面会交流を拒否する正当な理由とは?制限が認められるポイント

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  


面会交流

面会交流を拒否することは、基本的には認められません。

面会交流は、子供の健やかな成長のために重要と考えられているためです。

そのため、面会交流を拒否できる正当な理由には、相手が子供を虐待しているなどのよほどの事情が必要となります。

具体的には以下のような場合です。

  • 子供を虐待している
  • 配偶者へのDVがある
  • 子供が面会交流を拒否している
  • 子供の健康や安全に問題が生じる

このページでは、面会交流を拒否できる正当な理由をはじめ、面会交流の拒否に正当な理由がないケース、子どもが拒否している場合はどうなるのか、面会交流を拒否された場合の対応方法などについて詳しく解説いたします。

面会交流を拒否することは原則認められません

面会交流を拒否することは、基本的には認められません。

面会交流は、子供の健やかな成長のために重要と考えられているためです。

面会交流を正当な理由なく拒否した場合、裁判所は親権を認めてもらえない、慰謝料や制裁金(間接強制)の支払い義務が発生する、などの不利益も考えられるため注意しましょう。

 

 

面会交流を拒否できる正当な理由とは?

「面会交流を拒否できる正当な理由がある」と判断されるのはどのようなケースでしょうか。

具体例をあげると、次のようなケースが考えられます。

面会交流を拒否できる正当な理由

 

子供を虐待している

子供への虐待が深刻なケースでは、面会交流の拒否に正当な理由があると認められる可能性が高いです。

もっとも、虐待の程度が弱く、しつけの一環とも評価できるケースでは、面会交流の拒否は認められない可能性があります。

 

配偶者へのDVがある

配偶者へのDVが深刻な場合、面会交流の拒否に正当な理由があると認められる可能性があります。

例えば、夫が妻にDVを繰り返し行っており、それを子供が見ている場合、子供自身への虐待と評価できます。

母親がDVを受けている様子を見ると、子供は深く傷つきます。

そのため、子供自身へのDVではなくても、子供への虐待と同じように考えられます。

 

子供が面会交流を拒否している

子供が面会交流を強く拒否している場合、面会交流の拒否に正当な理由があると認められる可能性があります。

もっとも、子供が自分の意志で面会交流を拒否しているのか否かについては、慎重に判断される傾向にあります。

この点については後記において、くわしく解説します。

 

子供の健康や安全に問題が生じる

面会交流を実施することで、子供の健康や安全に問題が発生するような場合、面会交流の拒否に正当な理由があると認められる可能性があります。

例えば、相手に重大な肉体的・精神的な疾患があり、子供が乳幼児であるようなケースでは、子供を適切に監護できないおそれがあります。

もっとも、この場合、監護親が面会交流に同席するなどして、問題を解消できるのであれば面会交流は実施しなければならないでしょう。

 

ワンポイント:面会交流の拒否についての裁判所の考え

裁判所は、基本的には面会交流を実施すべきとの考えであり、面会交流を拒否できるのは上記で紹介した事情がある場合に限ります。

上記は典型的な例であり、これ以外にも面会交流の拒否が認められるケースもあります。

面会交流の拒否については、次の5つの要素を踏まえ、ケースごとに個別具体的に判断されることになるでしょう。

面会交流の制限に関する5つの要素
  • 子に関する要素(子の意思、子の年齢、子の心身に及ぼす影響、子の生活環境に及ぼす影響等)
  • 監護親に関する要素(監護親の意思、監護親の監護養育への影響、監護親の生活状況など)
  • 非監護親に関する要素(非監護親の生活状況、非監護親に問題がある場合など)
  • 子と非監護親の関係に関する要素
  • 監護親と非監護親との関係に関する要素(別居・離婚に至った経緯を含め、現在の両親の関係がどうであるかなど)

 

 

面会交流の拒否に正当な理由がないケース

上記とは反対に、次のようなケースでは、面会交流の拒否ができない可能性が高いと思われます。

面会交流の拒否に正当な理由がないケース

相手への嫌悪感があるため会わせたくない

面会交流を拒否する理由が単なる嫌悪感の場合、面会交流を実施しなければならないでしょう。

 

再婚したため、相手の存在を子供に忘れてもらいたい

再婚しても、親子の関係は基本的には別に考えるべきです。

もっとも、子供が小さく、面会交流をさせない方が子供の健やかな成長にとって望ましいようなケースでは、面会交流の拒否が認められる可能性もあります。

 

 

子供の習い事が増えて忙しくなった

この場合、例えば、習い事がない日で面会交流を実施すべきと思われます。

もっとも、受験前の直前期などで、勉強に集中しなければならない場合、状況によっては面会交流の拒否が認められる可能性もあります。

 

引っ越して遠方に居住しているため会わせることが難しい

この場合、例えば、相手に子供に会いに来てもらう、回数を減らす代わりに宿泊付きの面会交流を認める、などで面会交流を実施すべきと思われます。

 

 

子どもが面会交流を拒否した場合はどうなる?

