平成25年6月に公布された食品表示法が平成27年6月から施行されます。
これに伴って、新たに「機能性表示食品」という項目が設けられることになりました。
現在、食品表示に関しては、トクホ=「特定保険用食品」や栄養機能食品というものがありますが、トクホは、消費者庁長官の個別の審査を受け、認定を受ける必要があります。
他方、今回設けられる機能性表示食品は、届出制を採用しているため、消費者庁長官の個別審査はなく、事業者の責任のもとで表示を行うことができます。
また、栄養機能食品は、許可は不要ですが、対象がサプリメントや加工品に限られています。
他方、今回の機能性表示食品は、肉や魚、野菜をはじめとする生鮮食品などアルコール飲料等一部のものを除き、食品全般に使用可能です。
この制度は、20年近く前にアメリカで導入された制度を参考に作られたもので、アメリカでは、同制度導入により健康志向の高まりを背景に、市場の大幅に拡大しました。
日本のトクホ市場も制度が始まってから大きく広がり、今や様々な食品がトクホの認定を受け、CMをしています。
今回の制度により、消費者の健康意識は今まで以上に高まることが予想されます。
それに伴って、自社の製造、販売する食品に機能性表示をうまく用いることで、販売数が増加する効果も期待されます。
しかし、機能性表示は、あくまで事業主の責任においてとされているため、当該表示が不当表示とならないように十分に注意する必要があります。
そのためには、適切な法的知識が不可欠です。
また、許可は不要でも届出は必要です。
その際、安全性や機能面に関する調査を行い、それに関する資料を添付しなければなりませんので、手続面でも一定の準備期間が必要となります。
ご不明な点があればお気軽に専門家である弁護士にご相談ください。
機能性表示として認められる範囲
機能性表示は、疾病に罹患していない人に対する表示という側面から、健康の維持や増進に役立つという内容であれば、表示することができます。
逆に、医薬品と混同されるような文言、医学的な表現は用いることができません。
したがって、「診断」、「予防」、「治療」、「処置」といった表現は使用できません。
政府のガイドライン案では、以下のように示されています。
- 容易に測定可能な体調の指標の維持に適する又は改善に役立つ旨
- 身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適する又は改善に役立つ旨
- 身体の状態を本人が自覚でき、一時的な体調の変化(継続的、慢性的でないもの)の改善に役立つ旨
このガイドラインによれば、「血液をサラサラに維持するのに役立ちます」や「糖の吸収を抑える」、「消化を促進する」といった表現ができると考えられます。
なお、体全体はもちろん体の一部に効果的であるといった特定の部位に関する表現は可能です。
例えば、「この魚は○○を含んでおり、目を健康に保つ効果が期待できます。」といったような表示です。
注意点は、特定の疾病に対する治療効果や予防効果を暗示する表現はできないということです。
具体的には、「糖尿病の人に効果的」や「高血圧の人に」といった表現はできません。
また、「肉体改造」や「増毛」、「美白」といった意図的な健康の増幅を標榜するような表現も認められません。
今回の制度導入で、自社の食品の効果をどのように表現すれば、消費者の興味を引き、購買意欲を高められるかという視点が今後ますます必要となってきます。
その際は、バランスがとても重要です。
すなわち、自社の商品をよく見せようとしすぎて、効果を過大に表示しないように配慮しなければなりません。
こうしたことから景品表示法の不当表示の理解もしておく必要があります。
不当表示についてはこちらをご覧ください。
機能性表示食品は食品表示法に基づいて制定される食品表示基準(内閣府令)に規定がなされています(2条1項10号)。
その要件は以下から構成されています。
機能性表示食品の要件
対象者
機能性表示食品は、疾病に罹患していない者=病気にかかっていない人を対象としたものである必要があります。
また、未成年者や妊婦(妊娠を計画している人も含む。)も対象から除外されています。
そのため、「妊娠中に食べると赤ちゃんが元気に育つ成分が入っています!」といった表示はできないということです。
表示内容
表示内容については、効果のある成分がどのように健康の維持や増進につながると期待できるかについて科学的根拠に基づいて表示されている必要があります。
例えば、温州ミカンが「β‐クリプトキサンチンを含み、骨の健康を保つ食品です。」やホウレンソウが「ルテインを補い、目の健康維持に役立ちます。」といった表記です。
なお、機能性表示食品では、特定の疾病リスクを減らすものは除外されているため、「この食品を食べるとがん予防になる!」といった表示はできません。
