■ 外国人を継続的に雇用したいがどのようにすればよいのか分からない
■ 社員が不法在留で逮捕され、強制退去になるかもしれないので困っている
■ 社員を海外へ渡航させたいが、日本人にビザが発給されにくい国なので困っている
■ 日本国籍を取得したいけどどうしたらよいのか分からない
経済社会環境のグローバル化が進展する中、日本企業がさらなる成長を実現するためには、国内外の多様な人材が活躍できるような組織作りを通じた、人材の国際化が重要です。
しかしながら、人材の国際化の必要性について、多くの日本企業は総論として認識しているものの、具体的に何をすべきで、何から着手すべきかわからないまま、悩みを抱える企業が存在しているのが現状です。
こうした現状認識の下、当事務所は、企業の国際化による発展を後押しすべく、外国人の雇用と入管法の相談を行っております。
当事務所は、労務管理を中心とする企業法務に強みを持っており、また、海外の法律事務所と連携しております。
外国人の雇用や入管法でお悩みの方は気軽にご相談ください。
企業の心構え
外国人の雇用にあたって、企業が持つべき心構えとしては次のとおりです。
法令を遵守する
政府は、外国人を雇用する企業に対して、確実な在留資格の管理や労働関係法令の遵守など、コンプライアンスを強く求めています。
例えば、入管法上、企業には従業員にしようとする外国人の在留資格や在留期限を確認する義務があり、これを怠って外国人を意図的に不法就労させ、不法就労助長罪に該当した場合、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの併科という厳しい罰則を適用される可能性があります。
このような事態を避けるために、入管法や労働関係法令を理解し、遵守する社内体制を構築していく必要があります。
また、入管法や労働関係法令は改正が多い分野ですので、普段から改正情報については押さえておく必要があります。
そのため、外国人の雇用を検討されている企業は、法務部を設置するか、労働関係法令に精通した弁護士を顧問に付けておいた方がよいでしょう。
文化の違いに配慮する
外国人の方は、日本人と異なる文化で生まれ育っているため、考え方が異なります。
例えば、仕事への取り組み方、契約の考え方など、日本人の常識からすると考えられないような行動を取ることがあります。
就業場所が日本の場合は、ある程度日本の習慣に合わせてもらう必要がありますが、外国人を雇用する場合、考え方の違いから問題が生じる可能性があるということを企業側は事前に理解しておくべきです。
差別的な扱いは厳禁
日本人経営者の中には、「外国人労働者は安く使える」といった誤った認識を持っている方が少なくないようです。
しかし、労働関係法令は、労働条件について外国人と日本人を区別していません。
したがって、同じ能力、技術を持っているのに、国籍を理由に賃金を低く設定することは許されません。
賃金や待遇については、日本人と同等のものにする必要があるということを認識しておきましょう。
外国人雇用の手続の流れ
在留資格の確認
外国人の方を雇用するためには、その方が就労可能な在留資格(ビザ)を持っていることが最低条件です。
そこで、まず、在留資格を確認します。
在留資格は、在留カード若しくは外国人登録証明書(※)又は旅券(パスポート)面の上陸許可又は就労資格証明書等により確認できます。
※従来は外国人登録証明書でしたが、平成24年7月9日から新たな在留管理制度が導入され、外国人登録証明書は廃止され、ICチップが搭載された「在留カード」となりました。
しかし、外国人登録証明書については、有効期限前の切り替えは義務化されていないため、しばらくの間(平成27年7月8日まで)は、外国人登録証明書と在留カードが混在しています。
なお、特別永住者については、特別永住者証明書に切り替えられています。
在留資格を持たずに働いていた場合は不法就労になります。
この場合、本人だけでなく会社も刑罰(3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金)に処される可能性があります。
また、通常外国人であると判断できる場合に、在留資格等を確認しなかった場合も30万円以下の罰金の対象になりますので、まずは在留資格の確認が必要です。
類型別の手続の流れ
外国人を雇用する場合、①日本にいる外国人を採用する場合、②外国から呼び寄せて雇用する場合が考えられます。
以下、類型別に手続の流れをご説明します。
日本にいる外国人を採用する場合
在留資格の種類を確認する
既に日本にいる外国人を採用する場合、まず在留資格の種類が仕事の内容に合っているかどうかを確かめる必要があります。
在留資格には、27もの種類があり、それぞれ行うことができる仕事の範囲が決められています。