子の意思が十分に考慮されるべきと判断される年齢の場合

面会交流の制限に関する5つの要素のうち、「子に関する要素」が問題となります。

子に関する要素としては、①子の意思、②子の年齢、③子の心身に及ぼす影響、④子の生活環境に及ぼす影響等が挙げられます。

子が面会交流に否定的な意思をもっている場合(①子の意思)、それがどう評価されるかがポイントになります。

また、子の意思を判断するに際しては、意思表示をする子の年齢も重視されます。

例えば、子の年齢が12歳の場合、一般的な実務感覚としては、子の意思が十分に考慮されるべき年齢といえます。

そのため、子が本心から夫との面会交流を拒否しており、裁判所においても子の意思をしっかりと確認できれば、仮に夫が面会交流を求めていても、子の意思を尊重して面会交流を制限してもらえる可能性が高いです。

子の意思を裁判所に伝えるための方法としては、単に子の意思を主張するだけでなく、裁判所に対し調査官調査を促し、子の意思が面会交流に消極的であることを報告書に記載してもらうとよいでしょう。

なお、調査官というのは、家庭裁判所にて子どもの問題を調査する専門職になります。

この調査官が作成する意見書を「調査報告書」といいますが、裁判官の判断に大きな影響を与えるため、調査報告書の記載内容はとても重要な意味をもちます。

調査官の調査においては、面談がありますので、心配であれば弁護士に立ち会ってもらい、調査官にきちんと子の意思が伝わるようにすべきです。

 

子の意思だけでは判断できないとされる年齢の場合

仮に5歳の子が面会交流に消極的だった場合にはどうなるでしょうか。

この場合、子の意思だけをもって面会交流の制限をするという判断はなされないのが通例です。

というのも、子が幼いうちは判断能力に乏しいと考えられるためです。

例えば、監護親である母親が父親と会ってほしくなさそうという理由や単にそのときの気分のみで父親に会いたくないとの意思表示がされることも少なくありません。

そのため、子が面会交流に消極的な場合、調査官はその背景にある理由を慎重に調査することになります。

そのうえで、子の心身に悪影響を及ぼすといった場合でなければ面会交流を認める判断になることも多いと思われます。

なお、子の心身に悪影響を及ぼすという主張する場合には、それを証明するための証拠が非常に大切になります。

具体的には、以下のとおりです。

子に関する要素を理由に面会交流の制限が認められるポイント
  • 子の心療内科や精神科への通院記録(診断書等)
  • 主治医の意見書
  • 子が実際に問題行動をとっているのであれば、その記録(写真や動画があれば好ましいが、最低限いわゆる5W1Hがわかるようにノートをとっておく等はすべきです)

 

 

面会交流を拒否された場合はどう対応する?

ここでは、面会交流を拒否された非監護親の対応法について解説します。

 

相手と協議をする

まず、相手がどうして面会交流を拒否するのか、事情を聞いてみましょう。

そして、その問題が解消できそうであれば、相手に提案するなどして協議なさることをお勧めいたします。

協議の方法については、可能であればできるだけ直接会う方法がよいでしょう。

相手と会うのが難しい場合は、協議の方法としては電話やLINE等の送受信なども考えられます。

 

面会交流の調停を申し立てる

協議での解決が難しい場合、家庭裁判所に面会交流の調停を申し立てます。

面会交流の調停は話し合いでの解決を目指す手続です。

もし、調停がまとまらなければ審判という手続に自動的に移行します。

審判は、裁判所が面会交流を認めるかどうか、認めるとして頻度や方法をどうするか等について決定する手続です。

 

離婚に強い弁護士に相談する

相手の面会交流拒否に正当な理由があるかどうかは専門的な判断が必要となります。

そのため、まずは離婚問題に精通した弁護士に相談なさることを強くお勧めいたします。

離婚に強い弁護士であれば、専門家として面会交流が認められるかどうかについて見通しを説明するだけでなく、今後の進め方等についても親身になって助言してくれるでしょう。

 

 

正当な理由なく面会交流を拒否した場合は違法?

上で解説したように、面会交流の拒否は原則として認められません。

面会交流を拒否しても、刑事罰があるわけではなく、犯罪は成立しません。

しかし、面会交流を拒否すると、相手の面会交流権を侵害しているとして、慰謝料の支払いが認められる可能性があります。

また、これから離婚する場合、面会交流を正当な理由なく拒否すると、裁判所が親権を認めてくれないおそれもあります。

現在、すでに離婚が成立している場合は、親権者の変更も可能性としてゼロではありません。

 

 

 

まとめ

以上、面会交流拒否の正当な理由について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

面会交流を拒否できる正当な理由としては、相手が子供を虐待しているなどのよほどの事情が必要となります。

しかし、相手の面会交流拒否に正当な理由があるかどうかは専門的な判断が必要となります。

そのため、まずは離婚問題に精通した弁護士に相談なさることを強くお勧めいたします。

当事務所には面会交流に注力する弁護士で構成される離婚事件部があり、面会交流を強力にサポートしています。

お気軽にご相談ください。

 

 

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