面会交流調停の取決めを守らない・守れない場合にどう対処すべき?
面会交流調停の取決めを相手が守らない場合、口頭や書面等で注意する方法が考えられます。
口頭や書面での注意をしても相手方がルール違反を繰り返す場合等には、再度調停を申し立てることも考えられます。
裁判所を利用して義務者の履行を確保する手段もありますので、詳しく解説します。
面会交流調停による取決め
面会交流の条件等については、調停手続において取決めをすることが可能です。
調停手続は裁判所を利用した手続ではありますが、裁判所が一方的に条件を定めるのではなく当事者の合意により調停が成立します(当事者で条件等の合意ができない場合には裁判所による審判となります。)。
面会交流の条件等を調停手続で定めた場合、裁判所の手続きを経ていることや当事者の合意による取決めであることから、大半の人が取決めを守る傾向にあります。
しかしながら、当事者が心から納得していないのに合意をしてしまった場合や、調停成立後に事情の変更があった場合(転勤、病気、習い事等)に、当事者の一方が調停で定めた取決めを無視したり逸脱したりするケースも少なくありません。
では、面会交流調停で定めた取決めを(相手方が)守らない・(自分が)守れない場合にどのように対処すべきでしょうか。
相手方が取決めを守らない場合
口頭による注意
相手方による軽微なルール違反がある場合で、相手方と対面や電話での会話が可能であるときには、まずは調停での取決めを守ってほしい旨の口頭による注意をする方法が考えられます。
軽微なルール違反の場合、必ずしも相手方が意図的にルール違反をしているとは限りません。
少し注意をすれば後の面会交流は円滑に行える可能性もあるため、まずは口頭による注意をしてみましょう。
書面・メール等による注意
相手方との直接的な会話が困難な場合や、口頭による注意をしたけれど相手方がルール違反を続ける場合等には、書面やメールによる注意をする方法が考えられます。
書面等による注意は、目に見える形での注意になるので、口頭による注意よりも相手方にプレッシャーを与えることができます。
また、相手方のルール違反が原因で後に裁判手続きを利用することになる場合に書面やメール等の文面が残っていると、相手方のルール違反を証明する証拠にもなり得ます。
再度調停を行う
口頭・書面を問わず当事者での話し合いが困難な場合や口頭・書面での注意をしたけれども相手方がルール違反を繰り返す場合等には再度調停を申し立てることも考えられます。
一度目の面会交流調停でどのような取決めをしたかにもよりますが、二度目の面会交流調停では一度目の面会交流調停後のルール違反も踏まえ、より詳細な面会交流の取決めをすることが考えられます。
例えば、一度目の面会交流で「月1回程度面会交流を行う。日時、場所、方法は都度事前に協議して定める。」旨の取決めがされているとします。
このケースで、会わせる側が色々と理由をつけて3ヶ月に一度も会わせてくれないといった場合には、二度目の調停では面会交流の日時をより詳細に取り決めることが考えられます。
具体的には、「毎月第1土曜日9時から16時まで面会交流を行う。」といった内容です。
逆に、会う側が子どもたちに毎回高価な物を与える、事前の連絡なく急に会いに来るといった行動を取る場合には、「高価な贈り物は誕生日とクリスマスに限る。」、「日時、場所、方法等については、面会交流日の2週間前までに連絡をする。」といった取決めを追加することも考えられます。
一度うまくいかなかったことも踏まえ、一般的な取決めに捉われず具体的事案に即した取決めをすることが大切です。
裁判所を用いた履行確保
面会交流調停が成立したにも関わらず子どもに会わせてもらえない場合等に、裁判所を利用して義務者の履行を確保する手段があります。
1つ目は、履行勧告(家事法289条、290条)という方法で、裁判所が義務者に対して調停で合意した内容をきちんと履行するよう勧告する方法です。
簡単に言うと、裁判所が「ちゃんと面会交流調停の取決めを守るように!」と注意をしてくれるという制度です。