在留資格の種類についてはこちらからどうぞ。
この27種類に当てはまらない仕事(単純労働・肉体労働など)については、日本で就労ができないため、雇用することはできません。
なお、雇用したいと思っている外国人の方が次に該当する場合、活動できる内容についての制限がないため、会社の業務に関係なく雇用できます。
- 永住者
- 日本人若しくは永住者の配偶者等
- 定住者
■ 現在、採用予定者が別の会社に勤務していている場合
この場合、採用予定者は、すでに就労ビザ(働くことができる在留資格)を持っていると思いますので、まず、パスポートや外国人登録証を見て就労ビザの期限がいつであるかを確認します。
次に、「就労資格証明書」を取得しておきます。
この証明書は、会社の業務内容が在留資格の活動に該当するという入管のお墨付きのような意味があります。
就労資格証明書の取得は義務ではありませんが、仮に、持っている在留資格と業務内容が合致していない場合、在留期間更新が不許可となる可能性があるので、取得しておくことをおすすめします。
■ 現在、採用予定者が観光ビザで入国している場合
観光ビザ(「短期滞在」の在留資格)で来日している際には、新たに就労可能な在留資格を取得する必要があります。
この場合、採用予定者の学歴や職歴、雇用する会社の業務内容や財務状況等の要件を満たせば、一定の手続きを踏むことで、就労ビザへの変更が可能です。
なお、短期滞在の期限は最長でも90日で、その有効期限内に就労ビザの許可をもらう必要があります。
早めに手続きをすることをお勧めします。
■ 採用予定者が就労できない在留資格の場合
採用予定者の在留資格が「留学」「家族滞在」「文化活動」等の場合、フルタイムでは働けません。
ただし、「資格外活動許可」を取得すれば、その決められた範囲の時間内(週28時間程度)に限り働くことが出来るので、パートタイムとしての採用は可能です。
フルタイムで雇用する場合は、就労可能な在留資格へ変更する必要がありますが、要件さえ満たせば、変更は可能です。
また、日本の大学や専門学校に通っている留学生を新卒で採用する場合、卒業する数か月前から就労可能な在留資格への変更申請も可能です。
外国から呼び寄せて雇用する場合
外国人の方を国外から呼び寄せて雇用する場合には、会社の業務の内容に合った在留資格を取得しなければなりません。
そのため、まず、業務内容に合致しそうな在留資格を調べ、採用予定の方の学歴や職務経歴が、申請しようとする在留資格の要件に合っているかどうか確認します。
海外にある日本の在外公館で外国人の方本人が在留資格の発給申請をする方法には、大きく分けて、
① 在外公館へ直接申請する方法
② 日本国内であらかじめ在留資格認定証明書の交付申請を行う方法
の2つがあります。
① 在外公館へ直接申請する方法
就労などの中長期間にわたる日本滞在を目的とする場合、事前協議方法と呼ばれる方法で審査が行われます。
この方法は、雇用予定の企業などに対して事実調査を行い、ビザ発給の可否を判断するため在留資格の発給まで多大な時間を費やします。
雇用の計画が立てにくいため、あまりおすすめはできません。
② 日本国内であらかじめ在留資格認定証明書の交付申請を行う方法
実際に多く利用されているのは、事前に日本国内で「在留資格認定証明書」を取得する方法です。
在留資格認定証明書とは、採用予定の外国人の方が日本で行おうとする活動が上陸のための条件に適合しているかどうかについて、法務大臣が事前に審査を行い、この条件に適合すると認められる場合に発行する証明書です。
あらかじめこの証明書を取得しておけば、外国人の方が本国で在留資格の発給申請を行う際、発給が迅速かつスムーズに行われます。
この在留資格認定証明書の交付申請については、弁護士が会社の代理人として申請できますので、手続に当たっては入管手続きに詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
就労資格証明書
「就労資格証明書」とは、日本に在留する外国人が就労可能な在留資格(ビザ)を取得していることを証明する文書です。
外国人を採用する際、合法的な就労資格を有しているかどうか、この「就労資格証明書」を取得することにより、就労できない外国人を雇用することを防止できます。
また、就労を希望する外国人も就労資格を証明することが可能です。
このような点から、特に「転職」の際に役立つ証明書と言えます。
- 就労資格証明書交付申請書
- 前勤務先の退職証明書及び源泉徴収票
- 現在の勤務先の雇用契約書の写し(若しくは採用通知書・在職証明書の写しでも可)
- 現在の勤務先の概要を明らかにする資料:商業・法人登記簿謄本(発行後3ヶ月以内のもの)、直近の決算報告書、会社のパンフレット等
外国人採用時の留意点
外国人雇用は採用業務から始まります。
