解決事例
更新日2021年1月19日

医師が後遺障害診断書を書かない状況から、14級に認定された事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)


※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Ⅴさん

受傷部位頸椎捻挫,腰椎捻挫
等級併合14級(頭痛14級9号、腰痛14級9号)
ご依頼後取得した金額
約320万円

内訳
損害項目 弁護士介入後
傷害慰謝料 118万円(通院11.5か月裁判基準)
後遺障害慰謝料 110万円(裁判基準)
後遺障害逸失利益 約90万円(5年間、5%喪失裁判基準)
結果 約320万円

 

状況

解説図福岡県築上郡にお住いのVさんは友人の運転する車に同乗し、助手席に乗っていました。

Vさんの車は信号停止で止まっていましたが、そこに後ろから加害者の車両が追突してきました。

この交通事故で、車は修理費 90万円近くかかる損傷を受け、Vさんも当日病院へ救急搬送されました。

幸い骨に異常はなく、Vさんは頸椎捻挫、腰椎捻挫と診断されましたが、首と腰の痛み、頭痛の症状が続き、整骨院と併院して週の半分以上電気治療や牽引といった治療を受けていました。

痛みがひどいときにはブロック注射も打ってもらっていました。

事故から半年ほど経過した際、Vさんは仕事の関係で転勤となり、それまで通院していた整形外科を受診することが難しくなりました。

そこで、新しい整形外科に転院して通院していました。

転院して治療をしばらく続け、事故から1年が経とうとする段階で、相手方保険会社より後遺障害手続の話が出ました。

そこで、Vさんは転院先の整形外科に相談したところ、「診断書は書かない。」と言われてしまいました。

困ったVさんは弁護士に相談することとし、当事務所に来られました。

 

弁護士の対応

解説図Vさんの事故態様や症状経過、通院・治療状況を伺うと後遺障害の認定がなされる可能性が高い事案でした。

もっとも、そのために必要な後遺障害診断書を転院先の病院が書いてくれないため、このままではそもそも申請ができない状況でした。

そこで、弁護士は、Vさんに転院前の病院を再度受診することを勧め、そこで後遺障害診断書を書いてもらうようお願いすることとしました。

その結果、当初通院していた病院の医師が協力していただくことができ、無事に後遺障害診断書を作成していただけました。

この診断書と検査画像をもって、被害者請求を行ったところ、頸椎捻挫に伴う頭痛の症状で14級9号、腰椎捻挫に伴う腰部痛で14級9号の併合14級の認定を受けました。

弁護士は引き続いて、保険会社との交渉に移りました。

保険会社は交渉時点で事故から1年以上経過していたこともあり、早期解決を図りたいという意向が強かったこともあり、1回目の回答から裁判基準通りの賠償額を提示してきました。

そのため、交渉開始から1か月足らずで裁判基準による解決が実現しました。

Vさんの賠償額は 300万円を超えています。

 

弁護士のアドバイス

医師が後遺障害診断書を作成してくれない理由は?

被害者請求をするためには、自賠責保険で使用している定型の後遺障害診断書が必要です。

この書類がないと申請することができません。

しかし、医師が後遺障害診断書を作成してくれないケースが時折生じます。

医師が、後遺障害診断書の作成を拒む理由は、以下の理由が考えられます。

 

症状固定に達していない場合

後遺障害の申請を行うのは、「症状固定」になってからです。

後遺障害は、症状固定時にどの程度の障害が残っているのかを審査するため、症状固定に至っていない場合には、後遺障害診断書を作成することはできません。

この理由の場合、症状固定となった時点で作成してくれると考えられるため、それほど心配する必要はないでしょう。

 

治療の経過を短期間しか診ていないため

被害者が転院した場合などは、複数の病院に通院しているため、最後の病院での治療期間が短くなってしまうことがあります。

こうした場合には、医師の方から、治療期間の全てを診ていないから後遺障害診断書は書けないと言われることは時折あります。

対応としては、さらに一定期間通院して、再度、作成を依頼するか、過去に通院していた他の病院の医師に作成を依頼することになるでしょう。

このような事態を避けるためにも、転院した際に、後遺障害診断書を作成してくれるか確認しておいた方が良いかもしれません。

 

 


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