不貞行為をした私は親権を諦めるしかない?
事案内容
Aさんは、出来心で夫以外の男性と肉体関係をもってしまい、後日、その事実が夫に知られてしまいました。
夫は、不貞行為をしたAさんに激怒し、「すぐに離婚をしろ!」、「不貞行為をするような母親には子どもは任せられない。子ども達の親権は俺がとる!」と言っています。
これまで、子ども達の世話はほとんどAさんが行ってきましたが、Aさんは不貞行為をした負い目から自分は親権者として相応しくないのではないかと考えています。
このような場合、Aさんは親権を諦めるしかないのでしょうか?
不貞行為をしても親権を諦める必要はありません。
親権者の判断において離婚の有責性
夫婦の一方が不貞行為をしていた場合、これを理由に親権者としての適格性がないとの主張がされることが少なくありません。
しかしながら、親権者の判断において離婚の有責性はほとんど考慮されません。
なぜなら、親権者の判断にあたっては、離婚において夫婦のどちらに責任があるかということよりも、夫婦のどちらを親権者とすることが子どもの利益に適うかということが重要になるからです。
それでは、具体的に、裁判所はどのような基準で親権者の判断をするのでしょうか。
裁判所の判断基準
裁判所が親権者を判断する場合、子どもの利益と福祉を基準にして様々な事情を比較考慮して総合的に判断します。
考慮要素となるのは、父母の監護能力や居住環境、経済的家庭環境、教育環境、子どもに対する愛情の程度、これまでの監護状況等が挙げられます。
また、子ども側の考慮要素としては、子どもの年齢・性別、子どもの意思・意向、父母及び親族との情緒的結びつき等が挙げられます。
したがって、不貞行為をした有責性のある配偶者であっても、その一事をもって親権者として不適格と判断されることはないのです。
しかしながら、不貞相手と交流する際に子どもも一緒に連れまわしたり、不貞相手に貢いで浪費が激しかったり、不貞行為発覚後に子どもを置いて家を出てしまったりした場合等は、不貞行為をしたからというよりも子どもの監護養育をないがしろにしたからとの理由で、親権者として相応しくないとの判断がされることもあります。
以上のように、不貞行為をしたとの一事をもって親権を諦める必要はありませんが、親権者として相応しいか否かは総合的な判断が必要になります。
そのため、不貞行為をしてしまった場合でもすぐに親権を諦めず、まずは専門家である弁護士にご相談されることをお勧め致します。
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