兼業主婦で休業損害が認められた事例
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
受傷部位 | 首(頚椎捻挫) |
ご依頼後取得した金額 |
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90万円 |
損害項目 | 弁護士によるサポート結果 |
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傷害慰謝料 | 61万円 |
休業損害 | 40万円(主婦の休業損害) |
過失割合 | 10% |
結果 | 90万円 |
交通事故に遭い整形外科、整骨院に通院していた兼業主婦Fさん
Fさんは、片側2車線の道路を車で通っていたところ、反対車線の側にある駐車場から4車線を横切って反対側に渡ろうとしていた車に衝突する交通事故にあいました。
この交通事故で、Fさんは整形外科を受診し、レントゲン検査を受け、頚椎捻挫と診断されました。
その後、Fさんはこの整形外科の他に、整骨院にも通院するようになりました。
整骨院には仕事終わりに行けるのですが、整形外科には時間の都合がつかなかったことが主な理由でした。
ところが、そのことを把握した整形外科の先生から、「整骨院かどっちかにしてくれ」と言われてしまいました。
Fさんは整形外科の先生の言葉を受け、時間のつきやすい整骨院での通院を選択することにしました。
整骨院での治療を行っていましたが、交通事故から3か月経過する前の段階で、3か月で治療費の支払を終了すると保険会社から伝えられたFさんは、今後どうしたらよいかわからずに弁護士に相談されました。
主婦の休業損害を認めてもらい賠償金を増額
弁護士は、Fさんから事故の状況とその後の通院状況、今の症状をうかがいました。
すると、Fさんとしては、もう少し通院を継続したいという希望があるとのことでした。
そこで、弁護士はFさんから依頼をしてもらい、すぐに保険会社と治療費の支払継続に関する交渉を行いました。
当初、保険会社は継続はしないと頑なでしたが、弁護士が交渉した結果、整骨院ではなく整形外科での通院であれば、追加で1か月治療費の支払をすると約束してくれました。
そこで、弁護士はFさんに整形外科での治療に切り替えて、1か月しっかり治療をするようにアドバイスしました。
その上で、治療を延長して行った後で示談交渉へと移りました。
慰謝料としては4か月ほどである程度目処がついていましたが、Fさんの休業損害をどのように評価するかがポイントになっていました。
Fさんは80代の母親と同居しており、母親の身の回りの世話も担当していました。
他方で、母親の年金だけでは、生活ができないため、Fさん自身も仕事をして、賃金センサスの370万円まではいかないものの、一定の収入を得ていました。
そして、仕事の方では、なかなか迷惑をかけられず1日丸々休みを取ることはできていませんでした。
こうした状況で、弁護士は、単純な一人暮らしの事案とは異なるため、主婦の休業損害を請求することにしました。
同居の事実を裏付ける住民票を提出し、母親の年齢、実際にFさんが担当していた家事と事故による影響に関して主張をしました。
その結果、保険会社としても、通院した日数で全休した場合の半分の水準であれば、示談段階で主婦の休業損害を認めると回答してくれました。
そこで、弁護士はすぐに示談を締結し、治療終了から1か月ほどで解決となりました。
主婦の休業損害の額は40万円に上り、慰謝料だけでは過失相殺を行うと50万円ほどだったFさんの賠償金は90万円まで増額することができました。
解説
整骨院治療について
交通事故の治療に関して、整骨院へ通うことも可能です。
ただし、以下の点についてご注意ください。
- ① まずは病院に通院すること
- ② 整骨院へ通い始めた後も、病院へ定期的に通院すること
- ③ 整骨院通院する旨を事前に保険会社に伝えること
また、整骨院の施術費用について、もし裁判になった場合は、損害賠償の範囲内といえるかどうかを裁判官は厳しめに判断している傾向にあります。
一括対応打ち切りへの対応について
一括対応とは、簡略化して説明すると、相手方任意保険会社が病院や整骨院へ治療費等を直接支払っている状態のことです。
もっとも、一括対応は永遠に続くわけではありません。
痛みがある程度残っていても、一定期間経過後に相手方任意保険会社から一方的に一括対応の打ち切りを告げられる場合があります。
このような場合、弁護士は、被害者の方の現状の症状等を聴取し、一括対応の期間を延長してもらえるよう交渉をします。
また、仮に一括対応を一方的に打ち切られてしまった場合でも、一旦自費通院をしてもらい、後に相手方の自賠責保険に対して、被害者請求という手段によって、自費通院をした分の治療費の回収を試みることもできます。
主婦の休業損害について
主婦の休業損害は家事従事者と認められる場合に発生する賠償です。
典型的には、結婚している専業主婦や兼業主婦(主に夫の扶養の範囲内のパート収入)の方が対象となります。
しかしながら、シングルマザーなど、結婚はしていないけれども子どもの世話をしているケースもあり、こうした場合には交渉して、主婦の休業損害を請求する余地があります。
その意味では、子どもではなく、自身の親と同居して介護している場合も他人の生活の世話をしているという点では、専業主婦や兼業主婦、シングルマザーと同じです。
今回のFさんの事例では、この点を住民票で証明し、家事労働への関与とその影響を具体的に主張できたからこそ、主婦の休業損害を認めてもらえたと思います。
具体的な事案によって、主婦の休業損害を認めてもらえるかどうか、認められるとしてどの程度の額が認められるかというのは変わってきます。