この業務に関して、留意点を解説します。
雇用契約書を作成する
日本人を採用する場合でも、労働契約の締結に際し、使用者は賃金、労働時間等の法所定の労働条件を明示しなければなりません(労基法15①)。
このように法は、労働条件の通知を義務づけるだけですが、できれば雇用契約書を作成しておくべきです。
すなわち、労働条件の通知は、使用者の一方的な意思 表示であるのに対し、雇用契約書は労使の合意書です。
労働者の署名が記載された雇用契約書があれば、契約内容をめぐるトラブルを回避できます。
特に、外国人は日本人よりも契約意識が高い傾向にあります。
雇用契約書に記載していない事項にいては、そもそも労務を提供する義務がないという考えの方が多くいらっしゃいます。
例えば、雇用契約書に残業について記載していなければ、「そんなこと契約条項にない」などと言って、ほかの日本人が残業していても一人だけ帰宅してしまうようなことが起きます。
したがって、日本人を雇用する場合よりも詳細な労働条件を記載した契約書を作成しておいた方がよいでしょう。
そして、雇用契約書の作成については、今後のトラブルを防止するために、労働問題に詳しい弁護士に作成してもらうことが望ましいでしょう。
また、日本語を理解できない外国人の場合、雇用契約書を作成していても、「契約内容を理解していなかったから無効だ」などと主張されるおそれもあります。
そこで、日本語並記の英語等の雇用契約書を作成しておくことをお勧めします。
なお、当事務所は、弁護士が労働法令に強いだけでなく、英語や中国語等にも対応していますので、外国人相手の雇用契約書も作成可能です。
入社時に誓約書等の書類を提出させる
日本人労働者を採用する場合、多くの企業では、雇用契約書以外に、秘密保持誓約書、入社誓約書、身元保証書等を提出させています。
今後のトラブル防止のために、外国人に対しても同様の書類を提出してもらいましょう。
この場合、雇用契約書と同様、当該外国人の母国語で作成しておくことが重要です。
また、身元保証書については、法律により、保証期間の制限等があるので、労働法令に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
留学生インターンシップを活用する
外国人雇用を実施するかどうか迷っている企業は多いと思います。
そのような場合は、厚生労働省が実施している留学生インターンシップを活用されることをお勧めします。
この制度を利用し、お試しに外国人留学生を受け入れてみると、実際に雇用した場合の業務処理能力や問題点を把握することができます。
留学生の側でも就職の可能性がある企業での職務を体験できることから、ミスマッチを防ぐことができます。
なお、インターンシップ期間中における万一の事故(留学生の障害や受入先への損害の発生)に備え、国がインターンシップ保険料を負担してくれるほか、外国人雇用サービスセンターによる求人サービスなど、国の積極的な支援を受けられます。
雇用状況の届出を行う
外国人を雇い入れた企業は、雇い入れの事実があった月の翌月10日までに、ハローワークを通じて厚生労働大臣へ届出を行う義務があります。
この報告を怠った場合、30万円以下の罰金が課せられるため、忘れないようにしましょう。
なお、この届出は、正社員だけでなく、アルバイトや非正規社員でも必要です。
退去強制手続
退去強制とは、退去強制事由(入管法24条)に該当する外国人を国外に強制的に退去・送還する行政処分をいいます。
外国人を強制送還するという決定が下されるまでに、以下の手続が行われます。
- ① 入国警備官の違反調査
- ② 収容
- ③ 入国審査官の違反審査
- ④ 特別審理官の口頭審理
- ⑤ 法務大臣の裁決
特別に在留を許可すべき事由がある場合、退去強制は行われません。
① 入国警備官による違反調査
まず、入国警備官による違反調査が行われます。
容疑がないと判断されれば在留継続となります。
② 収容令書による収容
退去強制事由該当の容疑がある場合、入管法39条に従って収容令書が発布されます。
行政解釈では、全員を収容する、全件収容主義が取られています。
しかし、実際には自発的に出頭した人については収容しない運用を行っており、平成16年、このような運用の一部を法制化した「出国命令」という制度が設けられています。
③入国審査官の違反審査
その後、入国審査官の違反審査が行われます。
実務上、退去強制事由に該当すると認定される場合がほとんどです。
認定に異議を唱えず、口頭審理請求権を放棄すれば、退去強制令書が発布されます。
④特別審理官の口頭審理
認定に異議がある場合、口頭審理の請求をすることになります。
口頭審理は、入国審査官から引き渡しを受けた証拠書類をもとに、入国審査官の認定に誤りがないか審理するため、容疑者に対して、口頭により弁明・反論を聴取する手続です。
