親権者が死亡した場合どうなる?親権者変更のタイミングが重要!
数年前に、親権者を元妻と定めて離婚しました。
私は親権者を争っていたのですが、泣く泣く諦めたという経緯があります。
そのような中、親権者である元妻が病死しました。
私と子との関係は良好で、月に1度は面会交流を行っていましたし、元妻が病死した後は子を引き取って育てています。
そのような場合でも、当然に私が親権者になれるわけではないのでしょうか?
親権者が死亡した場合も、他方の親が当然に親権者になれるわけではありません。
民法は、親権者が亡くなった場合、他方の親を親権者とするという定め方をしていないのです。
親権者になりたい父親としては、早急に親権者変更の申立てをすることが重要です。
親権者が死亡すると、家庭裁判所が親権者の変わりとなる未成年後見人を選任するためです。
このページでは、親権者が死亡した場合の未成年後見人や親権者変更について、弁護士が解説いたします。
親権者が死亡した場合
本件のように、親権者が死亡した場合、民法第838条第1号にしたがい、後見が開始されます。
民法には次のように規定されています(下線加筆)。
後見は、次に掲げる場合に開始する。
一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
二 後見開始の審判があったとき。
引用元:民法|e-Gov法令検索
本件では、親権者である母が死亡したため、「未成年者に対して親権を行う者がないとき」にあたり、後見が開始されます。
未成年後見人の指定
未成年後見人の指定については、最後に親権を行う者(本件では、母)が、遺言で未成年後見人を指定することもできますが、そうしたことをしていなかった場合、家庭裁判所が利害関係人等の請求により、未成年後見人を選任することになります。
民法第840条第1号には次のように規定されています(下線加筆)。
親権者変更の申立てが必要
本件では、父親は親権者になりたいという希望を有しています。
このような場合、
- 父親は親権者になることができるのか
- なることができるとして、父親がどのような手続きをとるべきなのか
が問題となります。
この点について、【東京家審昭和49・12・13】は、次のように判断をしています(下線加筆)。
判例 東京家審昭和49・12・13
「親権者たる親が死亡してもなお他方の親が生存する場合には、その生存親について、さきほどの親たる地位において子の監護養育、財産管理をなさしめるのにふさわしい事情が認められる限り、後見人ではなく、親権者たる地位に同人をつけるのが適当」である。
「親権者変更には子の親族の請求が必要であるから、後見人選任手続内で職権で親権者変更の審判をなしうるものではなく、必ず親権者変更の申立てが必要であり・・・」
まず、上記では、裁判所は本件のような父親の場合、その父親の監護能力等に問題がなければ、後見人ではなく親権者にすることが適当であると述べつつ、その手続きについては、親権者変更の申立てが必要であると判断しました。
そのため、本件の父親は、親権者変更の申立てをする必要があるということになります。
未成年後見人が選任されてしまった場合は?
もし、父親が親権者変更の申立てをせずに、前述した民法の規定にしたがい、子に未成年後見人が選任されてしまった場合、父親は何もできなくなるのでしょうか?
この点について、【東京高決平成6・4・15】は、こうした場合、父親は未成年者に後見人が選任された場合であっても、親権者変更の申立てをすることができるとしました。
その上で、親権者変更を許可するかどうかについては、子の利益に資するかという点から判断されるべきと判示しました。
判例 東京高決平成6・4・15
本事例は、離婚後親権者となっていた母が死亡し、祖母が後見人に選任された後に、父が親権者変更の申立てをしたものです。
「・・・親権者変更申立については、民法819条6項を準用すべきものと解されるが、右申立を許可すべきか否かは、同項が規定する子の利益の必要性の有無によって判断することになり、具体的には、新たに親権者となる親が後見人と同等又はそれ以上の監護養育適格者であり、かつ親権者を変更しても子の利益が確保できるか否かという観点から判断すべきである。・・・」
上記の点については、別の審判例は親権者変更の申立てができないとしたものもあるため、判断が分かれうるところです。
まとめ
親権者死亡に伴う親権者変更の申立てはタイミングが重要です。
本件のように、親権者が死亡した場合、親権者になりたい父親としては早急に親権者変更の申立てをすることが重要といえます。
ご相談のような事例でも、亡くなった親権者の両親(未成年者からすると祖父母)が後見人選任の申立てを行うことはよくあるからです。
この相談のような事例で悩んでおられる方は、親権の問題に詳しい弁護士にご相談ください。
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