年収1000万円の養育費の相場とは?【早見表・計算機付】
支払い義務者の年収が1000万円の場合、養育費の相場は月額10万円〜30万円程度と考えられます。
養育費の金額は父母の年収や子どもの人数・年齢などをもとに算定されるため、支払う側の年収が1000万円の場合は、養育費も高額になってきます。
養育費が高額になると、支払う側にとっては負担を感じたり、支払い続けることに不安を感じることもあるでしょう。
また、子どもの生活に及ぼす影響も大きいため、もらう側にとってはどの程度もらうことができるのか、滞りなく支払ってもらえるのかが大きな関心事となるでしょう。
ここでは、支払い義務者の年収が1000万円の場合の養育費の相場を中心に、養育費の算定、養育費をもらう側・支払う側それぞれにとっての重要なポイントについて解説していきます。
養育費とは
養育費とは、子どもが社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用です。
養育費の内容としては、子どもの衣食住のための費用・健康保持のための医療費・教育費が含まれます。
養育費を算出する際の考慮要素とは
養育費を算出する際の考慮要素は次のとおりです。
- 父母双方の収入
- 子どもの人数と年齢
- その他の事情
義務者(支払う側)の年収が1000万円の場合であっても、権利者(もらう側)の収入、子どもの人数・年齢、その他の事情が異なれば、養育費の金額も異なります。
父母双方の収入
子どもの親は子どもを育てるためにかかるお金を分担する義務があります。
子どもを育てている親(母親である場合が多い。)は、生活の中で子どもにかかるお金を負担していますが、子どもと離れて暮らす親(父親である場合が多い。)も、子どもにかかるお金を養育費として他方の親に支払う必要があります。
そして、養育費の金額は、子どもが収入が高い方の親と同程度の生活水準が保てるくらいの額であるべきと考えられています。
このようなことから、養育費を算定する際には、父母双方の収入が重要な考慮要素となります。
子どもの人数と年齢
子どもの人数が増えれば、それだけ養育費の金額は増えます。
また、子どもの年齢が高くなれば、それだけ子どもの生活にかかるお金も増えます。
そのため、子どもの人数と年齢も考慮要素となります。
その他の事情
特別な出費
父母の年収と子どもの人数・年齢を考慮すれば、統計資料などから標準的な生活費を算出することができます。
しかし、標準的な生活費にはカウントされない特別な出費がある場合、その費用の分担についても考慮する必要があります。
例えば、私立学校の学費(公立学校の費用との差額)、私立の保育所・幼稚園の費用、塾や習い事の費用、留学費用、通常以上に高額な医療費などです。
これらは、分担の対象とするか、どういう割合で分担するかなど、その費用がかかっている経緯や父母双方の資産なども含めて決められることになります。
家庭裁判所で決める場合も、ケースバイケースで判断されることになります。
その他の特殊事情
権利者(もらう側)が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組した場合、第一次的には養親(再婚相手)が子どもの扶養義務を負うことになるため、養育費が減免される可能性があります。
また、義務者(支払う側)に認知した子どもがいる場合や、義務者が再婚して再婚相手の連れ子と養子縁組した場合、再婚相手との間に実子が生まれた場合は、義務者がその子ども達にも扶養義務を負っていることが考慮されることになります。
年収1000万円の養育費の相場〜早見表〜
義務者(支払う側)の年収が1000万円の場合の養育費の相場は、権利者(もらう側)の年収により異なりますが、ここでは権利者が年収0円の場合(専業主婦などの場合)と、100万円程度の場合(パートタイマーなどの場合)についてご紹介いたします。
※実際の事案では、状況次第では専業主婦でも潜在的稼働能力を考慮して年収0円としない場合もあるのでご注意ください。
子どもの人数・年齢 | 養育費の相場 | ||
---|---|---|---|
給与所得者内容 | 自営業者 | ||
1人 | 0~14歳 | 12~14万円 | 16~18万円 |
15歳以上 | 14~16万円 | 18~20万円 | |
2人 | いずれも0~14歳 | 18~20万円 | 22~24万円 |
第1子15歳以上、第2子0~14歳 | 18~20万円 | 24~26万円 | |
いずれも15歳以上 | 20~22万円 | 26~28万円 | |
3人 | いずれも0~14歳 | 20~22万円 | 26~28万円 |