容疑者にとって有利な証拠や資料などは審理前に提出しておきます。
弁護士は、もちろんこの審理に立ち会うことができます。
口頭審理の結果、入国審査官の認定に誤りがなかったと「判定」された場合、これを争うには法務大臣に対する異議の申出を行います。
⑤法務大臣の裁決
異議の申出に対して、法務大臣若しくは各地方入国管理局長が裁決を行います。
⑥在留特別許可
在留特別許可は、退去強制手続の最終段階において、法務大臣や各地方入管局長が、本来であれば退去強制すべき人たちについて、特別に在留を認めるものです。
退去強制事由
退去強制事由(入管法24条)を整理すると、下表のようになります。
退去強制事由 | ||
---|---|---|
不法入国者 | 1 | ・有効な旅券を所持しない外国人が入国した場合 ・有効な旅券を所持する外国人で入国審査官から上陸許可を受けないで入国した場合 (例:有効な旅券を所持しているが不法上陸を意図し集団密航者の一員として入国した者) |
不法上陸者 | 2 | ・入国審査官から上陸の許可等を受けないで本邦に上陸した場合 (例:有効な旅券を所持している外国人が上陸審査にあたる入国審査官の審査のすきを突いて上陸審査場の審査ゲートをすり抜けて通過した場合) |
在留資格取消者 | 2-2 | 在留資格取消を受け、出国猶予期間を付与されなかった者・・・上陸拒否事由該当事実を秘匿する等して上陸許可の証印もしくは上陸特別許可を受けた者又は在留資格該当性を偽る等して上陸許可の証印、在留資格の変更等を受けた者が在留資格を取り消された場合 |
不法残留者 | 2-3 | 在留資格取消を受け、出国猶予期間を付与された者・・・在留資格取消制度により在留資格を取り消され出国期間の指定を受けた者で、期間内に出国せず不法に残留するもの |
不法入国等援助者 | 3 | 他の外国人に不正に在留資格認定証明書・上陸許可・上陸特別許可・在留特別許可を受けさせる目的で、文書・図画の偽変造、虚偽文書・図画作成、及びそれの行使・所持・提供、又はこれらの行為を教唆し、助けた者 |
テロリスト等 | 3-2 | テロ(公衆等脅迫目的の犯罪)行為、テロの予備行為又はテロ行為の実行を容易にする行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として法務大臣が認定する者 |
3-3 | 国際約束により本邦への入国を防止すべきものとされているテロリスト等 | |
不法就労助長行為、教唆、幇助 | 3-4 | 次のいずれかの行為をし、教唆し、助けた者 イ 事業活動に関し、資格外活動又は不法入国者、不法上陸者、在留資格を取消された者、在留資格を取り消され指定期間を経過して残留する者、その他不法残留者に不法就労活動をさせること。 ロ 外国人に不法就労活動をさせるために自己の支配下に置くこと。 ハ 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又はロに規定する行為に関しあつせんすること。 |
在留カード等の偽変造等の行為 | 3-5 | 次のいずれかの行為をし、教唆し、助けた者 イ 行使目的で、在留カード・特別永住者証明書を偽造・変造、又は偽造・変造の在留カード・特別永住者証明書を提供・収受・所持すること。 ロ 行使目的で、他人名義の在留カード・特別永住者証明書を提供・収受・所持、又は自己名義の在留カードを提供すること。 ハ 偽造・変造の在留カード・特別永住者証明書又は他人名義の在留カード・特別永住者証明書を行使すること。 ニ 在留カード・特別永住者証明書の偽造・変造の用に供する目的で、器械又は原料を準備すること。 |
専従資格外活動者 | 4-イ | 資格外活動許可を受けることなく、在留資格の活動以外の事業運営活動、報酬を受ける活動を専ら行っていると明らかに認められる者(人身取引等により他人の支配下に置かれている者を除く) |
不法残留者 | 4-ロ | 在留期間更新又は変更を受けないで在留期間を経過して残留する者 |
人身取引加担者 | 4-ハ | 人身取引等を行い、唆し、又はこれを助けた者 |
刑罰法令違反者 | 4-ニ | 旅券法23条1項(第六号を除く。)から3項までの罪(申請書類の虚偽記載等)により刑に処せられた者 |
4-ホ | 集団密入国等を助長・援助し、刑に処せられた者 | |
4-ヘ | 外国人登録に関する法令の規定に違反して禁錮以上の刑に処せられた者(ただし、執行猶予の言い渡しを受けた者は除く。)。 | |
4-ト | 少年法に規定する少年で昭和26年11月1日以降に長期3年を超える懲役又は禁錮に処せられた者 | |
4-チ | 麻薬関係の法令違反で有罪判決を受けた者 | |
