交通事故紛争処理センターを利用し、賠償額が倍増した事例
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
受傷部位 | 腰部(第1腰椎圧迫骨折) |
等級 | 11級 |
ご依頼後取得した金額 |
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約960万円 既払い金を除く |
損害項目 | 保険会社提示額 | 弁護士によるサポート結果 |
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傷害慰謝料 | 63万4600円 | 103万円(裁判基準90%) |
後遺障害慰謝料 | 135万円 | 380万円(裁判基準90%) |
後遺障害逸失利益 | 196万円 | 約530万円 |
過失割合 | 15% | 5% |
最終支払額 | 約380万円 | 約960万円(既払い金を除く) |
バイク乗車中の事故で賠償額に納得できず弁護士に相談したKさん
Kさんは、2車線道路の左側車線をバイクで走行していたところ、前方の渋滞を避けようとして右側車線から進路変更してきた普通自動車に衝突され、転倒するという交通事故に遭いました。
Kさんは、転倒した際、腰を強く打ち、腰椎捻挫と診断を受けしばらく治療していたところ、あまりにも痛みが軽減しないため、詳しく検査してもらった結果、第1腰椎圧迫骨折であることが判明しました。
Kさんは、約6か月の治療を継続しましたが、症状固定となり、保険会社の事前認定手続により後遺障害等級11級と認定されました。
その後、保険会社から賠償額の提示を受けましたが、賠償額があまりにも少ないと感じ、弁護士に相談しました。
弁護士の対応
弁護士は、まずKさんの後遺障害等級が妥当かどうかを、レントゲン画像や診断書をもとに確認し、後遺障害等級11級という評価は妥当であることを確認しました。
そこで、賠償額について検討したところ、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益が裁判基準と比べてかなり低額で提示されており、過失割合は、物損の示談段階で5%とされていたにもかかわらず、Kさんの過失が15%あるものとして賠償額の提示がされていました。
弁護士は、保険会社とこれらの点について交渉を行いましたが、保険会社から再度受けた提示も、最終支払額が約500万円と低額にとどまり、過失割合も15%のままでした。そこで、弁護士は、交通事故紛争処理センターの示談斡旋手続を利用して解決することとしました(交通事故紛争処理センターについては補足をご覧ください。)。
交通事故紛争処理センターでは以下の点が争点となりました。
1 傷害慰謝料
Kさんは、本件事故による受傷により、約6か月間治療を行った結果、症状固定となりました。
保険会社は、あくまで保険会社の基準額(任意保険基準)である63万4600円の慰謝料を支払うと主張していました。
一方、弁護士は、裁判基準で認められる金額とするよう、主張しました。
その結果、事前提示の段階から約40万円増額した103万円で示談を成立させることができました(傷害慰謝料についてはこちらもご覧ください)。
2 後遺障害逸失利益
Kさんは事故当時60歳を過ぎており、勤めていた会社を定年になった後、継続雇用制度を利用して勤めていた会社のグループ会社で働いていました。
そのため、保険会社は、一般的な定年年齢である65歳までの5年間を労働能力喪失期間として主張していました。
そのため、保険会社が提示した後遺障害逸失利益は196万円と低額にとどまりました(後遺障害逸失利益の算定方法についてはこちらをご覧ください)。
一方、弁護士は、Kさんの継続雇用の条件を雇用契約書で確認したところ、「Kさんの健康状態に問題がない限り、75歳までは継続雇用する」という条件があることが判明しました。
そこで、弁護士は、75歳まで労働能力制限を受ける可能性があると主張し、労働能力喪失期間は15年であると主張しました。
その結果、労働能力喪失期間は、60歳男性の平均余命の2分の1である11年と認められ、後遺障害逸失利益は、倍増以上の約530万円で示談することができました。
3 過失割合
保険会社は車線変更車と直進車の事故であることから、過失割合はKさん:相手方=15:85であると主張していました。
そこで、弁護士は、事故状況を把握するため、警察の実況見分調書を取得するとともに、事故状況の調査を調査会社に依頼し、その報告書を証拠として提出しました。
その結果、相手方車両の車線変更が急であり、ウインカーも点灯していなかった可能性も高いとして、過失割合はKさん:相手方=5:95で示談することができました。
4 結果
以上のような交渉の結果、保険会社の最初の提示額の約2.5倍である約960万円の賠償金を獲得することができました。
弁護士のアドバイス
交通事故紛争処理センターの示談斡旋手続
交通事故紛争処理センターは、交通事故紛争を適正に処理するために設置された財団法人であり、弁護士等の専門家が斡旋委員となり、中立な立場から和解斡旋を行い、合意に至らない場合は、審査会の裁定を受けることもできます。
事実関係に争いはないものの、賠償額で保険会社や事故の相手方と折り合いがつかない場合は、交通事故紛争処理センターを利用することで、適切な和解案を示してもらうことが期待できます。
もっとも、いくら中立な立場から和解案の提示を受けられるといっても、自分の希望通りの和解案を提示してもらうためには、適切な証拠資料を収集し、適切な主張をしなければなりません。