第1子15歳以上、第2子・第3子0~14歳 | 22~24万円 | 28~30万円 | |
第1子・第2子15歳以上、第3子0~14歳 | 22~24万円 | 28~30万円 | |
いずれも15歳以上 | 24~26万円 | 30~32万円 |
いわゆるサラリーマンのことです。
役員報酬をもらっている会社経営者も含まれます。
個人事業主のことです。
法人(株式会社など)の会社経営者は、自営業者ではなく給与所得者となります。
子どもの人数・年齢 | 養育費の相場 | ||
---|---|---|---|
給与所得者内容 | 自営業者 | ||
1人 | 0~14歳 | 10~12万円 | 14~16万円 |
15歳以上 | 12~13万円 | 16~18万円 | |
2人 | いずれも0~14歳 | 16~18万円 | 20~22万円 |
第1子15歳以上、第2子0~14歳 | 16~18万円 | 22~24万円 | |
いずれも15歳以上 | 18~20万円 | 24~26万円 | |
3人 | いずれも0~14歳 | 18~20万円 | 24~26万円 |
第1子15歳以上、第2子・第3子0~14歳 | 20~22万円 | 26~28万円 | |
第1子・第2子15歳以上、第3子0~14歳 | 20~22万円 | 26~28万円 | |
いずれも15歳以上 | 20~22万円 | 28~30万円 |
いわゆるサラリーマンのことです。
役員報酬をもらっている会社経営者も含まれます。
個人事業主のことです。
法人(株式会社など)の会社経営者は、自営業者ではなく給与所得者となります。
養育費の算定表について
家庭裁判所で養育費の金額等を決めるときは、「養育費算定表」というものが参照され、これに基づいて算出された金額が重視される傾向にあります。
「養育費算定表」とは、簡易に素早く養育費の目安となる金額を確認できるようにした早見表です。
父母の年収、子どもの人数・年齢を当てはめると、養育費の適正額を確認することができます。
そのため、当事者同士で話し合って養育費の金額等を決めるときも、「養育費算定表」を用いて算出した金額を目安にすることが多いです。
算定表は標準的な生活費のみを考慮したものであり、特別な出費や特殊事情については考慮されていないことには注意が必要です。
特別な出費や特殊事情については、別途考慮する必要があります。
養育費の適正額を自分で簡単に計算!
当事務所では、養育費の目安を素早く確認したいという方のために、オンラインで、かつ、無料で自動計算できるサービスをご提供しています。
養育費算定シミュレーターはこちらからご覧ください。
なお、具体的な適正額を正確に確認するためには、年収を正確に把握したり、特別な出費や特殊事情を適切に考慮する必要があります。
シミュレーション結果は参考程度にとどめ、具体的な金額は専門の弁護士に相談し判断してもらうようにしましょう。
養育費の重要なポイント
もらう側(権利者側)のポイント
養育費については必ず文書で取り決めをする
養育費について取り決めができたら、必ず取り決め内容を適切な文書に残しておくようにしましょう。
口約束や不適切な文書による取り決めでは証拠とならず、後で取り決めの存在自体も否定されてしまう可能性があるので避けましょう。
なお、当事務所では離婚協議書などの書式をホームページ上に公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。
書式はこちらからご覧ください。
公正証書の作成も検討する
養育費の取り決め内容は、公正証書にしておくことを強くおすすめします。
公正証書とは、公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書のことです。
公証人というのは、法務大臣が任命する公務員であり、全国各地の公証役場において、ある事実の存在等について、証明・認証することを業務としている人達です。
公正証書は、公文書ですから高い証明力があります。
公正証書にする必要性
養育費は、基本的には長期間にわたり継続的に支払われるものであるため、途中で支払いが滞るリスクは常にあるといえます。
養育費の取り決めについて公正証書にしておくと、支払いが滞った場合に、裁判所の判決などを待たないで直ちに強制執行手続きに入ることができます。
強制執行手続きとは、義務者(支払う側)の財産(通常は給料など)を差し押さえて強制的に養育費を回収する手続きのことです。
公正証書を作成していなくても、適切な合意文書があれば最終的には強制執行することができますが、いったん裁判所の判決等を得る必要があるなど、回収までに手間と時間がかかってしまいます。