4-リ | ホからチまでに規定する者のほか、昭和26年11月1日以降に無期又は1年を超える懲役又は禁錮の実刑に処せられた者(ただし、執行猶予の言い渡し受けた者は除く。)。 | |
売春関係業務従事者 | 4-ヌ | 売春又はその周旋、勧誘、その場所の提供その他売春に直接関係のある業務に従事する者(※判決を受けたかどうかは関係ない。) |
不法入国助長等 | 4-ル | 不法入国・不法上陸助長・援助者 |
暴力主義的・無政府主義的破壊活動関係者 | 4-オ | 日本政府を暴力で破壊することを企て若しくは主張し、又はこれを企て若しくは主張する正当その他の団体を結成し、若しくはこれに加入している者 |
4-ワ | 公務員への暴力等、公共施設を不法に破壊、工場事業場に安全保持の施設を脅かす政党その他の団体を結成し、若しくは加入し、又はこれと密接な関係を有する者 | |
4-カ | オ又はワに規定する政党その他の団体の目的を達するため、印刷物、映画その他の文書図画を作成し、頒布し、又は展示した者 | |
4-ヨ | イからカまでに掲げる者のほか、法務大臣が日本国の利益又は公安を害する行為を行つたと認定する者 | |
刑罰法令違反者 | 4-2 | 判決確定時の在留資格が活動資格の者対象(「日本人の配偶者等」の身分資格は対象外):傷害、窃盗、詐欺等のいわゆる粗暴犯で懲役又は禁錮に処せられた者 |
国際競技会等関連不法行為 | 4-3 | 短期滞在対象:国際競技会等経過・結果に関連して、又は妨害目的で、殺傷・暴行・脅迫・建造物破壊をした者(フーリガン対策) |
各種届出違反者 | 4-4 | 各種届出に関する虚偽届出、在留カードの受領・提示義務違反等により懲役に処せられた者 |
仮上陸条件違反者 | 5 | 仮上陸の許可を受けた者で、住居・行動範囲制限、呼出しに対する出頭義務その他条件に違反して、逃亡し、又は正当な理由がなくて呼出しに応じない者 |
退去命令違反者 | 5-2 | 上陸を許可されず退去命令を受けた者で遅滞なく退去しない者 |
不法残留者 | 6 | 寄港地上陸の許可、通過上陸の許可、乗員上陸の許可、緊急上陸の許可、遭難による上陸の許可又は一時庇護のための上陸の許可を受けた者で、旅券又は当該許可書に記載された期間を経過して本邦に残留する者 |
6-2 | 乗員上陸許可を取り消す場合に期間の指定を受けた者で、当該期間内に帰船し又は出国しない者 | |
7 | 日本の国籍を離脱した者又は出生その他の事由により上陸の手続を経ることなく日本に在留することとなる外国人で、在留資格の取得の許可又は永住許可を受けないで、在留資格を有することなく日本に在留できる60日の期間を超えて日本にいる不法残留者 | |
8 | 出国命令に付された出国期限を経過して日本に残留する者 | |
出国命令取消者 | 9 | 行動範囲の逸脱など出国命令に付与された条件に違反して出国命令を取り消された者 |
難民認定取消者 | 10 | 難民の認定を受け、在留資格をもって在留している者で、不正手段で難民の認定を受けたことが判明したもの又は難民の欠格事由に該当することを理由に難民の認定が取り消された者 |
収容と仮放免
収容
退去強制事由該当の容疑がある場合、収容令書により、収容されることとなります。
収容令書による収容期間は、原則として30日間、やむを得ない事情がある場合、もう30日間の延長ができます(合計60日間)。
この収容期間が満了しても、次は退去強制令書による収容があります。
この場合の収容は、法律上は無期限です(入管法52条5項は、「退去強制を受ける者を直ちに本法外に送還することができないときは、送還可能のときまで・・・収容することができる」と定めており、期限が規定されていません。)。
仮放免
退去強制処分を争う場合、退去強制令書に基づく収容は長期化するのが一般的です。
それに対する解放の手段としては、行政訴訟(退去強制令書発付処分の取消訴訟を提起して、それに伴う執行停止の申立て)がありますが、それと平行して、仮放免や特別放免を求めます。
弁護士は、収容されている外国人の方の代理人となって、その方の仮放免を請求できます。
この請求を受け、入国者収容所長又は主任審査官は、収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者の情状及び仮放免の請求の理由となる証拠並びにその者の性格、資産等を考慮して、仮放免を認めるか否かの判断を行います。
仮放免を認める場合、入国者収容所長又は主任審査官は300万円を超えない範囲内の額の保証金を納付させ、かつ、住居及び行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務その他必要と認める条件を付すことができます。
ただし、仮放免については、実務上、簡単には認められていませんので、請求する場合、専門家に相談されることをお勧めします。
