面会交流の強制執行(間接強制)はできますか?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

調停条項等で面会交流の実施内容が具体的に特定されている場合は間接強制が可能です。

以下、具体的な相談事例をもとに解説いたします。

面会交流の強制執行について

面会交流で、調停が成立しましたが、元妻は、子どもが嫌がると言い張って、実現していません。

裁判所の手続きに強制執行という制度があると聞きました。

この場合に、面会交流の強制執行が可能でしょうか?

 

面会交流とは

面会交流とは、離婚の際に、親権者とならず、子を監護養育していない親が、子どもに面会したり、一緒に時間を過ごしたりして交流する権利のことです。

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面会交流について

離婚に際しては、この面会交流について、頻度や方法等を決めることが必要です。

面会交流について、取り決めをしたのに、監護親(多くは母親側)が非監護親(多くは父親側)に会わせてくれなくなることがあります。

このような場合に、強制執行が可能か否かが問題となります。

 

 

強制執行とは

強制執行とは、債務名義に記載された私法上の請求権の実現に向けて国が強制力を発動し、債権者に満足を得させることを目的とした制度のことをいいます。

債務名義には、判決書のほか、調停調書、審判書、和解調書、強制執行認諾条項の付いた公正証書(公正証書は金銭支払いに限る。)などがあります。

例えば、一定の金銭の支払いを命ずる判決が言い渡されたのに、債務者がそれを弁済しない場合、判決書に基づいて、銀行口座や給与を差押えるような方法です。

 

 

間接強制とは

面会交流は、その性質上、直接強制という方法に馴染みません。

では、面会交流の調停で決まったとおりに面会交流が実現しない場合、どのようにすれば会えるようになるのでしょうか?

ここで、法が用意している制度が、間接強制という制度です。

間接強制とは、義務者に対して、調停条項等で定められた義務を一定の時期まで履行することを命令し、命令に従わなければ、金銭の支払いを命じることです。

つまり、子どもを、執行官がむりやり、非監護親の元に連れて行って面会交流を実現するということは行われないのです。

間接強制とは、いわゆる罰金のようなもので、面会交流が実現しなかった場合に一回あたり一定額を監護親が非監護親に支払うということになります。

 

 

間接強制の問題点

間接強制には、次の2つの問題点があります。

ひとつは、面会交流の調停が成立していれば、必ず間接強制できるのか?という問題です。

もうひとつは、この事例で元妻が言うように、「子どもが嫌がる」という言い分で間接強制を免れうるのか?という問題です。

順番に見ていきましょう。

 

①面会交流の調停が成立していれば、必ず間接強制できるのか?

この点、以下の点が具体的で明確でなければ、間接強制できません。

ようするに、監護親の義務が特定されていて明確なのかどうかがポイントとなります。

  1. 日時
  2. 頻度
  3. 面会交流の長さ(時間)
  4. 子の引渡しの方法

この記事を読まれている方の中には、現在、面会交流調停中という方もおられると思います。

相手方(監護親)が面会交流に非協力的である場合には、多少窮屈ですが、間接強制を行う可能性があることに備え、上記の4点をできるだけ具体的にしておくことが大切です。

より詳しくは、面会交流の問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめいたします。

 

②「子どもが嫌がる」という言い分で間接強制を免れうるか?

次に、①で注意したような、日時、頻度、面会交流の長さ、子の引渡しの方法を定めた調停が成立した場合でも、「子どもが嫌がる」という理由で、それを拒めるのかという問題についてです。

この点、興味深い最高裁判例があります。

判例 間接強制を妨げる理由にならないとした裁判例

上記決定で、最高裁は、
「監護親に対し非監護親が子と面会交流することを許さなければならないと命じる審判がされた場合、子が非監護親との面会交流を拒絶する意思を示していることは、これをもって、上記審判時とは異なる状況が生じたといえるときは、上記審判に係る面会交流を禁止し又は面会交流について新たな条項を定めるための調停や審判を申立てる理由となり得ることなどは格別、上記審判に基づく間接強制を行うことを妨げる理由となるものではない。」
と判示しました。

【平成25年3月28日最高裁決定】

引用元:最高裁判所判例集

すなわち、上記のような「子どもが嫌がる」という理由では、調停で明確に定められた面会交流を拒むことはできないということになります。

実際、監護親が子を引渡場所まで連れて行こうとしたものの、子どもが嫌がったことなどから、子を引渡し場所まで連れて行くことができず、定められた面会交流が実現しなかった事例で、監護親に対する間接強制が認められた裁判例(大阪家決平成28年2月1日)があります。

このように、面会交流と間接強制の問題は、専門的な内容が多分に含まれています。

 

 

まとめ

以上、面会交流の強制執行について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか?

面会交流の強制執行としては、事案の性質上、直接強制は認められておらず、次善の策として間接強制を行うしかありません。

間接強制については、日時・時間などを特定することが必要となります。

面会交流の強制執行は、専門的な知識や経験が必要となります。

面会交流でお困りの方は、面会交流に詳しい専門の弁護士にご相談ください。

 

 

 

 

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