不倫の示談書【弁護士が書き方や注意点を徹底解説】
目次
不倫・不貞行為の示談書とは
不倫とは
不倫とは、通常、結婚関係にある夫婦の一方が、夫もしくは妻以外の人物と交際していることをさす言葉であり、浮気と同じような意味です。
不貞行為は、実務上「配偶者以外の者と性的関係(肉体関係)を結ぶこと」と考えられており、上記の不倫よりも狭義に解釈されています。
(参考:不倫とは?https://www.daylight-law.jp/divorce/70001/)
裁判所や弁護士などの法律実務家は、肉体関係がある事案では、不倫や浮気という言葉ではなく、「不貞行為」という言葉を使うのが一般的です。
しかし、ここではわかりやすくするために、不倫という言葉を使って解説しています。
示談書とは
示談書とは、当事者の合意内容を書面にしたものを言います。
不倫の示談書は、不貞行為による慰謝料に関して、加害者と被害者との間で交わす示談書となります。
示談書の書き方・テンプレート
相手と合意内容がまとまったとき、どのような示談書を作成したらよいか、わからない方がほとんどだと思います。
ここでは、示談書のサンプルを掲載しております。
すべて無料でダウンロードが可能ですので、ご参考にされてください。
もっとも、相談者の方がおかれた状況は多種多様であり、どのような方法を選択すべきかは一概に言えません。
そのため、サンプルはあくまで参考程度にとどめ、離婚専門の弁護士への相談を強くお勧めします。
※書式の使用は、離婚問題に苦しむ当事者個人の方及び弁護士のみとさせていただきます。行政書士などの他士業その他の事業者の方に対しては、弁護士法違反(非弁活動)のおそれがあるため、無断使用を一切認めておりません。
不貞慰謝料の示談書(不貞相手との合意のテンプレート)
このテンプレートは、不貞行為の被害者(不貞行為をされた配偶者)と不貞の相手(配偶者の浮気相手)が慰謝料等について合意をする際に使用する示談書の記入例です。
記入例では、慰謝料の額や支払い方法のほかに、謝罪の文言や口外禁止条項(内容を秘密として他にはしゃべらないこと)を記載しています。
また、支払い方法については、一括払いの場合と、分割払いの場合を記載しています。
分割払いの場合は、万一、支払いが滞った場合のペナルティ(期限の利益喪失と遅延損害金)として懈怠約款を記載するのが一般的です。
どのような条項を入れるかはケース・バイ・ケースで判断すべきです。
また、示談書の最適な内容は、個別具体的な状況であくまで変わってきます。
あくまで参考程度にとどめ、詳細は離婚に詳しい弁護士に助言をもらうようにされてください。
不貞慰謝料の示談書(3者間:夫、妻、不貞相手の合意のテンプレート)
この書式は、不貞行為の被害者(不貞行為をされた配偶者)と不貞行為の加害者である配偶者と、不貞の相手(配偶者の浮気相手)が慰謝料等について、3当事者間で合意をする際に使用する示談書のテンプレートです。
記入例では、慰謝料の額や支払い方法ほかに、謝罪文言や口外禁止条項を記載しています。
また、支払い方法については、一括払いの場合と、分割払いの場合を記載しています。
分割払いの場合は、万一、支払いが滞った場合のペナルティ(期限の利益喪失と遅延損害金)として懈怠約款を記載するのが一般的です。
なお、不貞行為は、共同不法行為であり、慰謝料の支払い義務の法的性質は不真正連帯債務であると考えられています。
簡単に言うと、次のとおりです。
甲:被害者(妻とします。)
乙:加害者(不倫をした夫とします。)
丙:加害者(不倫の相手女性とします。)
上記の例で、仮に、慰謝料の額が300万円だとします。
このとき、加害者の乙と丙は、その全額の賠償義務を負っています(連帯責任)。
なお、被害者の甲の損害は300万円ですので、全額を回収したら、それ以上の金額を受け取る権利はありません。
示談書が無効になる場合
示談書は、後から言った言わないの事態を避けるために、作成すべきものです。
しかし、せっかく作成しても、法的な効果が認められない場合があります。
以下、その典型例をご紹介します。
①法的な有効性が認められないもの
示談書は、法律文書であり、法的な有効要件を満たさなければなりません。
そのため、弁護士は条項の一言一句にとても配慮して示談書を作成しています。
また、離婚専門の弁護士は、単に法的に有効なだけでなく、依頼者に最大限有利な内容となるように工夫します。
このような適切な示談書は、専門の弁護士にしか作成できないと考えるべきです。