特別放免
仮放免が許可されない場合、特別放免という制度があります。
入管法52条6項は、「入国者収容所長又は主任審査官は、前項の場合において、退去強制を受ける者を送還することができないことが明らかになったときは、住居及び行動範囲の制限、呼出に対する出頭の義務その他必要と認める条件を附して、その者を放免することができる。」と規定しています。
例えば、送還先が戦争中のような場合が考えられます。
しかし、この特別放免は、実務上、ほとんど適用されていないようです。
行政訴訟
行政訴訟とは、行政事件に関する訴訟のことで、公権力の行使の適法性などを争い、その取り消し・変更などを求める訴訟のことです。
通常の民事訴訟の特別法である行政事件訴訟法という法律によって原則的な形態が定められています。
行政訴訟の注意点
行政訴訟において、気をつけなければならないのは出訴期間の制限です。
行政訴訟において、中心となるのは取消訴訟という形態ですが、この出訴期間は、処分を知った日から6か月であり、非常に短いです。
処分があった後、迅速に動かないと取消訴訟は提起できなくなるので注意が必要です。
ケースごとの訴訟の仕方
在留資格の更新や取得の申請が不許可となった場合
この場合、不許可処分の取消訴訟を提起することとなります。
なお、取消訴訟はその名のとおり、不許可処分を取り消す訴訟ですので、法的には許可を与えるものではありません。
しかし、不許可処分の取り消しが認められると、入国管理局は再度審査をしなければならず、その際、違法と判断された前の処分と同じ理由で不許可処分にすることは許されていません。
したがって、ほとんどの場合は、取消訴訟で勝訴すると、許可を与えてくれると考えていいでしょう。
強制送還を停止したい場合
この場合、まずは退去強制令書発付手続に対する取消訴訟が考えられます。
次に、退去強制令書を発付する前段階において、法務大臣(若しくは入国管理局長)が裁決を下している場合、当該裁決を争う方法も考えられます。
裁決の違法性が認められれば、退去強制令書発付処分の取消訴訟の中で、「裁決が違法だから退去強制令書発付処分も違法である。」との主張ができるでしょう。
また、退去強制令書を争う訴訟を提起しても、それだけで行政手続が停止されることにはなりませんので、執行停止を併せて申し立てるべきです。
収容からの解放を求める場合
収容令書による収容の場合、収容令書に対する取消訴訟を提起し、併せて執行停止を申し立てる方法があります。
退去強制令書による収容の場合、退去強制令書発付処分の取消訴訟を提起して、併せて執行停止を申立てる方法があります。
上記のとおり、収容からの解放を求める場合、二つの処分を対象とできますが、実務上は後者の方法を取ることが多いでしょう。
すなわち、収容令書による収容期間は、最大で60日間(原則として30日間、やむを得ない事情がある場合、もう30日間の延長)に限られており、その後、退去強制令書による収容があります。
この退去強制令書による収容の期間は、法律上は無期限です。
そのため退去強制令書による収容の段階で争うことが多いのです。
出国命令
出国命令とは、オーバーステイの外国人の方で、自ら出国する意思を持って入国管理局に出頭した者については、収容せず、主任審査官の発する命令により出国するというものです。
要 件
- オーバーステイの外国人であること(不法入国や不法上陸は除外)。
- 自主的に出頭したこと(摘発先行は除外)。
- 出国の意思があること(在留特別許可を求めている者は除外)。
- 速やかに本邦から出国することが確実と見込まれること。
効 果
- 出国命令が出される場合、15日を超えない範囲内で出国期限が定められます(船舶等の運行の都合その他その者には責任がない事情があると認められる場合で、本人からの申出があった場合、出国期限を延長することが可能)。
- 住居及び行動範囲の制限その他必要な条件を付すことができます。
- 出国した場合の上陸拒否期限は1年間となります。
- 一度出国命令によって出国した者は、再度出国命令を受けることができません。
在留特別許可
在留特別許可が認められる例
在留特別許可について、入国管理局は明確な基準を発表していませんが、次のようなケースでは在留特別許可が認められているようです。
■ 日本人の配偶者
日本人と法律上結婚していて夫婦としての実態がある場合はほぼ認められているようです。
■ 日本人から認知を受けた子ども等
日本人の親から認知を受けた外国人の子どもやその子どもを実際に養育している外国人の親についてもほぼ認められるようです。
ガイドライン
在留特別許可について、明確は判断基準はありませんが、基本的な考え方や考慮事項等について、ガイドラインは示されています。
詳しくは以下参照をご覧ください。
法務省入国管理局
