から調査が必要な場合や、複雑な事案の場合には、認定に時間がかかることがあります。

審査の結果、公務災害として認定されると、任命権者宛てに認定通知書が送付されます。

 

補償の支給

公務災害と認定されると、療養補償、休業補償、障害補償などの給付が支給されます。

 

 

公務災害の認定基準

公務災害の認定基準は、主に「公務遂行性」と「公務起因性」の2つの要件に基づいて判断されます。

 

公務遂行性

公務遂行性とは、公務員が業務を行っている最中に発生した災害が、公務と直接関連するかどうかを判断するための基準です。

公務遂行性があったというためには、「事故当時、任命権者の支配管理下にあった」ことが重要です。

例えば、勤務時間中に職場で発生した事故や、職務遂行中の出張や移動中に発生した事故などの場合は、基本的に公務遂行性が認められます。

一方で、勤務時間外の私的な行動中に発生した事故は、公務遂行性が認められません。

例えば、昼休みに個人的な買い物や私的な食事のために外出し、その最中に負傷した場合は、公務とは無関係と判断されます。

 

公務起因性

公務起因性とは、発生した災害が公務と直接関係しているかどうかを判断するための基準です。

公務起因性があったというためには、「公務と災害の間に相当因果関係がある」ことが重要です。

相当因果関係があるとは、「あのような職務に従事していたならば、そのような災害が発生しうるであろうし、そのような災害が発生すれば、このような傷病等が生ずるであろう」と言えるかどうかで判断されます。

つまり、他の理由(持病など)よりも、仕事が原因として強く結びついていると認められる必要があり、専門家が詳細に状況を調査して判断することもあります。

基本的には、仕事中の怪我については公務起因性があると判断されやすいですが、病気の場合は、判断が難しくなります。

 

 

公務災害を認定されないケース

公務災害として認定されるには、「公務遂行性」と「公務起因性」の2つの要件を満たしている必要があります。

以下のようなケースでは、「公務遂行性」と「公務起因性」のいずれかまたは両方が欠けるとして、公務災害が認定されない場合があります。

公務災害を認定されないケース

勤務時間中であっても、業務とは関係のない私的な行動中に発生した事故は公務災害とは認められません。

例えば、勤務時間内に個人的な用事で銀行へ行く途中の事故などは、私的な行為のため、公務災害とは認定されません。

 

通勤ルートを逸脱した場合の事故

通勤途中で発生した事故でも、合理的な通勤経路を大きく逸脱していた場合には、公務災害として認定されません。

また、通勤とは関係のない目的で合理的な経路からそれた場合や、通勤途中で長時間にわたって私的な行動を行った場合も、公務災害とは認められない可能性があります。

例えば、退勤途中に友人と喫茶店で1時間程度滞在し、その後帰宅途中に事故に遭った場合には、公務災害として認定される可能性は低くなります。

しかし、合理的な経路からそれたり、私的な行動を行ったとしても、それが日常生活上必要な行為のためであって、最小限度のものと言えるのであれば、通勤災害と認められる可能性があります。

例えば、通勤途中に銀行のATMやスーパーマーケットに短時間立ち寄った場合など、合理的な範囲での行動であれば公務災害と認められることもあります。

 

本人の持病等が主な原因の疾病

職員がもともと持っていた病気や疾患が主な原因で発生した疾病については、公務起因性がないとして、公務災害と認定されないことがあります。

例えば、高血圧や糖尿病などの持病による突然の発作で倒れた場合、それが業務に直接起因するものでない限り、公務災害とは認められません。

ただし、長時間労働や業務による強いストレスなどが原因で症状が悪化した場合は、公務災害と認定される可能性があります。

例えば、過労による心筋梗塞や、業務の過度なプレッシャーによる精神疾患が発症した場合などは、公務起因性が認められることがあります。

自己判断が難しい場合には、職場の上司や弁護士などに相談することが重要です。

 

天災地変による災害

地震や台風、大雨などの自然災害によって発生した事故は、原則として公務災害に該当しません。

ただし、業務の性質上避けられない状況で発生した場合や、公務中に被災した場合には例外的に認定される可能性があります。

例えば、警察官や消防士が台風の対応業務中に負傷した場合や、行政職員が避難誘導の業務中に怪我をした場合などは、公務災害として認められることがあります。

一方で、出勤前や帰宅後に自宅で被災した場合は、原則として公務災害とはなりません。

また、業務中に自然災害が発生し、それに伴う避難行動の最中に負傷した場合は、公務遂行中の事故として認められることもあります。

 

偶発的な事故

私的なトラブルや第三者との争い、犯罪行為に巻き込まれて負傷した場合は、公務との直接的な関連がないと判断され、公務災害とは認められないことがあります。

例えば、通勤途中に偶然巻き込まれた喧嘩で負傷した場合などは、公務とは直接関係がないため、公務災害には該当しません。

ただし、警察官が職務質問を行った際に相手から暴行を受けて負傷した場合や、消防士が救助活動中に負傷した場合など、職務遂行中に発生した事故であれば、公務災害として認定される可能性が高くなります。

 

 

公務災害のメリットとデメリット

公務災害補償制度は大きなメリットがある一方で、わずかながらデメリットもあります。

基本的には、デメリットよりメリットの方が大きいため、公務災害補償制度は積極的に活用すべきです。

しかし、デメリットについても把握しておくことで、公務災害補償制度についてより深く理解する足掛かりになると思いますので、ここからは公務災害のメリットとデメリットについて、ご説明します。

 