養育費の支払いが滞ると子どもの生活に影響が及ぶため、早期に対処する必要もありますので、公正証書にしておく必要性は高いといえます。
また、公正証書を作成しておくことで、義務者に対し、「支払わなければ直ちに強制執行されてしまう」というプレッシャーを与えて未払いを防止する効果もあります。
作成の際の注意点
公正証書を作成する際は、金額等を具体的に特定した上で、「強制執行受諾文言(きょうせいしっこうにんだくもんごん)」(義務者が取り決めどおりの支払いをしない場合は強制執行を受けてもやむを得ないと言ったという内容の文言)を入れる必要があります。
これらがない場合は、公正証書を作成したとしても、直ちに強制執行をすることができません。
このように、公正証書の作成には専門知識が必要であり、不備があった場合の影響も大きいため、専門の弁護士に相談して慎重に行うことをおすすめします。
公正証書について、詳しくはこちらをご覧ください。
特別な出費の分担も求める
先に解説したように、養育費の金額は養育費算定表を用いて算出したものを目安にするのが一般的ですが、算定表では特別な出費(私立学校の学費等)は考慮されていません。
特別な出費がある場合は、算定表を用いて算出した金額に加え、特別な出費の分担も求める必要があります。
実際にかかっている費用を資料(学校からの通知、振込明細など)とともに明確にし、加算されるべき金額を具体的にして負担を求めるようにしましょう。
もっとも、全額を相手に負担をさせることや、全部の費目について分担をさせることが難しい場合もあります。
裁判で決めることになった場合は、特別な出費について義務者(支払う側)に負担させることができるか、いくら加算されるかについて、ケースバイケースで判断されることになります。
具体的なケースにおいて、適切な分担方法・加算金額を判断するのは、専門家でないと難しい場合が多いです。
年収1000万円以上の世帯では特別な出費が一定程度ある場合が多く、これを適切に考慮することが重要なポイントとなりますので、専門の弁護士に相談して判断してもらうことをおすすめします。
特別な出費が将来生じる可能性がある場合
まだ子どもが幼く、進学などが具体的に決まっていない場合は、特別な出費について具体的な取り決めをすることはできません。
その場合は、「進学・病気・事故等特別の出費が必要になった場合は、その負担について別途取り決める」といった取り決めをしておくとよいでしょう。
養育費を取り決めた後に当時予測できなかった事情の変更が生じた場合は、上記のような取り決めがなくても養育費の変更(増減)を求めるこができますが、敢えてそのことを確認しておくことにより、将来トラブルになることを防止できる場合もあります。
支払う側(義務者側)のポイント
無理な約束をせずに適正額を合意する
養育費は、基本的には1回限りの支払いで終わるものではなく、将来にわたり継続的に支払っていくことになります。
現実的でない約束をしてしまうと、ご自身の生活が圧迫されたり、支払い続けることができなくなり強制執行されてしまう可能性もあります。
また、支払いが滞ってしまうと、子どもの生活にも影響が及びます。
そのため、無理な約束をせずに適正額で合意することが大切です。
適正額で合意するために気を付けること
無理な約束をしてしまう場面としては、次のようなものが考えられます。
- 権利者の希望どおりの金額(適正額よりも高額の場合が多い)で合意してしまう
- 特別な出費について、個別に検討することなく全ての負担を引き受けてしまう
- 離婚条件として高額な養育費の支払いを提示され、支払いを承諾してしまう
このような事態を防ぐためには、次のことに気を付けるとよいでしょう。
養育費を取り決める場面では、権利者(もらう側)は相場よりも高い金額を求めがちです。
養育費の適正額は、相手の提示額を鵜呑みにせず、必ず自分で確認するようにしましょう。
算定表を目安にする場合も、算定表を参照する前提となる年収額を正確に把握しなければ適正額を算定することはできません。
必ず客観的な収入資料(源泉徴収票、確定申告書など)で確認するようにしましょう。
また、副業している場合、時期による収入の変動が大きい場合、専業主婦だが近々パートを始めることが決まっている場合などは、収入資料の金額だけでは実質的な収入を把握することができません。
このような場合、養育費算定の前提となる収入をいくらと見るべきか、専門家でないと判断が難しいため、専門の弁護士に相談し適正額を判断してもらうことをおすすめします。
私立学校の学費などの特別な出費については算定表上は考慮されておらず、当然に分担されるものとは限りません。
自分が納得できる範囲、無理のない範囲で分担するようにしましょう。
