むちうちの後遺症が弁護士の異議申立てで後遺障害と認定された例
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
受傷部位 | 首(頚椎捻挫)、腰(腰椎捻挫) |
等級 | 非該当→14級9号(頚部痛) |
ご依頼後取得した金額 |
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250万円 |
損害項目 | 弁護士によるサポート結果 |
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休業損害 | 50万円 |
傷害慰謝料 | 95万円 |
後遺傷害慰謝料 | 100万円(裁判所の基準90%) |
逸失利益 | 82万円(賃金センサス×5%×5年) |
過失相殺 | 15% |
結果 | 250万円 |
むちうちで入院生活後、弁護士に相談に来たYさん
Yさんは、国道を青信号にしたがって直進していたところ、対向車線の車が目の前で右折してきたため、衝突してしまいました。
この事故で、Yさんの車は前方が大きく大破し、エアバックも出て、全損となるほどの状況でした。
Yさんはそのまま救急車で搬送されて、レントゲン検査を受けましたが、幸いにも骨折はなく全身打撲と診断されました。
ただし、事故の衝撃が大きかったため、医師から安静を指示され、事故から2週間ほど入院生活を送りました。
Yさんは以前にも交通事故にあって、当事務所に依頼をしたことがあり、今回も早めに相談しようと考え、退院後に弁護士に相談に来られました。
弁護士の異議申立てで後遺障害認定
弁護士は、Yさんから事故の状況と現在の症状をうかがい、弁護士費用特約に加入されていたこともあり、すぐに依頼を受け、サポートを開始しました。
弁護士が依頼を受けた時点では、事故直後のため過失割合も決まっていませんでした。
保険会社としては、お互い青信号の右折と直進事故の基本の過失割合である、20:80を主張していましたが、すぐに示談することはせず、相手方の刑事処分が終わり、実況見分調書が取得できるタイミングで検討することにしました。
同時に、Yさんと定期的に連絡をとりあい、通院状況や症状について確認をし、保険会社とのやりとりを弁護士がすべて行っていきました。
Yさんは退院後、入院していた病院に通院することが仕事の都合で困難だったため、転院の手続も弁護士がサポートをして、保険会社との調整を行いました。
事故の衝撃が大きかったこともあり、Yさんは半年間通院しても、首の痛みや手先のシビレが改善しませんでした。
そこで、Yさんと相談の上後遺障害の申請を行うこととし、通院した整形外科に後遺障害診断書を作成してもらい、1度目の被害者請求を行いました。
その結果、1度目の申請では、自賠責保険はYさんに残っている首の痛みやシビレは後遺障害には該当しないとして非該当であると回答してきました。
しかしながら、弁護士としては、Yさんが当初入院をしていたことや事故の衝撃の大きさからすれば、このケースでは後遺障害が認められてもおかしくないと考えていました。
そこで、弁護士は自賠責保険の非該当との判断は不当であるとして、異議申立てをすることにしました。
異議申立てを行うにあたって、事前にYさんのカルテを病院から取得し、その内容を確認しました。
その上で、首の痛みが事故の直後から治療の最後まで続いていることを示すカルテの記載に印をつけて、異議申立書に引用するなどして、弁護士が異議申立書を作成し、もう一度後遺障害の申請を行いました。
その結果、自賠責保険は1度目の非該当の結論を変更し、Yさんの首の痛みが交通事故以降一貫して継続していることをカルテから認定し、14級9号の「局部に神経症状を残すもの」に該当するとしてYさんに後遺障害を認定しました。
この結果を踏まえて、弁護士は保険会社との示談交渉を開始しました。
Yさんは兼業主婦で、実際の仕事も休んでいましたが、主婦休業損害のほうがYさんのケースでは適切であると考え、住民票を添付して主婦休業損害を請求し、後遺障害の逸失利益も主婦を前提に交渉を行いました。
保険会社は、当初から弁護士が示談交渉を行っているということもあり、裁判基準をベースとした解決案を提案してきました。
そして、後遺障害の逸失利益についても、5年間の補償という内容的にも示談可能な水準でした。しかしながら、慰謝料については、裁判基準の80%という内容でした。
そこで、弁護士はYさんの早期解決の意向も踏まえつつ、さらなる増額を目標として、保険会社との電話による交渉を行い、その結果、傷害慰謝料と後遺障害慰謝料を10%ほど増額してもらい、自賠責保険も含めて250万円で解決することに成功しました。
なお、過失割合については、実況見分調書を取得した結果、相手方が交差点の中央ではなく、ショートカット気味に右折していることが記録されていたことから、早回り右折の修正をすべきであると主張し、保険会社も記録に残っていることからこれを認め、Yさんの過失を20%ではなく15%とすることで示談が成立しました。
弁護士のアドバイス
兼業主婦の休業損害、逸失利益について
兼業主婦の場合の休業損害、逸失利益の基礎収入は、現実の収入額と女性労働者の全年齢平均の賃金額(賃金センサス)のいずれか高い方を基礎として算出します。
賃金センサスは、毎年更新されるため変動がありますが、例えば、令和元年の女性労働者の全年齢平均は、約388万円です。
兼業主婦の方は、多くの場合、パートの形態で働かれていると思いますので、賃金センサスの方が高くなる傾向にあります。
上記の原則を知らなければ、休業損害や逸失利益に大きな差が生まれてしまいます。
異議申立てについて
自賠責保険の後遺障害等級の判定に不服の場合は、異議申立てをすることができます。
ただし、異議申立ては、新たな証拠を提出しなければ意味がありません。
今回のYさんの事例では、カルテに有利な記載がなされていたことが新たな証拠として意味を持つものになりました。
仮に、今回、1度目の後遺障害申請の非該当の結果を受け入れてしまっていたら、後遺障害慰謝料と逸失利益は獲得できませんでした。
後遺障害申請の結果が妥当かどうかは、弁護士に確認されるのが良いです。
総括
Yさんは以前にも交通事故にあって、デイライト法律事務所の弁護士に依頼されていました。
そのときの経験から、弁護士のサポートにご満足いただいて、今回の事故もご依頼いただきました。
Yさんとしても、事故にあって早めに弁護士に相談したほうがよいと考え、事故後すぐにご相談されています。
その結果、過失割合の検証や転院の手続、通院状況の確認など弁護士のサポートを早い段階で受けることができました。
後遺障害については、1度目は残念な結果でしたが、弁護士が早期にサポートをしていたこともあり、通院状況も通院が少なすぎるといった事情もなかったため、認定される可能性が十分にあると考え、スムーズに異議申立ての手続へ移行することができました。
実際に、異議申立てにより後遺障害が認定されたことで後遺障害慰謝料と逸失利益が保険会社に補償してもらえることになり、Yさんの賠償金は150万円近く増額することができました。