この履行勧告は裁判所からの注意という点で一定の効果がありますが、任意の履行を促すものであり、相手方が裁判所からの注意を無視した場合にそれ以上の強制力はないことに注意が必要です。
2つ目は、間接強制という方法で、裁判所が義務者に対して義務の履行を命令し、これに従わなかった場合は金銭の支払いを命じることにより、義務者に心理的な強制を加え、義務を履行させようとする方法です。
簡単に言うと、裁判所が「面会交流をさせなかったら1回につき○円支払いなさい!」と命じることで、心理的な強制を与え、それでも義務を履行しなければ金銭回収ができるという制度です。
なお、この間接強制の手段を用いるためには、調停条項の内容が「特定の」「給付義務」であることを要するため、その条件を満たした調停条項となるようにしなければなりません。
間接強制の詳細は以下ページをご覧ください。
自分が取決めを守れない場合
調停時にはきちんと取決めを守るつもりがあったけれど、後に事情が変わって取決めを守れなくなるということもあると思います。
特に、調停での取決めをあまり詳細にし過ぎてしまうと後の事情の変化に柔軟に対応できないことが少なくありません。
例えば、「毎月第1土曜日9時から16時まで〇〇市内にて面会交流を行う。」旨の取決めをしていた場合、会う側が県外に転勤になり朝9時からは会えなくなる(9時に会うためには前泊を必要とし負担が大きくなる。)といったケースや、会わせる側が子どもの習い事により土曜日の面会交流が難しくなるといったケースが考えられます。
一度取り決めた内容を変更するという背景には様々な事情があり、変更する側にとっては正当な理由であると感じる場合がほとんどだと思います。
しかしながら、どんなに正当な理由であっても、調停で取り決めた内容を相手方の了承を得ずに一方的に変更することは望ましくありません。
今後の面会交流を円滑に行うために、会う側、会わせる側のどちらの立場であっても自分側の事情で相手方に変更をお願いするという姿勢を忘れず、まずは話合いの場を設けることをお勧めします。
また、相手方が調停内容に拘って話合いによる解決が望めない場合にも、一方的に面会交流の実施方法を変更するのではなく、弁護士を通した話合いを行ったり再度調停をしたりといった手段をとりましょう。
面会交流の取決めに縛られないで
会う側・会わせる側のどちらの立場であっても面会交流調停で取り決めたルールを守るということは大切なことです。
しかしながら、一番大事なことは、面会交流によって子どもが日頃会えない親との交流を深め、その交流をしっかりと続けていくことだと思います。
そのため、仮にどちらかの親が面会交流調停で取り決めたルールを破っていても、子どもに大した影響がない場合や、むしろ子どもにとっては有益だったと考えられる場合には、取決めに捉われず柔軟に現状を受け入れてみてはどうでしょうか。
例えば、相手方が約束の時間を少し守らなかったとします。
それだけであれば子どもに大きな影響はありませんが、約束を破られた親が激怒してしまうと子どもは安心して面会交流を行うことができなくなってしまいます。
また、調停での取決めでは相手方に運動会の参加を禁止していたというケースで、相手方が取決めを破り運動会を見に来ていたとしても、子どもがとても喜んでいたというような場合には、今後は運動会への参加を許す方が子どもにとっては有益だと考えられます。
面会交流の取決めが必要な事案の多くは、父母間で感情的な対立があり、相手方が取決めを守らないことは実際の違反の程度よりもとても大きな問題であると感じてしまいがちです。
面会交流は、自分にとっては大嫌いな配偶者と関わりをもたなければいけない面倒な時間であっても、子どもにとっては大好きなお父さん、お母さんと会える貴重な時間になります。
そのため、まずは双方が調停での取決めを守ることが大切ですが、仮に取決めを守らない・守れないことがあっても、子どものために柔軟な解決を模索してみるのはいかがでしょうか。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?