帰化申請
帰化とは、本人の希望により他国の国籍を取得しその国の国民となることをいいます。
外国人が日本の国籍を取得し、日本国民となる場合、日本に帰化するといいます。
帰化の種類
帰化には、普通帰化、特別(簡易)帰化、大帰化 の3つがあります。
普通帰化
普通帰化とは、次の要件を満たす外国人に対して許可される帰化をいいます。
- 引き続き5年以上日本に住所を有すること
- 20歳以上で、本国法(帰化前の母国の法令)によって行為能力を有すること
- 素行が善良であること
- 自己又は生計を一にする配偶者、その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること
- 国籍を有さず、または日本の国籍取得によって元の国籍を失うべきこと
- 日本政府を暴力で破壊したり、それを主張する政治活動等に参加を企てたり、それを行なった経験が無い者であること
日本人配偶者がいない外国人の方が日本に帰化する場合がこれに相当します。
特別帰化(簡易帰化)
特別帰化(簡易帰化)とは、婚姻等により一定の要件(日本人とのつながり)を満たす外国人などに対して許可される帰化のことです。
この場合、次のような緩和措置があります。
- 日本人の配偶者である場合、居住要件は5年以上から3年以上に緩和されます。
- また、婚姻後3年が経過していれば、居住要件は1年以上に緩和されます。
大帰化
大帰化とは、普通帰化や特別帰化の要件を満たさない(あるいは満たすが本人が積極的に帰化を申し出ない)が、日本に特別の功労のある外国人に対して国会の承認を得て行う帰化です。
なお、国籍法第9条に規定がありますが、現行の国籍法施行下(1950年7月1日以降)で認められた例はありません。
他の帰化のように本人の意思による自発的な帰化でなく、日本が国家として一方的に許可するものですから、本来の国籍を離脱する義務は課されません。
帰化申請書類
帰化許可申請に必要となる主な書類は、次のとおりです。
帰化許可申請書(申請者の写真が必要)- 親族の概要を記載した書類
- 帰化の動機書
- 履歴書
- 生計の概要を記載した書類
- 事業の概要を記載した書類
- 住民票の写し
- 国籍を証明する書類
- 親族関係を証明する書類
- 納税を証明する書類
- 収入を証明する書類
- 在留歴を証する書類
国籍を証する書面及び身分関係を証する書面については、原則として本国官憲が発給したものを提出する必要があります。
なお、申請者の国籍や身分関係、職業などによって必要な書類が異なりますので、申請に当たってはご相談ください。
難民認定
難民とは
難民の定義は、難民条約及び難民の地位に関する議定書の中で、「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害 を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのよう な恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」と定められています。
難民認定の申請
難民認定申請を行うことができるのは「本邦にいる外国人」です。
難民の認定を受けようとする外国人は、入国管理局等に出頭して、難民認定申請を行います。
難民の第一次審査は、基本的には地方入国管理局で行います。
一次審査で不認定処分がなされた場合には、法務大臣に対して異議申し立てができます。
日本は、1981年に難民条約に加入(効力発生は1982年)していますが、他国と比べると難民認定者数は圧倒的に少ない状況です。
難民認定の効果
法務大臣が難民の認定を行った場合には、申請をした外国人に対し難民認定証明書が交付されます。
難民認定を受けた外国人が在留資格を有しない場合、一定の除外事由に該当する場合を除き、在留を特別に許可しなければなりません。
弁護士と行政書士の違い
入管・帰化申請については行政書士も取り扱っていますが、弁護士は行政書士と比べて以下の点が異なります。
① 代理権があること
両者の大きな違いは、弁護士には、代理権があることです。
行政書士は、主に、建設業許可申請や風俗営業許可申請などの行政上の許認可申請の代行を主とする業務であり、その一環として、在留資格申請の「取り次ぎ」も行っていますが、「代理」はできません。
これに対し、 弁護士は、法律専門家としての活動の一環として、在留資格申請の「代理」も可能です。
また、例えば、オーバーステイや在留資格取消等で収容された場合、行政書士は仮放免申請の「取り次ぎ」しかできません。仮放免を申請しても、それが認められる可能性はほとんどないため、そのまま強制送還されてしまいます。
これに対し、弁護士の場合は、仮放免申請と同時に、裁判所に執行停止申請し、強制送還を停止し、場合によっては強制収容の執行停止(仮放免と同じこと)を求めることが可能です。