また、この表示を行うためには、科学的根拠に基づいていることが必要です。
これは景品表示法で規制されている不当表示の優良誤認表示とも関わりますが、実際に販売する食品を用いた臨床実験や研究レビューによって、表示される健康効果があるということを届出の際に示す必要があります。
対象食品
機能性表示食品は、食品全般を対象としていますが、健康に役立つという側面からアルコール類は除外されています。
また、特別用途食品(健康増進法に基づく表示をする食品)と栄養機能食品も除外されています。
加えて、脂質や飽和脂肪酸、コレステロール、糖類、ナトリウムの過剰摂取につながる食品もこの機能性表示職員の制度趣旨に反するため、対象外とされています。
スナック菓子といったものがこれにより除外されることになると考えられます。
届出制
機能性表示食品では、トクホと異なり、消費者庁長官の個別の審査による許可は不要ですが、販売日の60日前までに、必要な事項を消費者庁長官に届出をしなければなりません。
対象事業者
食品表示法では、食品関連事業者(法2条3項1号)とは食品の製造、加工(調整及び選別を含む。)
若しくは輸入を業とする者(当該食品の販売をしない者を除く。)又は食品の販売を業とする者と定義されています。
すなわち、食品を製造する生産者、加工食品製造業者、輸入業者や消費者へ販売する小売業者が対象となります。
届出に当たっての考慮事項
安全性に関する事項
機能性表示食品の届出をしようとする場合、当該事業主の責任においてその食品の安全性について調査、評価する必要があるとされています。
そして、その結果を記した資料を届出の際に提出しなければなりません。
基本的には、当該食品が届出時にすでに広く消費されているものであれば、食実績により安全性が確認されているかをチェックします。
仮に、安全性の確認が不十分であれば、文献を調査したり、in vitro試験(試験管内での実験)や臨床実験も行う必要が出てきます。
また、医薬品との併用による相互作用の有無や複数の機能性成分が含まれている場合には、相互の関係性についても調査しなければなりません。
こうした調査をおろそかにすれば、販売開始後に商品の自主回収やマスコミ報道によるイメージ悪化といった事態になりかねないので注意が必要です。
特に、制度が開始されたばかりですので、しばらくは世間の関心度も高いと予想されます。
生産・製造及び品質管理に係る事項
次に、食品の生産・製造における衛生管理や品質管理の体制についても届け出る必要があります。
この点に関し、ガイドラインでは、品質管理体制が確立されていなければ機能性の表示ができないということではないとされています。
つまり、機能性表示の要件として品質管理体制の構築を要求されているわけではありません。
もっとも、この情報は消費者庁のHPを通じて消費者に開示されるため、管理体制が不十分であれば、消費者に商品を選択してもらう際にマイナス要素となりえます。
したがって、届出に際して、どのレベルまで品質体制を整えるのか事前に十分な検討が必要といえます。
届出の際の書式については、こちらからダウンロードできますので、ご確認ください。
健康被害の情報収集に関する事項
機能性表示食品の届出に際しては、健康被害の未然防止及び被害拡大を防ぐため、被害の報告を受けるための体制を国内に整備しなければなりません。
したがって、輸入商品に機能性表示を用いる場合にも、お客様センターといったものは日本国内に置いておく必要があります。
その上で、以下の情報を届け出なければなりません。
- 健康被害情報の対応窓口の名称
- 連絡先(TEL、FAX、メールアドレス等) ※電話は必須
- 対応日時
- 組織図
- 連絡の流れ、フローチャート
機能性に関する事項
機能性表示の届出には、表示しようとする機能性の科学的根拠を説明しなければなりません。
その資料として、以下の2つのうちいずれかを用意しなければなりません。
- 最終製品(実際に販売する食品)を用いた臨床実験
- 最終製品又は機能性関与成分に関する研究レビュー
この評価に当たっては、必ずしも客観的な指標だけではなく、主観的な指標も使用することはできますが、その場合には、一般的なコンセンサスが得られているものでなければなりません。
また、一般消費者向けに1000字以内で抄録を作成しなければなりません。
この抄録についても消費者庁のHPで閲覧の対象となります。
届出に必要な書類についての書式は、こちらからダウンロードできますので、ご利用ください。
ご不明な点等あれば、お気軽に弁護士にご相談ください。
当事務所のご相談の流れはこちらをご覧ください。
不当表示についてもっとお知りになりたい方はこちら
不当表示(景品表示法)機能性表示食品とは