結納金は離婚の際に返還が必要?家具の購入にあてた場合
私はいま妻との離婚を考えています。
結婚する際、結納金として 200万円を受け取っており、それを使って家具・家財をそろえていました。
しかし、妻は、家具・家財は持っていくといって聞きません。
私としては、生活に使っていた家具だからすべて妻が持ち出すのは違うと思っています。
妻の言い分に従わなければならないのでしょうか?
離婚の際に、結納金相当額の返還を求めることは難しいといえます。
結納金は、婚約のしるしとして渡されるため、結婚以前の形成財産となり、妻の特有財産として財産分与の対象外です。
結納金を使って家具・家財を購入した場合は、その時点で夫婦の共有財産となっているため、財産分与の対象になります。
そのため、夫側が納めた結納金を使っていても、家具・家財を購入した場合は、その価値の半分は相手が取得する権利を有しているため、全額を取り戻すことはできません。
このページでは、離婚の際の結納金の返還について弁護士が詳しく解説します。
結納金とは
結納金とは、婚約のしるしとして取り交わすものであり、一般的には男性の家から女性の家へ送られる金銭です。
かつては男性の親が用意することが多かったようですが、現在では男性本人が用意するケースも増えています。
離婚する際に、結納金分の返還を求めることはできるのか
これは離婚に伴う財産分与の問題です。
財産分与とは、結婚してから別居するまでの期間に夫婦が築いた財産を折半するというものです。
結納金は、婚約のしるしとして渡されるため、結婚以前の形成財産となります。
そのため、理論的に言えば、結納金は妻の特有財産であり、財産分与の対象外となるため、離婚時に相手に返さなければならないものではありません。
しかし、注意が必要です。
それは、収められた結納金を使って家具・家財を購入した場合です。
その購入品は結婚後の夫婦の生活に利用されるものです。そのため、家具・家財はその時点で夫婦の共有財産となっているのです。
そして、家具・家財が共有財産となっている以上、結納金相当額の返還を求めることは難しいといえます。
これに対し、もともと特有財産だった結納金が家具等に形を変えただけであり、金銭であるか物であるかは関係ないのではないか、という考え方もあります。
しかし、結婚した夫婦が、結婚後の生活(=夫婦の共同生活)のために、独身時代から貯めてきた貯金を切り崩すということはよく行われることです。
そして、この「夫婦の共同生活のために用いた」という事実から、裁判所は「財産の特有性を放棄し、共同生活に投じたものとみる」と評価します。
したがって、結納金を使って家具・家財を購入した場合は、全額を取り戻すことはできません。
結納金で家財購入した場合の財産分与の方法
結納金が家具等に変わっていたとしても、共有財産である以上、その価値の半分は妻側が取得する権利を有しています。
しかし、別居時点での家具等の価値がどれほどのものか、おそらく高価値は望めません。また、家具そのものを半分に割ることはできません。
そのため、離婚をする際は、どのような家具・家財があるのかを整理し、そのうち最低限どれが欲しいのかを特定しておくことが重要です。
そのうえで相手方と協議し、それでも相手が応じない場合は、価値の半分相当額の金銭の支払いを求めることになります。
その他〜婚約指輪や結婚指輪は?
今回の問いとは設定が異なりますが、時々、婚約指輪や結婚指輪も財産分与の対象にするべきではないかというご相談を受けることがあります。
たしかに、これらは、元々は一方配偶者(多くの場合は、夫)の結婚前からの財産(現金)から支出され、それが形を変えたものではあります。
しかし、これらは結納金と同様に、婚約や結婚のしるしとして渡されるものであるため、結婚以前の形成財産となります。
そのため、これらは、(多くの場合)妻の特有財産であるため、財産分与の対象外と考えるのが自然ということになります。
なお、参考までに、内縁期間中に妻にプレゼントをした宝石類に関して、財産分与の対象とはならないとした審判例がありますので、紹介をしておきます。
「内縁期間中に申立人が相手方から買い与えられた宝石類は、ネックレス・・・であり、その購入価格は、・・・・であったことが認められ・・・。これらの宝石類は、社会通念に従えば申立人の専用品と見られるから、申立人の特有財産であるというべきであり、したがって、本件財産分与の対象とはならない。」※申立人=妻、相手方=夫
離婚に伴う財産分与、特に容易には分けられない家具等については、もめやすい事情のひとつです。
財産分与でお悩みの方はこの問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?