離婚後に養育費の追加請求をされた場合、支払うべきですか?
将来の養育費を予測して計算したうえで離婚時に一括払いがなされ、その金額が十分であれば、追加請求をすることは信義則に反するといえます。
したがって、そのような状況で養育費を変更するのは不相当といえます。
もっとも、養育費について一度合意した場合でも、時間とともに生活状況が変化すれば、事情変更を理由に合意内容を変更することができます。
追加請求の事情は実に様々であり、場合によっては事後的な追加請求が認められる可能性があることにも留意しておかなければなりません。
相談事例
私は、約10年前に妻と離婚しました。その際、子どもの養育費をあらかじめ支払ってしまおうと考え、1000万円を支払うとともに月々の養育費の支払いはしないものと合意しておりました。
ところが、相手は私が支払った1000万円を子どもが中学卒業までに使い切っただけでなく、子どもが医学部進学を希望しているとして、毎月20万円の支払いを求めてきました。現在子どもは高校3年生です。
私は改めて養育費を支払わなければならないのでしょうか?
養育費について一度合意した場合でも、時間とともに生活状況が変化すれば、事情変更を理由に合意内容を変更することができます。
本件では、離婚時に養育費を一括払いしたにもかかわらず、事情変更を理由に養育費の追加請求ができるのかが問題となります。
この問題については、東京高裁平成10年4月6日決定(原審は東京家裁決定平成9年10月3日)が参考になります。
裁判所の判断
妻側は、子どもが私立の小中学校に通ったことで一括払いされた 1000万円を使い果たしてしまい、財産分与・慰謝料として支払われた 3000万円については実父の事業につぎ込んで費消してしまいました。また、子どもが進学した高校も私立でした。
このような事情から、元妻は、元夫に対し追加の養育費を請求しました。
第一審の東京家裁は、元妻の養育費の追加請求を認めていました。
これに対し東京高裁は、
「(元夫は、子どもの)教育の方法について具体的な希望を述べた形跡はないのであるから、事件本人の養育方法については、(元妻の)資力の範囲内で行うべきで、これと無関係に私立学校に通学させるべきものとは認められない。」
と判断し、第一審の判断を覆し、養育費の追加請求を認めませんでした。
養育費の追加請求について
将来の養育費を予測して計算したうえで離婚時に一括払いがなされ、その金額が十分であれば、事後的にさらなる請求をすることは信義則に反するといえます。
したがって、そのような状況で養育費を変更するのは不相当といえます。
先の例においてもそういった評価がなされたために、元妻側の請求を退けたものと考えられます。
もっとも、養育費が不足する事態となる事情はご家庭によって実に様々と思います。
場合によっては事後的な追加請求が認められる可能性があることにも留意しておかなければなりません。
離婚後の養育費でお悩みの方は、養育費に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
まずはお気軽に当事務所の弁護士までご相談ください。
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