交通事故で保険会社からの治療打ち切りを伸ばすことに成功した事例
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
受傷部位 | 首(頚椎捻挫) |
等級 | なし |
ご依頼後取得した金額 |
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1か月の治療延長、60万円 |
損害項目 | 弁護士に依頼する前 | 弁護士によるサポート結果 |
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治療費 | 交通事故後3ヶ月まで | 交通事故後4ヶ月まで |
傷害慰謝料 | 60万円 | |
休業損害 | 40万円 | |
結果 | 100万円 |
状況
Kさんは、福岡の大通りで交差点に先頭車両として停止していたところ、後続車が前方不注意でそのまま突っ込んできて、追突される交通事故にあいました。
この交通事故でKさんの車は40万円ほどの修理費がかかってしまいました。
Kさんは、交通事故のその日に事故処理を終えて、自宅近くの整形外科を受診したところ、頚椎捻挫と診断されました。
その後、Kさんは週に2回から3回程度で通院を継続していましたが、交通事故から3か月ほど経過した段階で、首の痛みがまだ残っている状況でした。
そのため、Kさんとしてはその後も整形外科での治療を継続しようと考えていたところ、保険会社から連絡があり、「今月末で治療費の支払を終了する」と言われました。
あまりに突然のことにどうしたらいいかわからず、治療がもうできないのかと思い悩み、慌てて交通事故について情報収集をしたものの、自分ではどうしようもできないと考え、弁護士に相談しようと事務所に来られました。
弁護士の対応
弁護士は、Kさんのお話をうかがって、交通事故の状況、治療状況、今のけがの状態を確認しました。
その上で、整形外科の先生が問診時にどのような話をしているのかを尋ねると、整形外科の医師はKさんに、「あと1か月は(病院に)来た方がいいね」と言われていたことがわかりました。
そこで、弁護士はその主治医の意見からすれば、3か月で治療の打ち切りは不合理であると考え、保険会社と交渉を開始しようと考え、早速Kさんから交通事故の示談交渉についてご依頼をいただきました。
ちょうど同じタイミングで、保険会社も顧問の弁護士に依頼を進めていたようで、弁護士同士の交渉になりました。
万が一、交渉が決裂しても自賠責保険の120万円は使い切っていない状態だったため、自賠責保険への被害者請求という方法も取れると弁護士は判断し、Kさんにはまずは治療をやめてしまわずに、整形外科へ通院をしておくようアドバイスをしました。
Kさんは保険会社から打ち切りにあって、1か月ほど治療を継続したことで症状も改善して、大丈夫そうということでしたので、保険会社の弁護士にもその旨を伝え、3か月ではなく4か月の治療期間を前提に、賠償額を計算して請求を出しました。
保険会社の弁護士も内容を確認して、こちらが主張した主治医の意見も踏まえ、治療期間を積極的に争うことはせず、4か月の治療期間を前提に示談交渉に応じてくれました。
その結果、Kさんは保険会社が打ち切りを通告してきた3か月ではなく、4か月治療をすることができ、なおかつ、裁判をせずに、主婦休業損害と裁判基準をベースとした慰謝料を獲得することができました。
Kさんの受取額は、最終的に100万円になり、弁護士費用特約に加入されていたので、Kさん自身の負担額は一切ありませんでした。
弁護士のアドバイス
治療が打ち切られるタイミングは?
Kさんの事案のように、保険会社から突然治療費の支払いを中止するという連絡が入ることがあります。
これを治療の打ち切りといいます。
そもそも、相手方任意保険会社が存在する場合、被害者の方は病院で治療費を支出することは少なく、多くは保険会社が直接病院に治療費を支払っていて、このような状態を一括対応といいます。
一括対応は、法律で義務付けられているものではなく、あくまで保険会社のサービスになります。ですから、治療の打ち切りは違法ではありません。
治療が打ち切られるタイミングは、事案によって異なりますが、頚椎捻挫(むちうち)や腰椎捻挫の場合、概ね事故から3ヶ月前後です。
事故規模が大きい場合には、事故から6ヶ月頃まで一括対応してもらえるケースもあります。
打切り延長の交渉方法
上記のように、保険会社から治療の打ち切りの打診があっても、交渉次第では打ち切りを延長してもらえる場合があります。
交渉の手段は、以下のとおりです。
主治医に相談して交渉
保険会社が治療費を支払う義務があるのは、「症状固定」までです。
症状固定とは、これ以上治療を行っても症状の改善を期待することができないであろうという時点をいいます。
症状固定の判断は、基本的に主治医の判断が尊重されます。
そのため、保険会社から治療の打ち切りの打診があった場合は、まずは主治医に相談して症状固定時期の見解を聞くことが必要です。
主治医の見解が、まだ症状固定時期ではないというものであれば、その見解を保険会社に伝えて交渉しましょう。
期限を区切って交渉してみる
保険会社が打ち切りを打診する時期は、いつまで治療するか先行きが不透明な場合と判断した頃です。
被害者の方の症状にもよりますが、あともう少しで完治しそうなケースでは、治療終了時期を区切って交渉することも有効です。
例えば、「あと1ヶ月だけ治療させてくれ」や「あと半月だけ治療させてくれ」というようなものです。
このような期限を区切って交渉することにより、保険会社にとって先行き不透明というものが解消されるため、治療期間を延長してもらえることがあります。
打ち切り後の通院
健康保険は利用可能
保険会社から治療の打ち切りを一方的にされても、治療を継続することは可能です。
打ち切り後の通院は、基本的にご自身の健康保険を使用して通院することになるかと思います。
交通事故で健康保険を使用した場合は、「第三者行為による傷病届」というものを、適当な提出先に提出する必要があります。
ただし、通勤災害や業務災害などの労災事案の場合は、健康保険は使用できないので注意が必要です。
症状固定までの治療費は遡って回収できる可能性がある
健康保険を使用して自費で通院後、症状固定日が確定した場合には、症状固定日までの自費通院分を相手方任意保険会社に請求することは可能です。
また、仮に相手方任意保険会社が請求に応じない場合には、自賠責保険に被害者請求というものを行い、自費通院分の回収を試みることも可能です。
さらに、裁判を提起して自費通院分の回収を目指すという方法もあります。
打ち切り後の通院のメリット
治療を打ち切られた後や症状固定後の通院のメリットとしては、後遺障害の異議申立てで有利に考慮される場合があるということです。
なぜなら、自費で通院するということは、それだけ痛みが残存しているという裏付けとなるためです(特に後遺障害14級の事案)。
もっとも、症状が治っているにも関わらず、自費で通院するのは無意味であるため、通院するべきではないでしょう。
最後になりますが、保険会社の担当者は交渉のプロであるため、なかなか一般の方が打ち切り延長の交渉をするのは困難かと思います。
打ち切りの打診がきて困っている被害者の方は、まずは弁護士にご相談ください。