退職金を含む財産分与を獲得して熟年離婚した妻Sさん
世帯年収:1000万円
解決方法:調停
子どもあり (3人(成人))
離婚を切り出した
相手:会社員
サポート無 | サポート有 | 利益 | |
---|---|---|---|
慰謝料 | 0円 | 1000万円 | 1000万円 |
財産分与 | 200万円 | 900万円 | 700万円 |
婚姻費用 | 月額10万円 | 月額14万円 | 月額4万円 |
年金分割 | 50% | 50% | – |
Sさんは、夫と昭和62年に結婚し、その後3人の子どもを授かりました。子どもは皆成人し自立していました。
夫は平成18年に他県に転勤し、単身赴任となりました。
ところが、夫は、平成23年ころからAという浮気相手の女性と同棲するようになりました。
夫は、平成24年に自宅のある福岡県(大牟田市内)に転勤となりましたが、家には戻らず、別のマンションを借りて、Aとの同棲を続けました。
平成26年3月、夫は離婚調停を申し立ててきました。
困ったSさんは、今後の対応について、当事務所に相談にきました。
Sさんは、相談において、まだ離婚はしたくないとの意向を持っていました。
弁護士がSさんに離婚したくない理由をうかがうと、夫への愛情ではなく、「離婚後の生活費不安がある」と言うのです。
そこで、弁護士は、まず、離婚後の生活への不安がないように今後の生活設計についてアドバイスをしました。
すると、Sさんは、離婚に前向きになりました。そして、夫や不貞相手から正当な賠償金を獲得したいというお気持ちに変わりました。
弁護士は、調停対応で受任し、裁判所へ出廷しました。
また、Aに対しては、内容証明郵便を送り、慰謝料として500万円を請求しました。
当初、夫側は、財産分与を行う代わりに慰謝料は支払わないなどと主張しました。
これに対し、弁護士は、Sさんの生活補償の必要性、夫や相手女性の悪質性等について訴えました。
調停において、粘り強く交渉した結果、4回目の調停で、慰謝料1000万円(まず、一括払いとして300万円、その後生活支援金名目で月額10万円を70回に分けて支払う。)の条件で、離婚が成立しました。
調停において、夫側に財産開示を求めました。
その結果、夫には、預貯金180万円、自社株200万円があることがわかりました。
妻の方には、預貯金20万円の財産がありました。
夫側の弁護士は、夫婦の対象財産が400万円であることから、その2分の1である200万円を分与するとの主張をしました。
夫側(預貯金180万円 + 自社株200万円)+妻側(預貯金20万円)= 400万円
400万円 × 1/2 = 200万円
これに対して、当事務所の弁護士は、夫が会社員であり、退職金も財産分与の対象となると主張し、退職金の開示を求めました。
その結果、夫は、現時点で退職すると1400万円の退職金が支給されることが判明しました。
そこで、弁護士は、将来(10年後)、退職することを条件として、2分の1である700万円の分与も求めました。
夫側は抵抗しましたが、過去の裁判例等を主張し、粘り強い交渉の結果、妻は離婚時に200万円、夫が退職する10年後に700万円の財産分与を受けるという条件で離婚が成立しました。
弁護士は、調停対応を含めて夫との交渉を受任しました。
まず、弁護士は、Sさんの生活を安定させるために、夫に対して、婚姻費用を請求するとともに、適正額の算定のために収入の証明資料の開示を求めました。
これに対して、夫にも弁護士がつき、夫の弁護士は、月額10万円を支払うと提示してきました。
しかし、本件では、夫が不貞行為をしているという事情があったので、夫の対応を非難すると共に、増額を要求し、粘り強く交渉しました。
交渉の結果、月額14万円で合意書を締結しました。
弁護士は、まず、離婚後の生活への不安がないように、老後は年金分割を行うことによって収入を確保できることや賠償金の獲得の見込みについて、説明しました。
すると、Sさんは、離婚に前向きになり、年金分割を請求したいというお気持ちになりました。
調停での交渉の結果、妻は年金分割50パーセントのほかに、高額の賠償金や財産分与を獲得しました。
夫に対する愛情がない場合は、早期の離婚を検討すべきです。
なぜなら、多くの場合、離婚に応じた方が妻側の経済的利益を最大化でき、反対に今後の生活は豊かになるからです。
まず、Sさんには、早期離婚のメリット、離婚に応じない場合のデメリットについて、ていねいに説明することで、離婚に前向きになってもらいました。
実際に、本件では、離婚の交渉の結果、慰謝料(生活支援金を含む。)として1000万円もの高額な賠償金を獲得できています。
通常、慰謝料の相場は200万円から300万円と言われています。
本件でも離婚に応じ場合、数年後に訴訟を提起されると、別居から長期間が経過するため離婚判決が出されたと予想されます。
その場合、慰謝料はせいぜい300万円程度であったと思われます。
1000万円もの高額な賠償金は、妻側が有利に立てる現在だからこそ、主張し、獲得できたのです。
財産分与において、退職金については対象となるか否かが争点となることがよくあります。
すなわち、退職金は、あくまで将来退職時に受け取ることが予定されているものであり、現在存在しているわけではないからです。
また、会社の倒産、懲戒解雇なども可能性がゼロではないため、退職までの年月が長ければ長いほど、対象財産とするのは厳しくなります。
しかし、本件は、不貞行為を行った、いわゆる有責配偶者である夫が被害者である妻に対して、一方的に離婚を求めている事案です。
しかも、別居期間が長期間経過していなかったことから妻の交渉力は強く、主導的に夫に対して離婚条件を提示できました。
また、相手方を説得するための判例等を示すことで、夫の主張を断念させ、有利な条件で成立させることができました。
婚姻費用の算定は、法律(条文)上、一切の事情が考慮されるべきですが、家裁の実務は双方の年収で決定されることがほとんどです。
本件では、夫の年収と妻に稼働能力があることからすると、相場としては月額12万円程度の見込みでした。
それを上まわる額で合意できたのは、後の離婚条件の協議に大きな影響を与えました。
なぜなら、夫は離婚が成立しなければ、継続的に月額14万円を支払っていかなければならなくなるからです。
本件では、この婚姻費用の合意を締結できたことが、後の離婚条件である慰謝料1000万円(生活支援金700万円を含む。)の合意に大きな影響を与えといえます。
熟年離婚の場合、離婚後の生活に不安を抱き、離婚に踏み出すことができない方が多くいらっしゃいます。
しかし、熟年離婚の場合、年金分割を行うことによって、老後も安定的な収入を得ることが可能となる場合があります。
そこで、年金分割の制度やそのほかの見込みについて説明し、離婚に前向きになってもらいました。
なお、当事務所では、離婚を迷われている方で、夫への愛情がある方に対しては、夫婦関係修復のためのカウンセリングも行っております。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?
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