裁判で判断される場合も、各費用について、費用がかかっている経緯や必要性などが個別に検討され、分担対象となるか否かや、分担割合についてが決められることになります。
父母の収入に見合わないくらい高額な費用がかかっている場合や、義務者(支払う側)が承諾していない進学・通塾・習い事・留学などについては、分担が命じられる可能性は低いといえます。
相手と折り合いがつかない場合は、裁判で判断される場合の見通しを立てつつ交渉していく必要がありますが、これも専門家でなければ難しいため、専門の弁護士に相談されることをおすすめします。
自分に離婚原因(不倫など)がある場合や、特に離婚原因はないが自分が離婚を望む場合、相手から「養育費を〇円支払うとの約束をしてくれたら離婚に応じる」などと言われるケースがあります。
その場合、相手が求めている養育費の金額が適正額を上回るものであったとしても、離婚を成立させたいがために支払いを承諾してしまうことがあります。
しかし、養育費は子どもの生活のためのお金ですので、両親の事情で子どもに影響が及ぶようなことは避けるべきです。
養育費はいくらであっても子どもの生活に必要な大切なお金ですが、特に高額になるほどに養育費が子どもの生活に及ぼす影響が大きくなるため、支払いが滞ったときの影響も大きくなります。
無理な約束をする前に、離婚問題全体の解決について専門の弁護士に相談するようにしましょう。
取り決めどおりに支払えなくなった場合の不利益
無理な約束をしてしまった場合でも、脅迫されたなどの事情がない限りは有効な約束として法的な拘束力が生じることになります。
そのため、取り決めどおりの支払いをしなければ、最終的には強制執行をされ、強制的に取り決めたとおりの金額を回収されてしまうことになります。
会社員の場合は強制執行されると通常は給料が差し押さえられることになるため、会社に支払いが滞っていることが知れてしまうという不利益もあります。
無理な約束をしてしまった後に、やはり支払いが難しいことを理由に養育費を減額してもらうことは、相手が同意してくれない限り基本的には困難です。
したがって、最初から慎重に検討し、無理のない金額で合意することが大切です。
収入の減少・再婚が決まっている場合はあらかじめ考慮する
収入の減少や扶養家族の増加などにより養育費が負担になることを心配されている方も多いと思われます。
養育費は、取り決め後に当時予測できなかった事情の変更が生じた場合は、変更(増減)を求めることができます。
ただ、近い将来に収入が減少したり、再婚したりすることが具体的に決まっている場合(年俸が示されている、再婚相手が実際にいる場合など)は、あらかじめその事情も考慮して取り決めをするとよいでしょう。
収入の減少などが抽象的な可能性にとどまる場合は、あらかじめ考慮することは難しいですが、「年収1000万円を前提として取り決めたこと」「収入が減少した場合は再度取り決めること」等を確認・約束しておくとよいでしょう。
いずれも専門知識がないと対応が難しいものですので、具体的には専門の弁護士に相談されるとよいでしょう。
養育費の問題に強い弁護士であれば、後々も困らないように配慮した解決方法を提案してくれます。
まとめ
以上、義務者(支払う側)の年収が1000万円の場合の養育費の相場を中心に、養育費の算定、養育費をもらう側・支払う側それぞれにとっての重要なポイントについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
義務者(支払う側)の年収が1000万円の場合は、養育費の金額が高額になる傾向にあります。
養育費は基本的に長期的・継続的に払われるものですので、養育費をもらう側にとっても、支払う側にとっても、特別な出費も考慮のうえ適正額を合意すること、確実に支払える(支払ってもらえる)ようにしておくこと、将来の事情変更などには柔軟に対応できるようにしておくことなどが重要です。
いずれも専門家でなければ適切に対応することが難しいため、養育費の問題に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
当事務所では、離婚問題を専門に扱うチームがあり、養育費について強力にサポートしています。
LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており全国対応が可能です。
養育費については、当事務所の離婚事件チームまで、お気軽にご相談ください。
この記事が、養育費にお悩みの方にとってお役に立てれば幸いです。
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