親権争いではどちらが有利ですか?離婚に強い弁護士が解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

親権争いでは、子どもが小さい場合、原則として、母親が有利です。

しかし、これまでの監護実績や子ども自身の意思などの諸事情も考慮し、父親が親権を取るケースもあります

親権は、子供の将来に重大な影響を及ぼします。

ここでは、親権の判断基準、親権を勝ち取るポイントなどについて、離婚に強い弁護士が解説しています。

ぜひ参考になさってください。

親権についての裁判所の判断基準

子ども日本では、現状として、共同親権が認められていません。

今後、改正される可能性はありますが、現段階では、離婚の際、未成年の子がいれば、いずれかの親を親権者として指定しなければなりません。

特に子どもが小さい場合、親権について争いとなることが多く、協議が調停段階でも解決しない場合、最終的裁判で親権者を決めることとなります。

親権者の判断基準については、法律に具体的な基準は明記されていません。

過去の裁判例を見ると、裁判所が親権者を決める際の判断基準として、以下のような要素を総合考慮して判断しているようです。

父母の事情
  • 監護に対する意欲、子に対する愛情の程度監護能力
  • 健康状態
  • 経済的な状況
  • 居住・教育環境
  • 親族や友人等の援助の可能性など
子どもの事情
  • 年齢
  • 性別
  • 兄弟姉妹の関係
  • 心身の発育状況
  • 子ども本人の意向など

子どもの年齢が高い事案では、子どもが意向を尊重する傾向にあります。

特に、子どもが15歳以上の場合、子どもの意向を聞くことが法律上の義務となっています(家事手続法152条2項)。

弁護士裁判所に提出する陳述書については当事務所のホームページからダウンロードが可能です。

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また、10歳以上になってくると、子どもの意向もある程度尊重される傾向にあります。

したがって、10歳程度の子どもが、明確に親権者の希望を言える場合、親権者はその希望どおりとなる可能性が高いと考えます。

ただ、子どもが幼い場合、多くの事案では、そこまではっきりとした希望がない場合が多い傾向です。

多くの事案では、子どもは父親、母親の両方が大好きであり、そのいずれかを選ぶことができないからです。

その場合、需要となるのは、これまでの監護実績です。

どちらが子どもの育児に献身的だったかで、親権者が決まるというのが実務上の感覚です。

主たる監護者がいずれであったか

  食事を作っていたのはどちらか?
  食事を食べさせていたのはどちらか?
  健康管理をしていたのはどちらか?
  風呂に入っていたのはどちらか?
  一緒に就寝していたのはどちらか?
  学校行事に参加していたのはどちらか?
  学校まで送迎していたのはどちらか?

上記の項目などを基に、主たる監護者がいずれであったかが認定される傾向です。

そして、主たる監護者だったと認定されると、他に特段の事情がない限り、親権者になる可能性が高いと思われます。

 

 

親権を取得する場合の問題点

親権を取得する場合、共通した傾向が見られます。

以下、親権を取得する場合の問題点について解説するのでご参考にされてください。

 

問題点① 監護実績の立証が難しい

上記のように、親権者の判断においては、これまでの監護実績が重要となります。

しかし、監護実績は、立証が簡単ではないという問題があります。

例えば、一方が「自分のほうが積極的に育児を行っていた。」と主張したとします。

相手方が認めてくれれば良いのですが、親権の争いの場面では、相手方も必死になるため、事実を曲げて主張することが往々にしてあります。

そして、相手方も「自分のほうが積極的だった。」と主張すると、裁判所はいずれの言い分が真実なのか、証拠によって認定しなければなりません。

ところが、「積極的に育児に関与していた」という立証は決して簡単ではないでしょう。

そのため、真実を認めてもらうことができずに、親権を取れないという可能性もあります。

 

問題点② 子どもの意向を伝えることが難しい

子どもが「お父さんと一緒に暮らしたい」と希望していても、それを裁判所に伝える方法が限られています。

上記のとおり、15歳以上であれば、子どもの意向を聞くことが法律上の義務となっておりますが、15歳未満の場合はそのような義務がありません。

そのため、子どもが一緒に生活することを希望していても、それを裁判所に伝えることが難しいという問題があります。

例えば、稀に、子どもに、家庭裁判所宛に陳述書を書いてもらい、それを証拠として提出する方を見受けます。

しかし、子どもの年齢が低い場合、子どもが板挟みになるので、止めるべきです。

また、裁判官は、そのような陳述書を証拠として重視しないと思われるからです。

 

