養子縁組をした子どもの養育費を実の父に請求できる?

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

子供を再婚相手と養子縁組をした場合、実父の養育費の支払い義務は無くなる可能性が高いです。

離婚後に親権者とはならなかった場合でも、実父である以上は、実子に対する扶養義務(=養育費を支払う義務)があります。

しかし、再婚相手と養子縁組をした場合、第一次的に扶養義務を負うのは養親です。

すなわち、養親の収入でまかないきれない場合に、補助的に実父が養育費の支払い義務があると考えられています

養育費は、継続的に支払われるものですので、権利者、義務者にとも重大な影響を及ぼします。

この記事では養子縁組をした場合としなかった場合の違い、相手が養育費を払ってくれない時の対処法などを弁護士が解説していきます。

養子縁組をした場合

実親は、実子に対して扶養義務を負っています(民法877条1項「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」)。

この義務は、その親が親権者であるかどうかにかかわりません。

すなわち、離婚後に親権者とはならなかった者も、実親である以上は、実子に対する扶養義務(=養育費を支払う義務)があります。

ただし、子どもが再婚相手と養子縁組をした場合、第一次的には、養親となった再婚相手が子どもに対して扶養義務を負うことになります(民法818条2項「子が養子であるときは、養親の親権に服する。」)。

これは、養子縁組は、未成熟子の福祉と利益のために、親の愛情をもってその養育、扶養を全面的に引き受けるという意思に基づいてなされる、と考えられることによるものです。

したがって、扶養義務は、まず第一次的には養親にあり、その養親が親としての本来の役割を果たしている限り、実親(離婚相手)の扶養義務は第二次的なものに後退し、養親に資力がない等の理由によって充分に扶養義務を履行できないときに限って、実親は扶養義務を負うということになります。

以上からすれば、前述の事例では、第一次的には養親が養子の扶養義務を負担するので、養親の収入で養育費をまかなえているのであれば、実親に対して養育費の請求をすることは難しくなります。

今回の事例のように、養親の収入では養育費をまかなえない場合は、実親に対して、養育費の請求をすることができます。

 

養子縁組をしなかった場合

養子縁組をしなかった場合、再婚相手は、未成熟子の養育、扶養を引き受ける意思がないことになるため、法的には再婚相手に養育費の負担義務はありません。

したがって、再婚相手が十分な収入を得ていたとしても、それは養育費の算定に考慮されない以上、実親である離婚相手が養育費の負担をしなければならないことになります。

もっとも、再婚相手の収入で子どもを養育できているにもかかわらず、離婚相手への養育費支払いを目的として、あえて養子縁組をしない、といった選択をされると、離婚相手の強い反感を買います。

また、もしも再婚相手との仲が悪くなってしまい、「自分の子ではないし、養育費は支払わない!」などと言われてしまうと、再婚相手には扶養義務がない以上、再婚相手に対して養育費を請求しても認められない可能性が出てきます。

以上のような紛争の可能性があることを踏まえると、再婚をする際は、再婚相手とお子さんは養子縁組をされるのが望ましいと考えます。

 

養育費問題解決へのカギ

養育費を相手方が支払ってくれないとき、まずは請求の意思を明確に表示することが重要です。

なぜならば、養育費は、請求の意思を相手方に通知したときから支払義務が発生すると考えられるからです。

例えば、離婚して、何年も経ってから、養育費を求めた場合、離婚時に遡って未払い分を請求することは難しいケースがほとんどです。

また、請求の意思表示は、口頭ではなく、内容証明郵便等で行うべきです。

なぜならば、口頭の場合、相手方が「聞いていない」などと主張した場合、言った言わないの争いとなります。

そして、請求する側に立証責任があるため、養育費の請求が認められないこととなります。

 

再婚後の養育費のよくあるQ&A

前夫に再婚の事実を知らせるべきか?

前夫に再婚の事実を知らせる法的な義務はありません。

 

しかし、前夫に再婚の事実を秘匿したまま、養育費を受け取っていると、後々、再婚がバレたとき、前夫は快くは思わないでしょう。

その場合、前夫から非難される可能性があります。また、前夫が感情的になり、養育費を支払ってくれなくなる可能性もあります。

他方で、前夫の再婚の事実を知らせると、それを契機として養育費の支払いがストップするかもしれません。

養育費の調停となった場合、再婚相手が子供を養育できる状況であれば、養育費の支払い義務がなくなる可能性もあります。

このように、再婚の事実を知らせる場合と知らせない場合は、それぞれメリットとデメリットがあります。

前夫の性格、離婚の経緯、再婚相手の収入状況、子どもの状況、相談者の価値観など、具体的な状況によって、いずれを選択すべきかが異なります。

例えば、子どもがまだ幼く、前夫と面会交流を実施しているようなケースでは、面会交流の際、子どもが再婚相手や現在の生活状況について話してしまうことがあるので、再婚がバレル可能性が極めて高いといえます。

このような場合、前夫に再婚することを話して負いた方がよいでしょう。

再婚したら、養育費を支払う必要がないと知っている方は、それほど多くないはずです。

そのまま支払ってくれる可能性もあります。

また、養育費を支払う必要がないと知っている場合でも、「子どものために養育費を支払いたい」と言ってくれるケースもあります。

もちろん、状況によるので、養育費がストップされる可能性もあります。

最終的には相談者の方の価値観で決断していただくこととなります。

 

再婚相手に養育費について説明すべきですか?

基本的にはきちんと説明しておいたほうが良いかと思われます。

再婚する際に、前夫からの養育費を受け取っていることを伝えるかどうかは悩ましい問題ですが、隠さずに伝えておいた方が良いでしょう。

再婚相手によっては、前夫からの支援を快く思わない場合もありますが、夫婦としてこれから協力していくためには、正直であることが重要です。

また、後から養育費を受け取っている事実が発覚すると、再婚相手と気まずくなる可能性もあるため、早めに話しておくことが大切です。

 

 

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