最近賑わいを見せている相撲業界ですが、先日、最高位の行司の方が、若手行司にセクハラをしたというニュースが話題になりました。
(ちなみに、行為の状況が不明ですが、数回キスをして胸を触ったということで、態様としては刑法上の強制わいせつ罪にもあたりうるのではないかと思いますが、ここでは便宜上セクハラとして語ることにします。)
今回の話題の報道を見ていて、二つの問題を考えさせられたので、ここで少し考察をしていきましょう。
セクハラの相手が同性?
まずは、セクハラの相手についてです。
この点については、ニュースが流れた際、少し疑問に思った方もいらっしゃったのではないでしょうか。
行司といえば、相撲の審判のような役割を果たす人であり、重要な役職です。
そして、大相撲の土俵には女性が上がることができないというのは有名なことでしょう。
そうすると、今回の若手行司というのは男性であり、同性同士のセクハラということなのか・・・?
こういった疑問を持った人がいたのではないかと思います。
行司は男性しかいないことを考えれば、自ずと上記の答えとしては、男性同士のセクハラであったということになります。
セクハラというと、会社の飲み会で、男性上司が女性の部下に最近の交際状況を聞いたりするなど、わいせつなことを聞いたりするのが典型的なものであるように思えますが、当然の事ながら、女性から男性へのセクハラもありますし、男性同士、女性同士のセクハラもあります。
これについては、厚生労働省が、2013年12月に男女雇用機会均等法の指針を改正した中で、同性間でもセクハラに該当することを明示しています。
しかし、考えれば当たり前のことです。
セクハラというのは、男女雇用機会均等法においては、
「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したり抵抗したりすることによって解雇、降格、減給などの不利益を受けることや、性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること」
と定義されています。
同法では、特に異性間といった限定をしていませんし、そもそも性的に不快に思う発言というのは異性でも同性でも同じはずですから、区別すること自体が平等に反します。
このように性的な問題が同性同士でも同様の問題であるということは、刑罰にも反映されています。
2017年には、強姦罪も強制性交等罪と名称を変え、長年女性だけが被害者として規定されていた強姦罪の被害者について、性別を問わないという法改正がなされました。
今回の件で、同性同士ってセクハラになるのかなと思った方は、セクハラに限らず、いわゆる強姦や強制わいせつなどにおいても、同性か異性かということは関係ないのだということを覚えておいて下さい。
同性同士ということに対する行司やメディアの対応
今回の件について、今回加害者となった行司の方は、「自分は男色の趣味はないので、なぜこのような行為をしたのか分からない」と述べているとメディアは報道しています。
「男色の趣味はない」というのは、何を意図しているのでしょうか。私は、このような発言が出るのは、自分は同性愛者ではない、ということを外部に示したのではないかと考えています。
つまり、現代社会において、LGBTの方々が少しずつ認知度を高めてきているのですが、同性愛と思われることは不名誉なことであり、同性愛とは思われたくない、という思考が働いているのではないかと思います。
現に、ネット上では、加害者の行事について「ホモ疑惑」「ゲイ?」などといった投稿もあります。
メディアの報道でも、コメントをした人が、「私は手を握られたことはないです。」と笑うシーンがありました。
これらの反応を見ていると、LGBTに関する理解というのはまだまだ不十分であり、差別はなくならないのだと感じさせられます。
今回の件で、問題であるのは、加害者の行事の方が行なった行為によって、若手の行事の方が不快な思いをしたことであって、行事の方が男色だろうがなんだろうがどうでもいいはずなのです。
それにもかかわらず、その点について強調するような報道があることは、その点にフォーカスする方が視聴者等の興味を惹けるという判断があるのでしょう。
もう一つ、LGBTの視点からは、男色の「趣味」という発言にも問題があります。
異性愛を趣味という人はいないはずでしょう。同じように、同性愛も趣味ではありません。
しかし、同性愛を「趣味」と表現するこの発言に疑問を呈する人は少なかったと思います。
相撲業界は、古い体質だと批判されているのを見受けます。しかし、相撲業界だけではなく、メディア、一般市民も未だ古い日本の考え方に囚われているように思えます。
当事務所では、LGBTに注力する弁護士と刑事弁護に注力する弁護士が在籍しており、同性間でのセクハラ問題や性的犯罪についても対応しております。
加害者になった場合でも被害者になった場合でも、一人で悩まずに当事務所にご相談ください。
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