今年7月に、選挙権が得られる年齢が18歳以上に引き下げられる改正公職選挙法が可決、成立し、来年夏の参議院選挙から施行される見通しとなっています。
また、9月に入り、自民党の成年年齢に関する特命委員会は、民法上の成人年齢を「18歳」に改め、少年法の適用年齢も「18歳未満」に引き下げるよう求める提言をとりまとめました。
他方で、飲酒、喫煙の解禁年齢の引き下げは見送られました。
このように、現在、政府では、選挙権だけでなく、あらゆる場面で、20歳以上に認めていたものを18歳以上に引き下げようとしています。
今回は特に、民法上の成人年齢が18歳に引き下げられると、どのような影響があるのかについてご紹介したいと思います。
①取引の保護が受けられなくなる
民法上、未成年者の法律行為については、原則として親権者の同意が必要とされています。親権者の同意なく未成年者が法律行為を行った場合、その法律行為は取り消すことが可能です。
このように、これまでは20歳までは、行った法律行為を取り消すことができる可能性があり、未成年者として取引上大きな保護を受けていました。
しかし、成人年齢を18歳に引き下げると、18歳以上の人は、今後はこの保護を受けることができなくなります。
たとえば、親権者である親の同意を得ずに20歳未満の子XがYから100万円を借りて返す契約をした場合、これまでは親が、XがYとの間で結んだ契約を取り消すことができました。
しかし、仮に18歳以上を成人年齢に引き下げると、子が18歳未満の場合しか契約を取り消すことができないことになります。
②親権との関係
現在は、20歳までは、父母の親権の対象とされています。具体的には、親権者には①の未成年者の法律行為の同意権、取消権のほか、未成年者の婚姻に対する同意権などが認められていました。
他方で、父母が離婚した場合の養育費については、現在は、原則として、未成年者が成人するまで、すなわち20歳まで、親権者はもう一方の親から支払をうけることができると考えられています。しかし、これも成人年齢が18歳に引き下げられると、養育費が原則として18歳までしか支払ってもらえないこととなる可能性もあります。
未成年者の成人年齢を引き下げる目的には、若年者が将来の国づくりの中心であるという国としての強い決意を示すことにあるとされています。
また、若者が大人としての意識を持ち、自分の行動に責任をもつ意識を促すという意味でも、成人年齢を引き下げることは一定の効果が期待できるでしょう。
日本でも、成人年齢が18歳以上とされていた時代もあったことを考えると、18歳以上に引き下げることは不可能ではないでしょう。
しかし、未成年者であることで、現在、20歳以下の者は、法律上あらゆる場面で保護を受けています。成人年齢を引き下げるということは、この保護を受ける期間が短くなることであり、法律上のあらゆるリスクを負う年齢も引き下げられるということにつながるのです。
また、上記以外でも、自立できない貧困な若者を増やすことにつながるおそれも指摘されるなど、成人年齢引き下げの課題は山積みです。
成人年齢の引き下げに関しては、今後も動向を見守る必要があります。
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