親権を裁判で勝ち取るポイント

上記の親権を取得する場合の問題点を踏まえて、親権を裁判で勝ち取るポイントについて解説いたします。

親権は、「取得したい」を強く願っても、それだけでは裁判所の判断を変えることは不可能です。

大切なのは、「実際に行動すること」です。

とはいっても、何をしたらよいかわからない、という方が多いと思われます・

まず、上記で解説した親権者を決める判断基準の中で、自分の力で対応が可能なものと、動かしがたいものを選別してみましょう。

判断基準 対応可能性 説明
父母の事情 監護に対する意欲、子に対する愛情の程度
監護能力
健康状態 × 子育てに影響があるほどの健康状態の問題を改善するのは難しい
経済的な状況 × 経済状況を改善させることは基本的には困難
居住・教育環境
親族や友人等の援助の可能性など 適当な監護補助者がいれば援助をお願いできる
子どもの事情 年齢 ×
性別 ×
兄弟姉妹の関係 × 兄弟姉妹の関係を操作することは困難
心身の発育状況 ×
子ども本人の意向など 長年月をかけて醸成していく必要があるため容易ではない

判断基準を整理してみると、監護に対する意欲、子に対する愛情の程度、監護能力、居住・教育環境、親族等のサポートについては、自分の力でなんとかできる可能性があります。

また、子供本人の意向については、様々な取り組みの結果であって、まずは行動が必要といえるでしょう。

では、具体的にはどのような取り組みを行えばよいでしょうか。

以下、取り組みの例を上げるので参考にされてください。

ただし、具体的な状況によって最適な取り組みは異なりますので、詳しくは専門家にご相談されることをお勧めいたします。

POINT①子供とのコミュニケーションの量・質を高める

子供と遊ぶお父さん上記のとおり、裁判所は、親権を決める際の判断基準として、「監護に対する意欲」や「子に対する愛情の程度」を考慮しますが、これらは精神論であって、目で見ることはできません。

意欲や愛情を感じてもらうためには、それを具体的に主張しなければなりません。そのための取り組みとしては以下のものがあげられます。

子供と一緒に過ごす時間を作る

できるだけ子供と一緒に過ごす時間を作ることが重要です。
例えば、父母で親権争いとなっているとき、父は1日平均30分程度しか子供と一緒にいる時間がないのに対して、母親は1日平均5時間一緒にいる場合(就寝時間を除く)、母親側が有利といえます。
「子供と一緒に過ごす時間」は、具体的であって、量的な基準での優位性は、親権の判断において、有利になると考えられます。

子供と積極的に会話する

子供との絆を深めるためには、会話は重要です。
会話を通して子供の関心、価値観、不安なことなどを知ることにも繋がります。
親の意見を押し付けるのではなく、子供のことを知ろうとする姿勢が大切です。
また、子供の悩みや相談に対して、子供の年齢に応じたアドバイスをしてあげるようにしましょう。
子供との関わり方については、自信がない方は、子育てについてのカウンセリングなどを受けながら、試してみてください。
なお、フルタイムの社員として仕事をされている方は、時間の制約上、子供と一緒に過ごす時間をどうしても確保できないと思われます。
量的なもので有利に立てない場合、質で上回るしかなく、そのために積極的な会話は有効となります。

 

POINT②子育ての実績を積み上げる

父子上記のとおり、裁判所は、親権を決める際の判断基準として、「監護能力」を考慮しますが、能力を目で見ることはできません。

監護能力が優れていると判断してもらうためには、それを具体的に主張しなければなりません。そのための取り組みとしては以下のものがあげられます。

子供の食事を作る

栄養の摂取は子供の健やかな成長のために非常に重要です。
そのため、日常において、食事を作っていると、監護能力が高いと判断される可能性があります。
また、「惣菜を与える」ではなく、栄養のバランスが取れた手作りの食事を作ることが大切です。

学校行事に参加する

子供が保育所、幼稚園、小中学校に通っている場合、その発表会、運動会、授業参観などには積極的に参加することが重要です。
子供との絆を深めることにも役立ちますが、裁判において、主たる監護者であったという判断に影響を及ぼす可能性があります。
なお、裁判で親権を争うと、調査官による調査が実施される可能性があります。
調査官は、ケースによっては、子供が通学する学校等に行って担任等からヒアリングすることがあります。そのため、担任等には学校行事にも積極的に参加しているとの認識を持ってもらうことが大切です。

子供の健康管理を行う

子供の健康管理を行っている実績があれば、監護能力は高いと判断される可能性があります。
健康管理とは、具体的には、子供が病気をしたら病院に連れて行ってあげたり、予防接種の注射を射ちに連れていったりすることです。
また、もし子供のアレルギーや既往症についても正確に把握しておくことも必要です。

子供を風呂に入れる

子供の年齢にもよりますが、子供が小さい場合は風呂に入れてあげたりする役割を担っていると、監護実績にプラスに影響すると考えられます。

子供と同じ部屋で就寝する

子供を寝かしつけたりするのも子の監護の一つと言えます。
自分だけ別の部屋で就寝して、相手と子供が一緒に就寝している状況だと親権を判断する上で不利になる可能性があります。

 