しかし、現在、弁護士以外の士業(行政書士など)や無資格者が離婚の法律相談を受けているケースが見受けられるため、注意が必要です。
そもそも弁護士以外の者が離婚の法律相談等に対応すると、非弁行為といって弁護士法違反となります。
これは、非資格者が示談書作成などに関与すると、間違った助言をしてしまい、法的な有効性が認められない示談書が作成されてしまう可能性があるからです。
②公序良俗に反する
合意の内容が実現不可能なものや、人権を侵害するようなものは、公序良俗に反するとして、無効となる場合があります。
典型的に問題となる事例は、法外な額の慰謝料を合意するケースです。
具体的にどの程度の慰謝料が許されるかは、義務者の収入や状況によって異なるため一概に言えませんが、離婚問題に詳しい弁護士に相談すれば、公序良俗に反するか否かの助言をもらえるでしょう。
公正証書を作成すべき?
公正証書とは、公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書のことです。
示談をする場合、その合意内容を公正証書にすべきか否かというご質問をよく受けます。
公正証書は、公文書ですから高い証明力があります。
また、公正証書の条項に強制執行受諾文言を入れておくと、債務者が金銭債務の支払を怠った場合に、裁判所の判決などを待たないで直ちに強制執行手続きに移ることができます。
このような公正証書の効力を考慮すると、慰謝料の支払い方法が分割の場合で、長期間に及ぶ場合は公正証書の作成を検討したほうがよいでしょう。
公正証書のテンプレートは、こちらからダウンロードが可能です。
示談書は離婚後も効力がある?
例えば、結婚している間に不倫の示談書を作成し、その後離婚してしまうケースは多々あります。
そのような場合に、示談書の効力が及ぶのかというご質問を受けることがあります。
離婚の有無は、不倫の示談には影響しないため、基本的には示談書の効力は認められると考えられます。
ただし、あくまで一般論ですので、具体的な条項を専門家に確認してもらった方がよいでしょう。
示談書なしで請求できる?
不倫の事案の中には、口頭で合意したものの、示談書を作成しなかったというケースもあります。
和解契約自体は、口頭の合意でも成立します。
(和解)
第六百九十五条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
引用元:民法|電子政府の窓口
したがって、請求できる可能性はあります。
しかし、問題となるのは、後から加害者が「合意していない」と主張された場合です。
このような場合、合意内容について、被害者側が主張立証の責任を負います。
簡単に言うと、証拠がなければ裁判所は請求を認めてくれません。
したがって、このようなケースでは不倫の証拠を確保することが重要となります。
誓約書と示談書は違う?
不倫について、事実を認め、慰謝料を支払うという内容の誓約書を作成しているケースも見受けられます。
状況にもよりますが、基本的には誓約書よりも示談書の方をお勧めいたします。
示談書は、権利者と義務者双方の合意内容を記載しますが、誓約書はあくまで加害者の一方的な約束を書面にしたものです。
そのため、トラブルの予防という観点からは不十分なケースも想定されます。
例えば、加害者が慰謝料として「100万円を支払います。」という誓約書を記載したとします。
この場合、被害者側から、追加で50万円の慰謝料を請求された場合、加害者は支払わなければならない可能性があります。
誓約書の内容は、あくまで加害者の約束事であって、被害者はそれを了承したわけではないからです。
まとめ
以上、不倫の示談書について、書き方や注意点について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
不倫の示談書は、法的な有効性が認められることが重要です。
また、被害者側、加害者側のいずれかの立場によっても、有利な条項の内容は異なります。
そのため、示談書の作成を検討されている方は、離婚・男女問題に精通した弁護士へのご相談をお勧めいたします。
専門の弁護士であれば、示談書について、適切な助言をしてくれるでしょう。
この記事が、示談書作成を検討されている方にとって、お役に立てば幸いです。
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