元妻から請求された高額な慰謝料を大幅に減額した、夫Iさん

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


ご相談者Iさん
職業:会社員
解決方法:協議
慰謝料を請求された

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

依頼前 依頼後 利益
慰謝料 450万円 120万円 330万円

 

状況

Iさんは、長く家庭内別居状態にあった元妻と、離婚訴訟の末、2年半前に離婚しました。

しかし、離婚から3年が経とうとしていたころ、元妻から、離婚の原因はIさんと、Iさんの現在の妻の不貞にあったとして、450万円もの高額な慰謝料を請求されてしまいました。

確かに、Iさんは再婚しています。しかし、現在の妻とは元妻との家庭内別居中に出会ったものでした。

Iさんとしては、元妻との離婚原因は性格の不一致であり、再婚相手の問題ではないと考えていましたので、高額な慰謝料を支払う必要などないと考えました。

しかし、元妻には既に弁護士が就いていました。

そこで、Iさんは、示談交渉を弁護士に依頼しました。

 

弁護士の関わり

弁護士は、Iさんと現在の妻が交際を始めた時点で、元妻とIさんとの夫婦関係は完全に破綻していたとして、慰謝料の支払いを拒みました。

とはいえ、この主張には、Iさん側弁護士としても少々苦しいものがありました。

というのも、元妻との同居中の交際スタートだったためです。

いくら家庭内別居中に出会って交際をスタートしたとはいえ、物理的な別居をしていない以上、裁判所は、婚姻関係破綻後の交際開始とは認定してくれない可能性の方が高いのが実情です。

実際、元妻は、Iさんが離婚調停を申し立てた時期においても同居していたことや、メールのやりとりをしていたことなどをもって、夫婦関係は円満であった旨反論してきました。

弁護士は、元妻の弁護士に対しては毅然とした対応をとり、慰謝料は認められない旨を強く主張しました。

他方、裁判になった場合の見通しも大切です。弁護士はIさんに対して、裁判になった場合の見通しを説明しました。

具体的には、①元妻と同居中の交際である場合不貞行為が認定され慰謝料が認められてしまう可能性が高いこと、②その場合の慰謝料は、離婚慰謝料と同程度の100〜300万円は覚悟する必要があることを説明しました。

すると、Iさんは多忙な仕事に加え、元妻との訴訟を抱える負担と実際に訴訟になった際の見通しを考え、早期解決のための示談交渉を希望しました。

弁護士はその意向を受け、示談交渉を行い、最終的に当初の請求額の450万円から大幅に減額された120万円での示談が可能となりました。

 

補足

弁護士がおこなった反論を法的に説明すると、「破綻の抗弁」になります。

「破綻の抗弁」とは、簡単にいえば、配偶者以外の人物と性的な関係を有する前に、配偶者との夫婦関係が破綻していたことを理由に、慰謝料請求を拒否するというものです。

破綻の抗弁が認められるか否かは、それぞれの事案の事実関係によって異なりますが、裁判例を見る限りでは、なかなか認められにくいのが実情です。

破綻の認定では、別居期間は極めて重要です。別居期間が1年未満など長くない場合や、家庭内別居の場合には、破綻の抗弁が認められる可能性は低くなります。

つまり、誤解をおそれずにいえば、物理的な別居が先行していない事例では、ほとんど無理と思っておいた方が良いでしょう。

今回のIさんのケースでも、訴訟で徹底的に争った場合、示談額以上の200万円〜300万円の慰謝料の支払義務が認められてしまう可能性がありました。

Iさんの言い分については十分に相手方弁護士に伝えたうえで、Iさんには訴訟になった場合の見通しを、裁判例を参照しつつ適切にご説明しました。

不貞慰謝料請求においては、特に感情が先行しがちですが、適切な見通しを理解したうえで戦略を立てることが極めて重要です。

そのように対応せず、感情のままに反論していては、かえって、高額の慰謝料を支払わなければならない可能性があるのです。

慰謝料請求をされた場合には、感情にも配慮しつつ適切な見通しをたてて戦略的に示談や訴訟をすすめてくれる弁護士を探すのが良いでしょう。

破綻の抗弁の詳しい解説はこちらからどうぞ。

 

 

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