むちうちによる主婦の休業損害が認められる?弁護士が事例で解説
主婦であっても、交通事故で家事に制限を受けた場合、休業損害が認められる場合があります。
主婦の場合、実際の収入がゼロのため、休業による損害が認められないようにも思えます。
しかし、主婦の方は、家族のために家事労働を行っており、事故によって家事労働が制限された期間については、主婦の休業損害を請求することができます。
もっとも、主婦の方は、給料をもらっているわけではないため、一般の方が休業損害を金銭的に算定することは困難です。
ここでは、交通事故に注力する弁護士がむちうちの解決事例をもとに、主婦の休業損害等についてわかりやすく解説いたします。
むちうちの被害を負った主婦の方の参考になれば幸いです。
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
受傷部位 | 首(頚椎捻挫)、腰(腰椎捻挫) |
ご依頼後取得した金額 |
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約100万円 治療費を除く |
損害項目 | 弁護士によるサポート結果 |
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通院交通費 | 実費相当額 |
傷害慰謝料 | 約48万円(裁判基準90%) |
休業損害 | 約50万円 |
最終支払額 | 約100万円(治療費を除く) |
むちうちと診断された主婦のKさん
Kさんは、普通乗用車を運転中に赤信号で停止したところ、後ろからきた普通乗用車に追突され、首の痛みや腰の痛みを感じて通院したところ、頚椎捻挫、腰椎捻挫と診断されました。
その後、3ヶ月ほど通院を続けたところ、保険会社から治療費支払いを打ち切られたため、Kさんは示談交渉のことが不安になり、弁護士に相談することにしました。
Kさんは旦那さんと自宅で同居し、専業主婦として家事を行っていました。
家事労働の制限を受けたKさんは、弁護士の対応で休業損害の請求に成功
弁護士は依頼を受けたのち後、直ちに示談交渉を行いました。示談交渉では、以下の点が争いとなりました。
傷害慰謝料
相手方保険会社は、当初、自賠責保険基準で算定した慰謝料約40万円を提示してきました。
これに対し、弁護士は、診断書や診療報酬明細書をもとにKさんの頸部や腰部の痛みが強かったことを主張し、傷害慰謝料は裁判基準で計算されるべきと主張しました。
その結果、傷害慰謝料については、裁判基準の90%である約48万円で合意することができました。
主婦の休業損害
弁護士は、傷害慰謝料の他に、Kさんが首の痛みや腰の痛みから、家事労働を制限されたことによる、休業損害(主婦の休業損害)を請求することにしました。
そのため、診断書や診療報酬明細書によりKさんの症状や治療状況を確認し、Kさんからは毎日の家事労働の内容や事故による痛みでどのような制限を受けたかを詳細に聞き取りました。
その結果、通院日については、通院までの時間、待ち時間、治療時間でKさんの時間が拘束され、ほとんど家事ができなかったことがわかりました。
そこで、弁護士は、Kさんの毎日の家事労働のタイムスケジュールや通院に必要な時間を詳細に保険会社に説明し、家事労働に受けた制限が大きいことを主張しました。
その結果、実通院日数約70日間の70%程度は、家事労働の制限を受けたものとして、約50万円の主婦休業損害の支払いを受けることができました。
結果
以上の結果、Kさんは、医療機関に直接支払われた治療費を除いて、100万円の賠償金を受領することができました。
また、早期解決を目指した結果、弁護士がKさんから相談を受けてから1ヶ月で示談締結に至ることができました。
弁護士のアドバイス
傷害慰謝料について
傷害慰謝料については、自賠責保険の基準、任意保険会社の基準、裁判基準という3つの基準があります。
基本的には裁判基準が最も高くなり、弁護士が介入した場合は、裁判基準を前提に交渉いたします。
裁判基準の場合は、通院期間を基礎に計算していきます。
加害者側の悪質な態様等があった場合は、慰謝料の増額事由を主張することもあります。
主婦休業損害の計算方法
主婦の方は、他人のために家事労働を行っており、事故によって家事労働が制限された期間については、主婦の休業損害を請求することができます。
しかし、主婦の方は、給料をもらっているわけではありませんし、他人から仕事内容が明確にわかるわけではないので、休業損害を金銭的に算定することは困難です。
自賠責保険では、1日6,100円(2020年3月31日以前の事故は5,700円)の定額で算定されていますが、裁判や弁護士に示談交渉を依頼した場合は、事故時の賃金センサス女子全年齢平均額を日額に算定した金額(年によって変動しますが、約1万円弱)を元に算定されることが多いです。
なお、男性の家事従事者であっても、裁判例上、女性の賃金センサスを用いて算定されています。
休業期間については、実通院日数を元に算定する方法もあれば、症状固定までの期間を通算して算定する方法もあります。
一般的には、治療の継続とともに症状も軽快していくので、最初の1ヶ月は100%、2ヶ月目から3ヶ月目は70%、その後は50%というように、逓減方式で算定される場合もあります。
どのような算定方法をとるかは、実際の家事労働の実態や症状の経過を踏まえてより説得的なものを選択することになります。
保険会社の提示を見ると、主婦の休業損害が全く考慮されていないことが多々ありますので、注意が必要です。