話を聞かないモラハラ夫から財産を獲得して離婚できた事例
世帯年収:800万円
婚姻期間:約27年
解決方法:協議
子どもあり (息子2人)
離婚を求められた
相手:50代会社員
サポート無 | サポート有 | 増額利益 | |
---|---|---|---|
離婚 | 不成立 | 成立 | - |
財産分与 | 約240万円 | 750万円 | 約510万円 |
年金分割 | なし | 50% | 50% |
婚姻費用 | 月額6万円 | 月額12万円 | 月額6万円 |
単身赴任の夫から突然離婚を申し入れられたHさん
Hさんは、平成3年に夫と結婚し、2人の息子に恵まれました。
しかしながら、平成12年頃から夫は単身赴任となり、Hさんと夫は別居の状態が続いていました。
そして、平成29年に入ると、夫はHさんに対し突然離婚を申し入れました。
Hさんは、夫と事実上別居状態であったとはいえ、子どもの世話を一手に引き受け、家計の管理をしたり、夫が帰省する際には身の回りの世話をしたりする等、夫との関係を良好に保つ努力をしており、夫からの離婚の要求をすぐに受け入れることは出来ませんでした。
しかしながら、夫は離婚を切り出した後、1年後には自宅から出て行くよう強く要求してきており、自宅売却の準備を進めると言ってHさんの話を聞いてはくれませんでした。
また、夫は、離婚条件として、離婚後2年間Hさんの生活費として月額10万円程度の援助をするか、家が売れたらその売却費用を分けるかのどちらかしか応じないとの頑な姿勢を貫いていました。
Hさんとしては、夫が強く離婚を希望すると言っている以上、婚姻関係を継続していくことは困難なため離婚も考えざるをえないとは思っていましたが、離婚条件には納得していませんでした。
しかしながら、どのような離婚条件が適切か自分では判断しかねたため、弊所の離婚専門弁護士に離婚協議の依頼をされました。
弁護士に依頼したことで、妻の話を聞かない夫と離婚成立
まず、弁護士は夫に対し通知書を送りました。
その内容は、離婚協議については窓口を全て弁護士としHさんには連絡をしないこと、Hさんは離婚を望んでおらず仮に離婚に応じるとしても適切な条件ではないと応じられないこと、離婚までの間ちゃんと婚姻費用を支払ってほしいということ等です。
夫は、Hさんが弁護士に依頼したことについて当初は不満そうな態度を示していたものの、弁護士が夫の話にも耳を傾け、また夫が希望する諸契約の解約手続等に迅速に対応をすることで、こちら側の要求にも出来る限り応えようとの姿勢をみせるようになりました。
そのため、退職金の試算書や保険の解約返戻金の試算書等財産分与のために必要な財産資料の開示にも問題なく協力をしてくれ、スムーズに財産分与手続きをすることが出来ました。
また、夫は、婚姻費用について、当初は生活に必要な金額である月額6万円という金額しか払わない旨主張していましたが、婚姻費用の適正額を根気良く説明することで適正額の支払いに応じてくれるようになりました。
最終的に、Hさんは、月額12万円の婚姻費用をもらいつつ当初相手方が提示してきた金額の倍以上の条件で夫との離婚を成立させることが出来ました。
解説
本件のメインの争点について解説します。
財産分与について
財産分与とは、夫婦が婚姻期間に築いた財産を半分にするという制度です。
財産分与対象財産は、夫婦どちらの名義であるかを問いませんし、預金や不動産のみに限らず、将来もらう予定の退職金や保険の解約返戻金等も含まれます。
本事例では、夫がHさんに対し、離婚条件として、離婚後2年間Hさんの生活費として月額10万円程度の援助をするか、家が売れたらその売却費用を分けるかの2つの提案をしていました。
しかしながら、それらの条件において夫の退職金や保険の解約返戻金等が一切考慮されておらず、いずれもHさんに不利益な条件でした。
夫が意図的に財産分与額を低く抑えていた可能性もありますが、そもそもどのような財産が財産分与の対象となるか当事者双方ともよく分かっていないというケースも少なくありません。
また、財産分与対象財産に不動産が含まれる場合は財産分与が複雑になる場合もありますので、財産分与に悩まれたときは弁護士に相談することをお勧めします。
慰謝料について
夫はHさんの話を全く聞かなかったり、Hさんを自分の思い通りにしようとしたりする等多少モラハラ傾向がありました。
そのため、Hさんは、夫に対し慰謝料を請求することも考えておられました。
「モラハラ」という言葉は、かつてに比べれば非常に知られたものとなっています。
しかし、不貞や身体的暴力と違い、目に見えないものであるため、モラハラを理由とした慰謝料が認められることはまだまだ難しいというのが現状です。
また、価値観の相違や性格の不一致による夫婦間のミスマッチに起因することも多く、夫の言動が、慰謝料として金銭の支払義務を法的に発生させるほどのものと考えるのはハードルが高いケースが多いです(もちろん、モラハラにしろ価値観や性格の問題にしろ、一緒にいて苦痛と感じるのであれば、婚姻関係を継続することは難しいことに変わりはありません。)。
Hさんの話を詳細に聞くと、裁判で慰謝料が認められるような程度のモラハラはありませんでした。
また、モラハラ加害者は基本的にモラハラをしているという認識がないため、夫はモラハラを理由とする慰謝料請求に応じない可能性が高く、それどころか不当な要求をされたと感情的になってしまい財産分与等の交渉に悪影響が出る可能性がありました。
そこで、本事例においては慰謝料名目の請求はせず、早期解決に応じる代わりに少し多めに財産分与をしてほしいとの要求をすることにしました。
その結果、夫がこちら側の要求を受け入れる形で解決をすることが出来ました。
婚姻費用について
婚姻費用とは、いわゆる生活費にあたるものであり、原則として、別居後離婚までの間に発生する費用になります。
婚姻費用については、支払う側が、「勝手に出て行ったのだから婚姻費用は払わない。」、「実家で暮らしているからそんなに生活費はかからないはずだ。」という主張をする場合もありますし、もらう側がそのように思い込んで婚姻費用の請求をしていないということもあります。
しかしながら、婚姻費用は双方の収入を踏まえ適正額が算出されるのであり、実際にいくら生活費がかかっているかは基本的に関係ありません。
もっとも、子どもが私立学校に通っている場合やローンの支払がある場合等については、婚姻費用の適正額を決めるにあたりそれらの事情も考慮されることになります。
本事例においても、相手方が負担している住宅ローンの金額を踏まえた上で婚姻費用の適正額を算出しています。
なお、もし子どもが私立学校に通っている場合、中学生以下の子であれば年間学費13万1379円、高校生以上の子であれば年間学費25万9342円を超えるのであれば、金額が加算されることがあります。
これは、婚姻費用の適正額を算定する計算式が、国公立学校の学費しか前提とされていないためです。
ですので、上記金額を超える学費の負担が必要な場合は、これを考える必要があります。
結論として、婚姻費用の金額が上がる可能性があります。
ちなみに、上記のような考慮は、子どもが保育園、幼稚園に通う未就学児であった場合にも適用されることがあります。
年間負担額が13万1379円を超えるかどうか確認しておくことが重要です。
婚姻費用について少しでも悩まれた方は、安易にご自身で判断をしてしまわず、是非一度弁護士にご相談ください。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?
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