離婚後に失業した場合、養育費を減額することはできますか?

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  


養育費の減額について

以前離婚し、その際に私が養育費を月10万円支払うと決めたのですが、先日整理解雇で失職してしまいました。

その後、就職活動をしていますがなかなか再就職口が見つからないので、養育費を減額してほしいと元配偶者に言ったところ、「就職口がないはずはない、裁判所でも潜在的稼働能力に基づいて養育費を算定するはずだから、減額には応じられない」と言われてしまいました。

職を失っても、養育費を支払い続ける必要があるのでしょうか?

弁護士の回答

失職した場合には、養育費の減額事由になり、減額は認められます

裁判所が潜在的稼働能力を認めて、現実には無収入でも働けば一定の収入を得られるものとして養育費の算定を行う場合がありますが、それは働けるのに働いていない場合の議論です。

やむを得ず働けなくて収入がない場合にまで収入があるものとして計算するものではありません

失職は養育費の減額事由になりうる?

失職した場合には、養育費の減額事由になり、減額は認められます

養育費の算定については、裁判所が公表している簡易算定表が有名ですが、その算定表でも収入を基礎として養育費を算定しているように、収入は養育費算定の重要な考慮要素となっています。

そのため、収入がなくなった場合には減額事由となります。

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潜在的稼働能力とは?

もっとも、収入がない、または少ない場合について、常に現実の収入を基礎とするのではなく、「働いていれば得られているであろう収入」を基礎として養育費を算定するということを実務上行っています。

これを潜在的稼働能力と言うことがあります。

しかし、潜在的稼働能力によって計算をしていいのは、以下のような場合であるとされています。

判例 潜在的稼働能力によって計算をした裁判例

無職であったり、低額の収入しか得ていないときは、就労が制限される客観的、合理的事情がないのに単に労働意欲を欠いているなどの主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが養育費の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される場合

【東京高決 平成28年1月19日】

簡単に言えば、働けない理由がないのに働かない人の収入が無収入となるのはおかしいので、その場合には働いていると仮定して収入を決めましょうということです。

そのため、自己の責任ではなく失職し、真面目に求職活動をしているにも関わらず職に就けない場合にまでも、潜在的稼働能力が認められて、収入を算定されるわけではないことに注意が必要です。

このような潜在的稼働能力については、養育費だけではなく婚姻費用についても同じことが言えます。

また、支払う側だけではなく、もらう側も働けるのに働いていない場合には、潜在的稼働能力があるとして収入が認定されることもあります。

 

 

減額が認められる場合とは?

離婚時に一度取り決めを行った場合は、原則として取り決め通りの支払いをしなければなりません。

もっとも、時間が経過するにつれて状況は変化します。

また、相談者のケースの場合、整理解雇という自身にはどうすることもできない事情によって職を失うようなこともあります。

このような場合、事情の変更があったものとして、一度取り決めた内容の変更が許容される場合があります。

具体的には以下を考慮して決められることとなります。

  1. ① 事情が変更したこと
  2. ② 変更の必要性
  3. ③ 変更の相当性

整理解雇によって職を失ったという事実は①の要件を満たします。

次に、職を失い収入がゼロになったということであれば、取り決めた養育費を支払うことができず、相談者ご自身の生活を維持することができなくなるわけですので、②の要件を満たします。

最後に、まったく支払わないわけではなく、低額でも支払っていくということ(減額請求)であれば、扶養義務を果たそうという意欲が認められる以上、金額次第では③の要件も満たします

監護親に十分な資力が認められる場合であれば、減額の幅が大きくなる可能性があります。

参照されるのは減額を請求した当時の双方の収入を算定表に当てはめて導かれる金額との比較となるでしょう。

なお、養育費を支払うことがまったくできないという場合もあろうかと思います。

扶養義務はお子さんの成長を経済的側面で支えるための重要な要素です。

そのため、まったく支払いをしない(できない)ということが③の要件を満たすかどうかはケースバイケースといえます。

 

 

お悩みの方は弁護士へご相談ください

養育費や婚姻費用は、その算定を簡易算定表で済ませてしまいがちですが、様々な考慮要素により決まるものなので、しっかりと計算することが重要です。

ただ、考慮要素等はさまざまであり、計算も簡単ではありませんので、弁護士にご相談されることをおすすめします。

当事務所は離婚事件を数多く扱っており、算定表では考慮されていない事情を考慮しつつ、適切な養育費や婚姻費用を算定しております。

まずは、お気軽にご相談ください。

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