慰謝料や養育費の振込手数料や登記費用は誰が負担すべき?
慰謝料や養育費の取決めをした際、振込手続きを利用して支払う方法が一般的です。
振込手数料が発生するため、離婚合意の際に予め振込手数料を誰が負担するか決め、それを合意書や調停調書に記しておくことが多いです。
この振込手数料は基本的には、当事者双方で同意できればどちらが負担をしても構いません。
今回は相談例をもとに慰謝料や養育費の振込手数料、登記費用についてに弁護士が詳しく解説します。
相談例
私が浮気をしたことにより妻と離婚することになりました。
離婚条件の取決めをするにあたり、私が慰謝料と養育費を支払うことになりましたが、妻は、私が浮気をしたせいで離婚することになったのだから、慰謝料や養育費を振り込む際の振込手数料も負担しろと言ってきました。
また、財産分与として、自宅は妻に渡し、自宅の登記名義も妻に変更することになりました。すると、妻は、この所有権登記移転のための費用についても、私に全額負担しろと言ってきたのです。
私の浮気が離婚の原因である以上、これら費用は私が負担するしかないのでしょうか。
慰謝料や養育費の振込手数料及び所有権移転登記費用は誰が負担すべきか教えてください。
慰謝料や養育費の振込手数料について
慰謝料や養育費の取決めをした際、その支払方法として、振込手続きを利用して支払う方法が一般的です。
そして、振込手続きを利用すれば基本的に振込手数料が発生するため、離婚合意の際に予め振込手数料を誰が負担するか決め、それを合意書や調停調書に記しておくことが多いです。
では、この振込手数料は誰が負担すべきなのでしょうか。
基本的には、当事者双方で同意できればどちらが負担をしても構いません。
つまり、浮気をした夫側が慰謝料や養育費を支払わなければならない場合でも、妻が負担するといえば妻側が振込手数料を負担しても何ら問題はないのです(妻が振込手数料を負担する場合、夫は、合意金額から振込手数料を差し引いた金額を振り込むことになります。)。
しかしながら、妻も夫も振込手数料を負担したくない場合、結論としては、支払う側である夫が振込手数料の負担をしなければなりません。
なぜなら、民法484条は、
「弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引き渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。」としており、原則として、債権者、すなわち支払いを受ける権利をもっている人の住所において弁済をする必要があるからです。
なお、養育費については、毎月の支払いが必要であることから、当事者の合意で振込手数料が発生しないような方法を選択することも多いです。
例えば、養育費の支払先口座をゆうちょ銀行の口座に特定し、支払う側もゆうちょ銀行の口座から送金するといった方法があります。
所有権移転登記費用について
登記費用を誰が負担するかについての明確な規定はありませんが、実務上、登記費用は権利を取得する人が負担するのが慣例となっています。
なぜなら、登記は、権利を取得した側が、その取得した権利を公示して対抗要件を備えるための手続きであり、基本的に権利を取得した側にのみメリットがある手続きだからです。
もっとも、当事者双方の同意があれば、権利を取得しない方が登記費用の負担をすることも可能であり、夫が登記費用の負担をすることも可能です。
例えば、妻は浮気を許すと言っているが夫はどうしても妻と離婚したいと考えていた場合、夫は本来負担しなくても良い登記費用を負担する等、妻に離婚に応じてもらえるような条件を積極的に提示していくということも考えられます。
調停費用について
本事例が、仮に調停で成立した離婚事例の場合、調停手続きに要した費用は誰が負担すべきでしょうか。
調停費用については、家事事件手続法第28条で「家事調停に関する手続きの費用(以下「調停費用」という)は各自の負担とする。」と明確に定められており、当事者双方がかかった費用をそれぞれ負担することになります。
①慰謝料や養育費の振込手数料について
本事例のように、妻も夫も振込手数料を負担したくない場合、結論としては、支払う側である夫が振込手数料の負担をしなければなりません。
また、このことは夫が浮気をしていたか否かで違いはありません。
夫に養育費や慰謝料の支払義務があり、夫が振込手続きを利用して支払うことを選択した場合には、振込手数料は夫側が負担しなければならないのです。
もし、夫が振込手数料を支払いたくないのであれば、妻の住所地まで現金を持参して支払いをしなければなりません。
②所有権移転登記費用について
本事例においては、権利を取得する側である妻が登記費用の負担をしなければならないということになります。
もっとも、当事者双方の同意があれば、権利を取得しない方が登記費用の負担をすることも可能であり、本事例において夫が登記費用の負担をすることも可能です。
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