さらに国を相手に在留資格を認めるよう訴訟を提起することで、入国管理局の判断に誤りがないかを問うことが可能です。
② 接見交通が自由にできる
両者の違いは、強制収容案件や在留特別許可案件となると、歴然としています。
すなわち、収容されているケースでは、被収容者と面談して詳細な事情聴取と今後の打ち合わせを行う必要があります。
しかし、行政書士は、一般人と同じ扱いで、面談時間が数分に限られ、事情聴取がほとんどできません。
これに対し、弁護士の場合は、「弁護士面談」という特別な扱いになり、時間制限がないため、入念な打ち合わせが可能です。
③ 法の専門家であること
在留資格申請が微妙なケースほど、行政書士と弁護士の違いは大きくなります。
このような案件では、単に入管が要求している書類を揃えるだけでは足りません。
入管が要求する書類以外の証拠も揃え、その証拠に基づいた説得力ある主張を、展開する必要があります。
証拠を揃え、それに基づいて説得力のある主張を展開するというのは、法の専門家である弁護士でなければ不可能です。
当事務所では、簡単なケースでは事務員が書類をそろえ、弁護士が最終確認をしますが、判断が微妙なケースでは、弁護士がすべて担当して行います。
シンガポールへの進出について
企業がシンガポールへ進出する場合に、押さえておくべき点をご紹介いたします。
シンガポールの概要
シンガポールは、東京23区とあまり変わらない小さな国ですが、東南アジア、南アジアのビジネスハブとして、急速な経済成長が続いています。
一人当たりのGDPは日本を超えており、世界でも上位に位置しています。
また、国際競争力が非常に強い国であり、2011年の世界経済フォーラムの研究報告書において、世界第2位の国と評価されています。
さらに、富裕世帯の割合が世界で最も高く、およそ6世帯に1世帯が金融資産100万ドル以上を保有しているとされています。
法人税も17%と低く、また、国が外資系企業の受け入れに力を入れていますので会社の設立も簡単です。
このような状況からビジネスという点において、非常に魅力的な国といえ、日本を含めた外資系企業の進出も多く、今後ますます増えていくと考えられます。
シンガポールで企業設立するメリット・デメリット
- 会社設立が低コストで、かつ、迅速にできる(滞在1日で完了)
- 税制が優遇されている(例えば法人税率は最高17%、設立後3年間は特別優遇があり、利益10万シンガポールドルまで、無税)
- 東南アジア、南アジアの経済、交通、物流の中心地であるため、ビジネスを拡大できる環境
- 教育水準が極めて高く、優秀な人材が多く存在する
- 労働法が企業よりである(解雇の原則自由など、日本とは正反対です。)
- 中国のような暴動等がなく、政治も安定している
- 人件費が高い
- キャリアアップ思考の人が多いため退職率が高い(20%を超えることもある。)
- 貿易立国のため、諸外国の経済情勢が影響を及ぼす
現地法人を設立するには、取締役兼発起人が必要であり、少なくとも一人はシンガポール居住者である必要がある。
設立登記は、監査法人か法律事務所など専門家を通じて行わなければならない。
注意点
シンガポールは国策として、海外企業を積極的に受け入れており、会社の設立自体は簡単です。
しかし、だからといって商売が必ず成功するということではありません。
すなわち、多くの海外企業が進出しているからこそ、競争はシビアであり、多国籍企業がしのぎを削っています。
したがって、シンガポールで成功するためには、マーケット、競合他社、自社の強みと弱みを分析し、成功するための要因を検討して行動すべきでしょう。
シンガポールの教育水準は極めて高く、若い世代には優秀な人材が多くいます。
優秀な人材が集まれば、企業は成長しますが、反面、このような人材は、安定性ではなく、自らのキャリアプランを第一に考えます。
したがって日本における終身雇用といった考えなどはまったくありません。
企業は、退職率が高いということを踏まえて雇用しなければなりません。
日本企業の多くは、外国企業ではマネできない質の高い商品を製造できるということを強みにしています。
確かに、日本人の場合、少々高くても、品質の高い商品を選択するという傾向もあります。
しかし、シンガポールなどのアジア諸国では、質の高い商品をより安く入手することに美徳を感じる傾向があります。
したがって、価格競争になる可能性を十分意識して進出を検討すべきでしょう。
このように、シンガポールで成功するのは決して楽ではありません。
しかし、シンガポールは、アジアのビジネスハブであり、シンガポールへの進出は、他のアジア諸国での成功に拡大する可能性を秘めています。
したがって、海外進出先として、非常に魅力的な国といえます。