● 家屋のブロック塀が崩れてきてそのブロックの下敷きとなり大怪我をした
● 市役所の屋根が台風で飛来してきて怪我をした
● 水路に転落して死亡した
ここでは、このような建築物・公の営造物による人身障害事故について、解説します。
工作物による事故
家屋などの建物が崩壊し、怪我を負ったようなケースは、「土地の工作物の設置または保存に瑕疵」があったとして、損害賠償請求が可能です(民法717条)。
「土地の工作物」とは、土地に接着し人工的に設備された各種の物を広く含み、道路・橋・堤防・建物及びその一部・給水タンク・広告塔・塀・擁壁・電柱・エスカレーター・遊園地施設・鉄道の軌道施設などです。
「瑕疵」とは、その物が本来備えているべき性質や設備を欠いていることで、瑕疵が最初からあるのが設置の瑕疵、後から生じたのが保存の瑕疵です。
【参考条文 民法717条1項本文】
「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。」
例えば、当該家屋に賃借人が住んでいた場合、直接の占有者である賃借人の他、所有者である賃貸人も損害賠償義務を負います(民法717条の「占有者」は、賃貸人も含まれます。)。
もっとも、賃借人が「損害の発生を防止するのに必要な注意をしたとき」は、所有者である賃貸人のみが賠償義務を負います。
所有者は、過失がなかったとしても、賠償義務を負います。例えば、家屋を建築した業者のミスであることを所有者が立証したとしても、所有者は責任を負うのです。そのため土地の工作物の所有者の責任は、無過失責任と呼ばれています。
もっとも、この場合、所有者は、当該業者に対して、求償権を行使できます。
営造物責任
家屋などは通常、一般市民が所有・占有しており、これによる事故は民法が適用されます。
これに対し、「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があった」場合、民法ではなく、国家賠償法が適用されます。
【参考条文 国家賠償法2条1項】
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
「公の営造物」とは、民法の「土地の工作物」よりも広く、国または公共団体の公の目的に供せられる有体物及び物的設備のことです。すなわち、建物等に限られず、一時的か継続的かを問いません。
公道、公園、橋、空港など、一般公衆・公共の目的に供せられるだけでなく、官公庁や公務員宿舎のように国または公共団体自身の公用に供せられるものも含まれます。
「設置または管理の瑕疵」とは、民法の土地工作物の設置または保存の瑕疵と同じ意味です。
損害賠償の範囲
くわしくは、「賠償金の計算方法」をご覧ください。
上記のような建物等の工作物・公の営造物における事故でお悩みの方は、まずは、福岡にあります当事務所にお気軽にご相談ください。