地方公務員災害補償法の規定では、遺族補償年金を受給する際、女性には年齢制限がないのに対し、男性には55歳以上とされています。
これを法の下の平等を定めた憲法に違反するのではないかと争われた訴訟の上告審判決で、最高裁は、「合憲」とする初判断を示しました。
遺族補償年金とは
業務または通勤が原因でなくなった労働者の遺族に対し、遺族補償給付(業務災害の場合)または遺族給付(通勤災害)が支給されます。
この遺族(補償)給付のうち、年金形式の補償が、遺族(補償)年金です。
一時金形式の補償もあります。
受給資格者
遺族(補償)年金の受給資格者となるのは、被災労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた(共稼ぎの場合も含む)配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹です。
しかし、妻以外の遺族については、被災労働者の死亡当時、一定の高齢又は年少であるか、一定の障害の状態にあることが必要です。
判例の事例で問題となった点
今回の最高裁判例の事案は、中学教諭であったものの、業務を原因としてうつ病を発症したために自殺した妻の夫である遺族の男性が、遺族補償年金の支給を申請したものです。
しかし、この男性は、妻の死亡時に51歳であったため、不支給となってしまいました。
そのため、遺族補償年金の支給要件の男女における年齢制限の格差が法の下の平等を定めた憲法に違反するか否かが争われました。
遺族補償年金の受給資格において、「配偶者」である女性には年齢制限がありません。
一方、「配偶者」である男性には、「55歳以上」という年齢制限が存在します。
このような受給資格の要件に男女差が存在するため、この男女間における「差別」が「合理的」であり憲法に反するか否かが問題となったのです。
最高裁の判断
最高裁は、この点について、「男女間における労働人口割合の差や賃金格差、雇用形態の違いなどを考慮すると、妻に年齢制限を設けないことは、不支給とした当時も合理的な理由があった」と指摘し、夫に年齢制限がある規定は憲法に違反しないと結論付けています。
現在は、女性の社会進出が一定程度進んだとはいえ、未だに労働人口割合の差、賃金格差や雇用形態の違いという日本の現状があるため、それを踏まえて、遺族補償年金の受給要件に男女差を設けることが不合理な「差別」ではないとされました。
もっとも、今後、将来において女性の社会進出がより進み、男女における労働の格差が減少した場合には、この要件が憲法に反するとされる日がくるかもしれません。
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