年金受給者の婚姻費用はどうなる?【弁護士解説】
婚姻費用・養育費の算定には通常、標準算定方式に基づく算定表が用いられますが、夫婦の一方または双方が年金を受給していることがあります。
年金は給与とは異なりますので、別物として考える必要があります。
本記事では、離婚問題に詳しい弁護士が、年金受給者における婚姻費用・養育費の計算方法ついて解説いたします。
年金収入がある場合の収入認定
算定表へのあてはめ方
年金の総額を算定表にそのままあてはめるのは誤りです。年金は給与とは異なりますので、別物として考える必要があります。
すなわち、年金受給者の場合は、給与所得者として就労するために必要な出費(被服費、交通費、 交際費、など)である職業費が不要です。
そのため、基礎収入の割合を修正する必要があります。
算定表の前提となる標準算定方式では、この職業費を控除(公租公課、特別経費も控除)した金額を基礎収入として考えて、計算を行います。
それが年金生活者の場合には、不要です。
では、具体的にどういう計算を行うことになるでしょうか。
まず、年金 150万円が仮に給与だとした場合、基礎収入割合は 0.4になりますので、基礎収入は 60万円です。
しかし、150万円の給与の方の職業費である 20%は年金の場合には不要ということになります。
そこで、基礎収入割合を 0.4+0.2=0.6 にすることになります。
すなわち、事例の年金生活者の基礎収入は 150万円 × 0.6 = 90万円ということになります。
基礎収入が 90万円を給与に換算すると、以下の計算になります。
すなわち、年金 150万円は給与 225万円に相当するという概算になるわけです。
このように、年金の場合、単純に総額を算定表にあてはめれば良いというわけではありません。
指数を操作し、給与への換算が必要になるのです。
大まかな計算は以下になります。
障害年金の場合はどうなる?
詳しくは年金機構のホームページを参照していただきたいのですが、障害年金の場合、通常の年金額の 25%増しになります。
基礎収入算出上は、職業費がかからないとして、先ほどの質問の解説で述べたのと同様の扱いをすることになります。
他方で、
- 税務上、障害者所得控除があるため、基礎収入算出で考慮している公租公課の割合を減らすこと
- 障害者であることから、健常者以上に基礎収入算出で考慮している当別経費を上乗せすること
が考えられそれによる修正が主張されることもあります。
ただ、この点の裁判所の扱いが定まっているわけではありません。
以上の解説から分かるように、年金生活者の婚姻費用や養育費については、特別の考慮が必要になります。
この問題に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
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