公務災害のメリット

公務災害の主なメリットは、以下のとおりです。

公務災害のメリット

公務災害補償制度では、療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償など、幅広い補償が提供されています。

被災した公務員やその家族が経済的な不安を軽減し、安定した生活を送るための制度が整備されている点が大きなメリットと言えるでしょう。

特に、警察官や消防士など危険度の高い職務に従事する公務員には、補償額が加算される「特殊公務災害」の制度もあり、業務の危険性に応じた手厚い保障が受けられます。

また、公務災害により休職した職員の社会復帰を支援するため、さまざまな福祉事業も実施されています。

職場復帰プログラム、リハビリ支援、生活再建支援などがあり、円滑な職場復帰が可能となるようサポートが行われています。

 

公務災害のデメリット

公務災害のデメリットは、以下のとおりです。

公務災害のデメリット

公務災害として認定を受けるためには、必要書類を作成し、提出する必要があります。

書類の作成や手続きに際して、負担を感じる方も少なくありません。

また、認定までには時間がかかり、補償を受けられるまでに長期間を要するケースもあります。

その間、自己負担で治療を続ける必要があるため、経済的に不安を感じることがあるかもしれません。

また、公務災害が認定されるには、「公務遂行性」と「公務起因性」の2つの要件を満たしていることを証明する必要があります。

特に精神疾患や過労による病気の場合、業務との関連性を立証することが難しいとされています。

そのため、認定されるまでに長期間を要するケースが多い上に、補償を受けられない場合もあります。

さらに、公務災害の補償には上限が設けられているものもあるため、実際の生活費を十分にカバーできないことがあります。

 

 

公務災害で請求できる損害賠償

休業期間が長期にわたる場合や、後遺障害が残ってしまった場合などでは、公務災害補償制度だけでは補償が不十分なこともあります。

そのため、公務災害が起きてしまった場合に、公務災害補償制度以外に請求することができる損害賠償請求についても、ご紹介していきます。

公務災害の時に請求できる可能性がある損害賠償請求は、以下のとおりです。

  • 国や地方自治体等に対する損害賠償請求
  • 第三者に対する損害賠償請求
  • 国や地方自治体等に対する損害賠償請求

国や地方公共団体には、公務員の生命、身体、健康を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)があります。

国等がこの義務に違反したことが原因で、公務災害が発生した場合には、被災職員は国や地方自治体に対して、損害を賠償するよう請求することができます。

損害賠償請求の根拠となる法律と条文は、主に以下の2つです。

国家賠償法第1条1項
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
民法第415条前段
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。

引用:国家賠償法|e−GOV法令検索

引用:民法|e−GOV法令検

 

第三者に対する損害賠償請求

公務中に第三者の不法行為により被害を受けた場合、民法第709条に基づき、加害者に対して損害賠償を請求することができます。

例えば、公務中の移動時に交通事故に遭った場合では、加害者(相手の運転者)に対して治療費や逸失利益の賠償などを求めることができます。

民法第709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 

公務災害についてのQ&A

公務災害について、よくあるご質問にお答えします。

 

公務災害でいくらもらえる?

公務災害の補償額は、被災した公務員の平均給与額や受ける補償の種類などによって異なります。

例えば、療養補償では必要な医療費が全額支給されるため、治療に関する自己負担はありません。

療養のため勤務することができず、休業する際に支給される休業補償では、給与の80%が支給され、傷病が長引いた場合には傷病補償年金が適用されることもあります。

また、後遺障害が残った場合には障害補償年金や一時金が支給され、死亡した場合には遺族補償年金または一時金が支給されます。

具体的な支給額は職種や給与額によっても変動するため、詳細は認定機関に問い合わせるか、弁護士に相談することをおすすめします。

 

公務災害として認定されるとどうなる?

公務災害として認定されると、公務災害補償制度からの補償を受けることができます。

また、職場復帰支援制度の利用も可能となり、復職が困難な場合には、職務の軽減措置や配置転換などの対応が検討されることもあります。

さらに、公務災害が認定されることで、公務員本人や遺族が追加の損害賠償請求を検討する際の判断材料となることもあります。

 

 

まとめ

公務災害補償制度は、公務員が職務中または通勤中に負傷したり、病気になった際に適用される補償制度です。

これは一般の労働者が適用される労災保険とは異なり、公務員専用の制度として、地方公務員災害補償法や国家公務員災害補償法に基づいて運用されています。

本記事では、公務災害と労災の違い、認定基準、補償の内容、公務員にとってのメリット・デメリットについて詳しく解説しました。

公務災害の補償には、療養費の全額補助、休業中の給与補填、後遺障害が残った場合の障害補償、死亡時の遺族補償などが含まれます。

しかし、公務災害が認定されるには「公務遂行性」や「公務起因性」が求められ、業務と無関係な事故や病気は補償の対象外となるため注意が必要です。

公務災害補償は手厚いものの、認定のハードルが高く、手続きが煩雑であることが課題となる場合があります。

安心して傷病の治療に専念するとともに、いち早く社会復帰できるよう公務災害補償制度を適切に活用することが大切です。

また、公務災害補償制度だけでは補償が不十分な場合には、国や地方自治体、第三者などに対する損害賠償請求を検討することも必要となります。

公務災害が発生したあとの対応について不安がある場合には、1人で抱え込まずに、上司や認定機関、専門家(弁護士など)に相談して、どのような対応をするか検討することをおすすめします。

弁護士法人デイライト法律事務所では、労災問題を多く取り扱う人身障害部の弁護士が相談から受任後の事件処理を行っています。

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