酒癖が悪い相手と離婚できる?離婚を成立させた妻Jさんの事例
世帯年収:600万円
婚姻期間:6年
解決方法:調停
子どもあり (1人)
離婚を求められた
相手:40代会社員
サポート無 | サポート有 | 利益 | |
---|---|---|---|
離婚 | 不成立 | 成立 | – |
財産分与 | 自宅の残ローン支払う | 分与しない | 残ローン相当額減額 |
慰謝料 | 100万円支払う | 0円 | 100万円減額 |
婚姻費用 | 月額10万円 | 月額13万円と 未払分を支払う |
月額3万円増額 |
酒癖が悪い夫との離婚を希望していたJさん
Jさんは、平成26年に夫と結婚しました。
ところが、夫は酒癖が悪く、泥酔した状況でまだ産まれたばかりのお子さんを抱きかかえるなど、Jさんからすればひやひやすることが非常にたくさんありました。
注意してもそういった夫の行動がなくなることはありませんでした。
出産の前後から、夫の心無い行動が続いており、Jさんは初めての妊娠出産期に大きな精神的負担をかかえながら過ごす毎日を送っていました。
Jさんは自分の言い分を夫に伝えることもありましたが、夫の対応は無言になるというもので、なかなか話し合いが進まない状況が続いていました。
自宅購入の話が出た際も、Jさんは反対したものの、夫はそれを押し切って自宅購入に踏み切ってしまいました。
そうして、大きなローンが残っている状態で、Jさんは夫との生活に耐えきれず、別居を開始しました。
そのような折、夫は弁護士を立て、離婚調停と面会交流調停を申し立ててきました。
これに対し、Jさんは婚姻費用分担請求調停を申し立てました。
その後、Jさんは、今後の対応のため当事務所の弁護士に相談しました。
弁護士はまず、Jさんの代理人として、夫の代理人弁護士に受任通知を送付するとともに、調停手続きの対応を始めていきました。
婚姻費用分担請求調停
まずはJさんの生活費を確保する必要があったので、婚姻費用の確定を先行させました。
夫の方は、自身が住宅ローンを負担していることを理由に婚姻費用の減額を求めてきました。
もっとも、Jさんはすでに同居宅を出ていましたので、住宅ローンを理由に婚姻費用を減額されるいわれはありません。
夫の請求額は終始算定表の金額より低い額で譲らなかったため、婚姻費用に関する調停は不成立となり、審判手続きに移行しました。
この審判では、夫の主張はすべて退けられ、Jさんの言い分通りの金額が認められました。
その後、夫側は不服を申立て、婚姻費用の件は高等裁判所の判断に委ねられましたが、それでも夫の言い分は通らず、Jさんの言い分を前提とする判断が維持され、確定しました。
離婚調停
一方、離婚調停の方では、夫が最後まで親権を譲りませんでした。
その結果、離婚調停は不成立となって終了しました。
夫側は、その後すぐに離婚訴訟を申し立ててきました。
もちろん自身の親権を主張してきました。
訴訟手続きの中で、親権者としての適格性を判断するため、調査官による調査が実施されました。
調査報告書には、母の監護態勢に問題はないということが記載され、結果的に親権者としての適格性はJさんの方にあるという趣旨の判断を得ることができました。
これに対して、夫は、さらに争う姿勢を見せ始め、調査会社に依頼してJさんの素行調査を行っていたことがわかりました。
もちろん、Jさんは問題行動を行っているわけもありませんでしたので、結論に影響が出ることはまったくありませんでした。
Jさんの離婚訴訟は本人尋問まで進みましたが、尋問後の裁判官の説得もあり、Jさんが親権者、算定表上も問題のない養育費の支払いを前提として和解することができました。
購入した自宅のローンも、Jさんが負担することはなくなりました。
解説
本件のメインの争点について解説します。
親権について
親権者としての適格性は、過去の監護実績によって決せられることになります。
結果として母親側が親権者と判断されることが多いのは、出産後の育児に関わる時間が、母親の方が圧倒的に多いことによります。
「監護」というのは、食事を準備する、食事を与える、オムツを替える、お風呂に入れる、寝かしつけをする、病気になれば病院に連れて行く、お子さんが就園時以降の年齢であれば、連絡帳のやり取りを行うこと、まさにお子さんの生活すべてを担っていくことです。
これだけのことを、フルタイムで働く夫が行うことは通常不可能です。
本事案でも、Jさんがお子さんの面倒をずっと見てきました。
もちろん、夫は別居をきっかけにお子さんと離れて暮らすことに納得がいかなかったわけですが、その点については面会交流を実施することで対応をしてきました。
その結果、調査報告書にはJさんに有利な記載がなされることになりました。
親権について争いが生じた場合、裁判所は調査官による調査を実施することが多くあります。
裁判官は、調査報告書の記載に基づいて判断をするため、基本的に調査報告書の内容が結論を決めるといえます。
婚姻費用について
本事案では、婚姻費用についても争いが長く続きました。
自宅を購入した夫婦の場合、夫には住宅ローンが重くのしかかります。
そのため、夫が住宅ローンを負担している自宅に妻が居住しているような場合であれば、実質的に夫が妻の住居費を負担しているということになりますので、婚姻費用算定において考慮されることがあります。
他方、住宅ローンを支払うという行為は、ゆくゆくは支払った者の資産になります。
つまり、離婚した後もローンを払い続けることにより、夫は自分の資産を得ることになるわけです。
もし、妻が自宅をすでに出てしまっているとなれば、ローンの支払いは夫の財産になり得るだけで、妻は何の利益も享受しません。
ですので、どれだけ高額の住宅ローンを夫が負担していたとしても、その自宅に妻が居住していないのであれば、婚姻費用を減額されることはありません。
「支払いが大変である」という理由はもってのほかです。
本事案では、そういったJさんの主張が採用された結果、夫の主張はすべて退けられることとなりました。
婚姻費用について、詳しくは以下もご覧ください。
婚姻費用と住宅ローンの関係については、以下もご覧ください。
財産分与について
財産分与は、同居期間中に夫婦で築いた財産を折半するものです。
住宅を購入した場合、財産分与にて評価される住宅の価値は、「時価―残ローン額」にて評価されます。
残ローンの額が多い場合(いわゆる「オーバーローン」)、その半分を妻も支払うべきという判断がなされることは基本的にありません。
実務上、積極財産(プラス財産)がある場合には財産分与請求が認められていますが、消極財産(マイナス財産)しかない場合や、積極財産から消極財産を控除した結果、プラスとならない場合には清算的財産分与請求権は生じないとされているからです。
なお、清算的財産分与の対象財産がない場合でも、当事者間で債務の負担割合について合意をすることは可能です。
そのため、多少金銭的な負担をしても早く離婚を成立させたいといった場合には、債務の負担割合についても交渉の対象とするとよいでしょう。
離婚問題については、当事務所の離婚弁護士まで、お気軽にご相談ください。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?
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