北九州市の小倉北警察署に勤務する40代の巡査部長が、結婚していることを隠して交際相手の女性と披露宴を開こうとしたとして、減給の懲戒処分を受けたというニュースがありました。
そこで、今回は、このニュースから生じうる法律問題について、弁護士が解説したいと思います。
婚約破棄と慰謝料
ここでは、仮に、この巡査部長をA、交際相手の女性をB、Aの奥さんをA妻と称して、考えます。
まず、今回の件で、Bはかなりの精神的に傷ついたことと思われます。したがって、BはAに対して、慰謝料を支払ってもらいたいと思うかもしれません。
この場合は、婚約破棄と慰謝料の問題になります。
裁判例上は、婚約破棄に基づく慰謝料は認められていますが、婚約破棄の認定が問題となることは少なくありません。
もっとも、本件では、披露宴を開こうとして結婚式場の予約までしていたとのことですから、婚約は認定されそうです。
しかし、本件では、Aが既婚者であったことから、難しい問題が潜んでいます。
すなわち、一夫一婦制を採用する日本において法的にAがBと結婚することは、そもそも不可能でした。
婚約とは、将来婚姻を締結しようとする当事者間の契約ですから、婚姻が不可能である以上、法律上は原始的不能とも思えます。そうである以上、本件においては、婚約は無効という考え方もできそうです。
A妻は交際相手Bさんに慰謝料できる?
次に、AはA妻から、不貞行為による離婚や慰謝料を請求される可能性があります。不貞行為は法律上も離婚原因であり、典型的な離婚慰謝料の発生原因事由とされています。
では、A妻は、Bに対し、慰謝料の請求ができるのでしょうか。Bは、Aから既婚者であることを知らされておらず、いわば騙されていた被害者的立場なわけですが、A妻との関係では加害者的な立場にもなりうるため、難しい問題です。
法律上の原則論としては、不貞行為は共同不法行為なので、Bも責任を負う可能性があります。しかし、BはAが既婚者であることを知らなかったわけですから、少なくとも故意はありません。
問題は過失があるかですが、それについては、交際中にAが既婚者であることに全く気がつけなかったのか(一般人がBの立場だった場合に、Aが既婚者であることに気がつかないのはやむを得ないといえるような事情があったか)がポイントになりそうです。
その結果、故意も過失もないということになれば、Bは慰謝料の支払義務をA妻に対して負うことはありません。
また、仮に過失があるとして、慰謝料が認められてしまったとしても、本件ではAはBに既婚であることを隠していたという事情があります。この場合、Aの方が責任は圧倒的に大きいとして、Bは、A妻に支払うべき慰謝料額のほとんどの部分を、Aに対して求償することができるかもしれません。
上記のように、男女トラブルにはいろいろな法律問題が潜んでいますが、早めの対応が重要です。
男女トラブルの問題でお悩みの方は、この問題に詳しい当事務所の弁護士にご相談ください。
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