専業主婦は、離婚時に財産分与を受けられる?【弁護士解説】
専業主婦(主夫)でも基本的には財産の2分の1を離婚時の財産分与として受け取ることができます。
財産分与とは
財産分与とは、離婚する際に、夫婦が結婚生活の中で築き上げた財産を公平に分配することをいいます。
「公平に分配」するために、基本的には2分の1となることが多いです。
例えば、夫名義の財産が2000万円、妻名義の財産が200万円あったとします。
この場合、以下の計算式より、妻は夫に対して、900万円の財産分与を求めることが可能です。
具体例 夫名義の財産が2000万円、妻名義の財産が200万円あった場合
夫婦共有財産:2000万円 + 200万円 = 2200万円
それぞれの取得分:2000万円 × 1/2 = 1100万円
妻の夫に対する請求:1100万円 − 200万円 = 900万円
なお、財産分与は、基本的には、離婚する前に取り決めることになります。
離婚後でも請求することは可能ですが、期間制限(原則として2年間)がありますので注意が必要です。
専業主婦(主夫)でよくある財産分与の問題点
財産分与では、
- 対象財産を正確に把握できない
- 評価が難しい
- 相手方が応じない
などの問題がよく起こります。
専業主婦(主夫)の方の場合、上記の一般的な問題点がより顕著になる場合が多いです。
また、専業主婦(主夫)特有の問題点としては、以下の点があげられます。
相手の財産を把握するのが難しい傾向
例えば、相手方が給与を管理しており、給与口座が一つなのか複数あるのかもわからない、会社内で財形や企業年金などをしているのかなども、全く把握できていないということもあります。
分与の割合でもめる可能性
また、相手方にモラハラ気質がある場合などには、自分の稼いだお金だから分けるつもりはないなどと言われ交渉に応じてもらえないという問題も生じやすいです。
そして、一般的な問題点に加えて、分与方法の問題や扶養的財産分与の問題が生じることもあります。
分与方法の問題は、自宅を分与して欲しいと思っていても、住宅ローンが残っていて、ローンの借換えができないため自宅を取得することができないといった問題です。このような場合は相手方との交渉が必要になってきます。
生活に困窮する可能性
扶養的財産分与の問題とは、突然離婚を切り出されると、これまで専業主婦として生活をしていたため、生活が困窮してしまうというケースで生じます。これも、相手方との交渉が必要です。
専業主婦の場合、上記のような特有の問題があるため、通常の財産分与以上にポイントを押さえて相手方と交渉していく必要があります。
専業主婦が財産分与を受けるための3つのポイント!
専業主婦の方の場合、適切な財産分与を受けるためには、3つのポイントがあります。
①対象財産の調査のポイント、②財産評価のポイント、③相手方との交渉のポイント、をご紹介いたします。
①対象財産の調査のポイント
財産分与の対象として、代表的なものとしては、預貯金、不動産、保険金、自動車、株式、退職金があげられます。
このうち、不動産と自動車については、よほどの資産家でない限り、存在していることが明らかであって調査は不要なことがほとんどです。
問題は預貯金、保険金、株式、退職金です。
預貯金、保険金、株式
最も重要なことは、口座の履歴情報です。
口座の履歴を見れば、保険料の引き落としや株式の配当が記載されていることが多いので、預貯金だけでなく、保険金や株式の存在も調査が可能です。
口座履歴については、通帳があれば、その取引履歴をコピーしておけばよいでしょう。
通帳を確認することが難しければ、以下の弁護士照会や裁判所の調査嘱託の方法で金融機関から取引履歴を開示してもらうことが可能です。
弁護士に依頼して、弁護士法23条による照会を行うと、多くの金融機関は取引履歴を開示してくれます。【裁判所の調査嘱託】
裁判所に対して、調査嘱託を申し立てると、基本的に金融機関は取引履歴を開示してくれます。
※ただし、上記の方法は、いずれも金融機関名が判明していることが必要です。
退職金
まだ、退職まで期間がある事案でも、家裁実務において、退職金は財産分与の対象として認められる傾向です。
ただし、対象となるのは、財産分与の基準日における分ということになります。
退職金については、相手方から退職金規定や退職金の見込額の証明書を開示してもらうことで調査します。
もし、相手方が開示しない場合、下記の弁護士照会や調査嘱託によって調査することを検討します。
②財産評価のポイント
預貯金等の現金等価物は、評価は問題となりません。
財産評価において、最も問題となるのは、通常、不動産と株式です。
不動産については、正確には不動産鑑定士に依頼するという方法があります。
しかし、費用が高額になるため、高額物件以外の場合は、お勧めいたしません。
お勧めは、不動産会社に査定書を作ってもらうことです。
最も、不動産会社によって、査定の精度に差があると感じています。
財産分与で損を知ないためには、信用できる不動産会社に査定してもらうことが重要です。
株式は、上場会社であれば日経新聞で時価を調査できます。
問題は非上場会社です。この株式が問題となるのは、相手方が会社経営者の場合が多いと思います。
会社経営者(社長)に特有の離婚問題については、こちらに詳しい情報を掲載しているので、ぜひ、ごらんください。
③相手方との交渉のポイント
相手方が財産開示に応じない、相手方と接触することに抵抗があるような場合、弁護士に交渉を依頼して協議離婚を進めてもらうという選択肢があります。
また、家裁に離婚調停を申立てるという方法も考えられます。
もっとも、家裁の調停員会は、公平な第三者であり、あなたの味方というわけではありません。
また、通常、対応する2名の調停委員は、一般の方であり、裁判官ではないため、財産分与について法律知識が乏しい場合もあります。
そのため、調停員会の言葉を鵜呑みにできないので、注意が必要です。
財産分与について、調査方法などのより詳しい情報は、こちらをごらんください。
まとめ
専業主婦の財産分与についてまとめます。
- 専業主婦も基本的には2分の1の財産分与を受けられます。
- 専業主婦の財産分与は、①対象財産を正確に把握したうえで、②適切に評価し、③相手方と交渉する必要があります。
- 3つのポイント以外にも分与方法の交渉やその他の離婚に関する問題もあると思います。
- なにから始めればいいのかわからない、相手とどのように交渉したらいいのかわからないなど、お困りの際は、まずは、離婚に精通した弁護士に相談されるとよいでしょう。
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