試行的面会交流とは?目的・実施の流れ【弁護士が解説】
試行的面会交流とは、家庭裁判所の面会交流室において、調査官等の立ち会いのもと実施する子どもとの交流場面の観察制度です。
面会交流自体は受け入れつつも、相手に対する恐怖や不信感等のため、面会交流の実施に対して、不安を抱く方のために、家庭裁判所が必要と判断した場合に実施されます。
このページでは、試行的面会交流の目的や、実施の流れについて弁護士がくわしく解説いたします。
試行的面会交流とは
離婚する際、子どもを監護している親が他方の親と面会をさせないことがあります。
面会させない理由としては、相手からDVを受けたので怖い、子どもが会いたがらない、相手が不貞行為を行ったので許せない、などの様々なケースがあります。
このような場合、家庭裁判所の調査官等が立ち会いながら、子どもと非監護親との交流場面を観察し、面会交流の問題点や対策などを検討することが重要となります。
このような面会交流を試行的面会交流といいます。
試行的面会交流の目的
試行的面会交流を行う目的は、次の2点とされています。
導入・調整
面会交流自体は受け入れつつも、非監護親に対する恐怖や不信感等のため、面会交流の実施に対して、不安を抱く方がいらっしゃいます。
このような場合、家裁の調査官が当事者に対して、助言し、サポートをしながら、面会交流ができる状況に導入し、円滑な実施に向けて調整することがあります。
面会交流の妥当性を判断する
監護親が面会交流自体を拒否していることも多くあります。
このような場合、非監護親は納得できず、面会交流の調停を申し立てることがあります。
そして、話し合いの結果、監護親が面会交流に応じない場合、審判手続に移行し、面会交流の実施について裁判所が判断をしなければなりません。
その前提として、裁判官から調査を命ぜられた家裁調査官が試行的面会交流を実施し、交流の様子を観察します。
そして、継続的な面会交流を行っていくことが可否、スムーズに実施するための注意点などを検討するために、試行的面会交流が行われることがあります。
試行的面会交流の流れ
裁判官からの調査命令
試行的面会交流は、当事者が希望してもすぐに実施されることはありません。
試行的面会交流の必要性について、調停委員会で評議し、上記の2つの目的のために、必要があると判断されると、調査官に対して調査命令が出ます。
実施日等の調整
試行的面会交流の調査命令が出ると、試行的面会交流の実施日時について、調整が入ります。
ケース・バイ・ケースですが、調査命令が出た後、試行的面会交流の実施日まで、1~2ヶ月ほどかかると思われます。
事前の個別面接
試行的面会交流の前までに、調査官が当事者や子どもと面接することが多くあります。
当事者(父母)の面接は、通常は家裁で行われます。父母は同じ部屋で同時に面接ではなく、個別に面接します。
子どもとの面接は、子どもの年齢や事案の内容にもよりますが、実際に生活している自宅で行われることが多い印象です。
面接のときは、次の項目についてヒアリングが行われる傾向です。
- ● 当事者の意向
- ● 子どもの生活状況
- ● 子どもの心身の状況
- ● その他問題点等
また、ケースによっては、調査官が学校、児童相談所、医療機関等の関係機関に対して、電話や訪問するなどして調査を行うこともあります。
試行的面会交流の実施
試行的面会交流は、家裁の児童室(プレイルームとも呼ばれます)という特別な部屋で実施されます。
プレイルームは、安全なスペースで、裁判所とは思えないほど明るいつくりになっています。
通常、カーペットなどが敷かれ、オモチャやぬいぐるみ、絵本など交流に必要な道具がたくさん用意されています。
また、プレイルームの壁には、鏡の壁面となっており、隣の部屋には観察室があります。
観察室からは、プレイルームが見えますが、マジックミラーとなっており、プレイルーム側からは観察室は見えない作りです。
観察室には、調査官、他方の親、代理人の弁護士が待機し、面会交流の様子を観察します。
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- ①監護親と子どもがプレイルームに入室
- 試行的面会交流がスムーズに行くために、まずは子どもに室内の雰囲気に慣れてもらいます。
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- ②非監護親が入室
- 子どもが遊び始めて落ち着いたころに非監護親がプレイルームに入室します。
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- ③非監護親が子どもと遊ぶ
- 子どもと久しぶりに会う場合、非監護親は徐々に遊びに加わっていきます。
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- ④監護親が退室
- 監護親が退室できない特殊な事情がある場合を除き、監護親はプレイルームから退室します。
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- ⑤面会交流の終了
- 調査官が面会交流の様子を見て、終了の合図をします。
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- ⑥監護親の再入室
- 監護親が入室し、子どもと非監護親とともに、プレイルームの片付けをします。
- ⑦退室
- 非監護親は子どもたと監護親に挨拶をして退室します。
試行的面会交流の結果の通知
試行的面会交流が終わると、調査官がその結果をまとめた調査報告書が作成され、本人も受領可能となります。
調査報告書ができるまで、通常、1ヶ月程度を要します。
試行的面会交流が面会交流の妥当性を判断するために実施された場合、面会交流の是非や留意点等についての調査官の意見が記載されています。
調査官の意見は家裁実務において、大きな影響力をもっています。
したがって、例えば、面会交流についてネガティブな意見であれば、審判手続に移行した場合、裁判官も面会交流を認めないという判断を行う可能性が高いと思われます。
まとめ
面会交流において、最も重要なことは「子ども目線」ということです。
子どもにとって面会交流は極めて重要です。
したがって、よほどの事情がない限り、面会交流の実施を前提とした上で、その障害や問題点を克服する方法を家裁調査官や調停委員会は検討していくべきです。
なお、面会交流について、くわしい解説は以下をご覧ください。
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