解決事例
更新日2020年8月24日

任意保険未加入の加害者から人身傷害保険と150万円を獲得した事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Hさん

受傷部位首(頚椎捻挫)、腰(腰椎捻挫)
等級併合14級 首、腰(頚部痛、腰部痛 14級9号)
ご依頼後取得した金額
425万円(人身傷害保険金を含む)

内訳
損害項目 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 100万円
休業損害 130万円(主婦休損)
後遺障害慰謝料 110万円(14級 裁判基準)
後遺障害逸失利益 85万円(賃金センサス×5%×5年 裁判基準)
結果 425万円(人身障害保険金を含む)

 

状況

解説図Hさんは、ショッピングモールの駐車場に入るために、右折待ちのため停止していたところに、4トントラックが追突してくるという交通事故にあいました。

Hさんの車は4トントラックに追突されたことで修理費が60万円以上かかってしまいました。

ところが、このトラックを所有していた運送会社が任意保険に加入しておらず、自賠責保険のみしかついていませんでした。

そのため、Hさんはやむなく自分の加入していた保険会社の人身傷害保険を使用して治療を開始しました。

整形外科での通院を定期的に行い、手のしびれ症状もあったため、MRI検査も受診したところ、首にはヘルニアの所見があると指摘されました。

その後、1年弱の期間にわたって、整形外科での治療を継続しましたが、最終的にHさんは治療の甲斐なく、症状が完全になくなることはなく、首の痛みと腰の痛みが残存している状況でした。

そのため、Hさんは、自分の保険会社に相談して、後遺障害の手続を教えてもらい、主治医の医師に後遺障害診断書を作成してもらって、申請を行いました。

その結果、Hさんの保険会社から、首の痛みと腰の痛みで14級9号の認定がなされた旨通知がありました。

そして、保険会社からHさんは最終的な人身傷害保険金の算定額を受け取りました。

この段階で、加害者からは何らかの補償を受けることはできないかと考えていたHさんは、交通事故に詳しい弁護士に相談することとし、インターネットで検索して、ご相談に来られました。

 

弁護士の対応

解説図弁護士は、Hさんから相談時までの治療経過や後遺障害の内容、症状について伺うとともに、Hさんの保険会社から受領していた人身傷害保険金の計算書をチェックしました。

その結果、人身傷害保険金としては過不足のない金額が支払われることとなっていましたが、後遺障害の慰謝料は保険金として40万円という金額にとどまっており、加害者にその不足額を請求することが可能であるという状況でした。

幸い、Hさんは弁護士費用特約に加入していたこともあり、弁護士費用特約を使用して、加害者との示談交渉をご依頼いただきました。

弁護士は、Hさんから依頼を受けた直後に、Hさんの保険会社に連絡し、人身傷害保険金を受領したのちに加害者へ直接不足部分の請求を行う旨を伝え、早速示談交渉に取りかかりました。

加害者の運送会社は、人身傷害保険を使用していたこともあって、Hさんの状況を全く把握していなかったため、保険会社から資料を弁護士が取り寄せ、その資料を加害者に送付して、裁判基準にのっとって計算した場合の損害額を請求しました。

加害者が運送会社ということもあり、資金的には問題はなかったものの、それでも常時交通事故の処理をしている保険会社と異なり、示談交渉の担当者が不慣れなため、弁護士から積極的に休業損害の根拠や慰謝料の計算方法などを説明するとともに、回答が遅い場合には、頻繁に連絡をするなどして、会社として適切に対応するように働きかけました。

加害者の方には、Hさん本人の請求、人身傷害保険金を支払った保険会社からの請求、健康保険組合からの請求が相次いで起こっていたため、処理に時間を要しましたが、最終的には、弁護士が当初から請求していた金額をベースに補償してもらうことに成功しました。

具体的には、後遺障害についての補償は裁判基準と同額の慰謝料110万円と逸失利益は5年、5%、休業損害については、治療期間が長期だったことも踏まえ、主婦休業損害として130万円を損害額とするという内容でした。

その結果、人身傷害保険金との差額として150万円を加害者から直接補償してもらうことができました。

 

弁護士のアドバイス

Hさんのように、任意保険に加害者が未加入の場合、まずは人身傷害保険が使用できないかを検討します。

人身傷害保険が使用できる場合、被害者の方が自分で治療費などを負担するのは家計に影響が大きいため、この保険を使用して治療を行う方がリスクを抑えることができます。

ただし、人身傷害保険は、賠償ではなくあくまで保険金のため、支払額の基準が約款で決まっています。

つまり、保険会社の基準によって、金額が決定されてしまいます。

いわゆる裁判基準との差額を請求するためには、加害者に直接請求をしなければなりません。

もっとも、被害者の方が事故の当事者である加害者の方と直接示談交渉をするのはなかなか難しいはずです。

弁護士費用特約があれば、被害者の方の費用負担はなく、加害者に請求を行い、示談交渉を被害者の方にかわって弁護士が行うことが可能です。

今回の事案のように、加害者が会社の場合には個人に比べて支払ってもらえる可能性は高いですので、加害者が任意保険未加入の場合にも、すぐに諦めず検討すべきです。

 

 


なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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