養育費を決めるために源泉徴収票等の収入資料を出すべきですか?
私は、現在妻と離婚協議をしています。
妻には代理人として弁護士がついており、離婚の際の条件等について相手方の弁護士と交渉を行っています。
先日、その弁護士から私の収入金額のわかる資料(源泉徴収票等)を開示するように求められました。
私は、源泉徴収票等を開示しなければならないのでしょうか。
収入資料を開示する法的な義務はありませんが、開示すべきでしょう。
以下、具体的な相談事例をもとに詳しく解説いたします。
養育費とは
養育費とは、子どもが社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用です。
養育費の内容としては、子の衣食住の為の費用・健康保持のための医療費・教育費が含まれます。
養育費の額は、当事者(父母)が協議によって合意できればその額でかまいせん。
もっとも、離婚の場面においては、権利者側(通常母親側)は高い額を希望し、義務者側(通常父親側)は低い額を希望します。
そのため、養育費については、目安となる相場あります。
そして、その相場は、父母の収入や子供の年齢、人数によって計算されます。
その収入を確認するためには、源泉徴収票などの収入資料が必要となります。
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収入資料が必要なケース
離婚の際には、色々な取り決めをしなければなりません。
たとえば、財産分与、慰謝料、お子さんがいる場合には親権者、面会交流などです。
その中で、特に収入資料が必要となるのは、養育費と婚姻費用の算定の際です。
養育費・婚姻費用を算定する際には、双方の収入をベースに金額が算定されるからです。
そして、双方の年収を知る上で必要なものが、収入資料です。
基本的には、確定申告書、源泉徴収票、課税証明書などですが、給与明細表の開示を求める場合もあります。
確定申告書は、申告をしている方だけが対象となります。
例えば、自営業者の方です。
また、サラリーマン(給与所得者)では、他に所得がある場合は、1社の源泉徴収票だけでは収入を正確に確認できません。
そのため、確定申告書を提出してもらう場合があります。
法的な義務
弁護士や調停委員に収入資料の開示を要求されたとしても、これに応じる法的な義務はありません。(もっとも、裁判手続の場合には、異なります。)
しかしながら、収入資料が開示されない場合には、養育費等の取り決めをすることができないため、離婚協議、離婚調停が長引く原因となります。
また、養育費や婚姻費用など、子どもの生活に関わってくる場合、たとえ収入が把握できなかったとしても審判によって、一方的に決定が出される可能性はあります。
その際には、あまり一般的ではありませんが、賃金センサスを用いて算定する方法が考えられます。(実務的には、他に手段がない場合の手段として認められています。)
もっとも、収入が確定せず養育費・婚姻費用が算定できないとしても、支払義務が免除されるわけではありません。
すなわち、未払い分も含めて支払う義務は消滅しません。
したがって、収入資料の開示を拒んだとしてもメリットはないので、可能な限り、収入資料の開示の求めには応じるべきといえます。
弁護士が採りうる手段
相手方が収入資料の開示を拒否した場合に、弁護士が採りうる手段として考えられるものは、以下のとおりです。
文書送付嘱託の申立て・文書提出命令の申立て(訴訟の場合)
相手方の職場に対して収入資料の送付を嘱託することができます(民事訴訟法第226条)。
また、文書提出命令の申立て(民事訴訟法第221条)も可能です。
この申立てが裁判所に認められると、裁判所は職場に対し、収入資料の提出を命じることになります(同223条)。
この命令を受けた給与支払い者は、原則として裁判所からの命令に応じなければならず、収入資料を裁判所に提出しなければなりません。
弁護士会照会
また、弁護士会照会という手段によって、相手方の職場に対して、収入資料の開示を求めることができます。
弁護士会照会を受けた職場は、正当な理由なくこれを拒んだ場合には、損害賠償責任を負う可能性もあります。
いずれにしても、会社に対し、弁護士もしくは裁判所から、収入資料の開示要求がくることになりますから、会社に一定程度の迷惑をかけることは避けられないでしょう。
まとめ
以上、収入の証明資料の開示義務について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。
自分自身の収入資料については、法的な開示義務はありません。
しかし、相手方が収入資料の開示を求めた場合には、基本的に応じることが良いと思います。
仮に、養育費の額等について納得することができず、金額について考えや主張があるのであれば、収入資料を開示した上で自身の考えを主張していくことが望ましいです。
たとえば、養育費については、相手方の稼働能力や、住宅ローン等の関係で、適正額が決められますので、収入資料を開示後に、このような主張をし、適正額を算定すべきでしょう。
養育費や婚姻費用の算定については、種々の事情を考慮する必要がありますので、一度離婚を専門とする弁護士に相談することをお勧めします。
この記事が離婚の問題に直面されている方にとって、お役に立てば幸いです。
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