POINT③子育ての証拠を残しておく

「子育ての実績」について、上記であげたように具体的に主張することが必要です。

しかし、親権を裁判で争うと、当方の主張を相手が否認することがあります。

例えば、自分が子供の食事を作ったり、健康管理をしていた、などと主張しても、相手がそれを否定することが考えられます。

執筆者の主観となりますが、子の奪い合いの場合、相手も親権となるので、平気で嘘をつくケースが見受けられます。

したがって、親権を裁判で争う場合、具体的な主張に加え、「子育ての証拠」を残しておくことがポイントとなります。

例えば、次のようなものが考えられます。

母子健康手帳

子供がまだ小さい場合、母子健康手帳があるかと思われます。
母子健康手帳に、子供の健康状況等についてメモを記載しておくと、きめ細やかな監護を行っていると判断される可能性があります。
なお、この母子健康手帳は、子供の健康状況を確認するために、家裁の調査官も提出を求めてくる資料です。

育児日記等

子供の成長過程を日記等に記録するというものです。
例えば、小さい子どもの場合、体温・体調・食事の内容等について記録されている方もいます。

SNS等の利用

最近では、FacebookやmixiなどのSNSやブログを利用して、監護実績を記録する方もいます。
監護日記を主目的とする場合、非公開設定か、又は、一部の知人に限定して公開するとよいでしょう。

 

POINT④監護補助者の協力を得ることができる体制をつくる

孫をあやす祖母子供が小さい場合で、かつ、ご自身が正社員などで子育てにあてる時間が短い場合、監護補助者の協力は必要不可欠となってきます。

監護補助者としては、自分の母親(子供の祖母)が多く、その他としては、父親(子供の祖父)、兄弟姉妹等の親族、知人が考えられます。

監護補助者は、できれば同居してもらいましょう。同居できない場合、自宅の側で生活する方法もありますが、小さい子どもの場合は、補助能力にやや疑問があります。

なお、監護補助できる体制をつくるために、遠方に住んでいた両親を呼び寄せて一緒に生活するケースもあります。

 

POINT⑤相手が親権者としてふさわしくないことを示す証拠を残す

悲しむ子ども相手が親権者として不適格であれば、裁判において親権を勝ち取れる可能性があります。

例えば、相手が重度の精神病で子育てに支障がある、子供に虐待を行っている、などが考えられます。

ポイントとなるのは、このような事情について、「立証できる」ことです。

子の奪い合いでは、必死になるあまり、平気で嘘をつく可能性があります。相手の問題点を指摘しても、相手から否認されると、立証しなければ、裁判所は当該問題点を認めてくれません。

そのため、立証の可否がポイントとなります。

重度の精神病の立証

これについては、診断書やカルテが証拠として考えられます。
しかし、医療機関は、個人情報であることを理由に、本人以外の開示はしない可能性があります。
そのため、まずは本人に開示を求めるとよいでしょう。
本人が開示しない場合、裁判所を通じて開示を求める方法もあります。

子供への虐待

子供に対して虐待を受けているケースにおいて、配偶者暴力相談支援センター、警察やスクールカウンセングに相談した過去がある場合、そのときの記録を提出する方法があります。
また、子供自身が虐待を理由として相手との接触を強く拒否していれば、家裁の調査官調査によって、相手が親権者としふさわしくない旨の調査報告書が作成されると思われます。

 

 

親権争いにかかる費用

親権争いに限らず、離婚問題を弁護士に依頼する場合、弁護士費用が必要となります。

弁護士費用は大きく分けて、着手金と報酬金があります。

着手金は依頼時に支払う弁護士費用で、報酬金は終了時に支払う弁護士費用です。

弁護士費用は現在、自由化されており、事務所によって異なります

また、親権争いを協議で行うのか、調停で行うのか、裁判で行うのかによっても金額が異なります。

およその相場としては、以下の金額となります。

詳しくは依頼を検討している事務所に相談の上、見積もりをもらうと良いでしょう。

依頼内容 着手金の相場 報酬金の相場
協議の依頼 20万円から50万円 20万円から50万円
調停の依頼 20万円から50万円 20万円から50万円
裁判の依頼 30万円から50万円 30万円から50万円

参考:離婚の弁護士費用の相場とは?費用の内訳や依頼時の注意点

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親権争いについてのQ&A

ここでは、親権争いに関してよくご質問を受ける内容について、ご紹介しています。

親権争いには何年くらいかかる?

親権争いのケースは、争いがないケースと比べると長期間を要する傾向です。

これは、話し合いでは解決できないことが多いためです。

調停から裁判まで行うと、およそ1年から2年を要すると思われます。

弁護士のスタンスによっては、親権争いをスピーディーに解決できるケースもあります。

くわしくは離婚に強い弁護士に相談なさると良いでしょう。

 

父親が親権が取れない理由は何ですか?

多くの事案では、監護実績がネックとなります。

父親は仕事が忙しく、母親が主たる監護者となっている場合が多く、このようなケースでは母親が有利となります。

 

 

まとめ

親権を裁判で勝ち取るためには、上記であげた判断基準を押さえて、まずは現状を分析することが必要です。

そして、ご自身の強みと弱みを理解した上で、具体的な行動方針を策定します。

当事務所では、親権に関して、詳細な解説ページを掲載しています。

判断基準についての詳しい解説、親権取得のための留意点等についての情報を掲載しているので、ぜひこちらをごらんください。

 

 

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