消費税の税率が上がるのはご存知ですか?
消費税は、平成元年から導入された税金ですが、導入当初は3%であったものが、現在(令和元年6月時点)において、8%まで引き上げられ、令和元年10月1日からは、10%に引き上げられる予定となっております。
この消費税ですが、今までは消費に対して一律10%の消費税をかけていましたが、今回の引き上げからは一律ではなく、一定の物品について8%の軽減税率の対象となっております。
そして、その軽減税率の対象になるかは、かなり微妙な判断が必要な場合もあり、同じものを買っても、かかる消費税が異なるということがあり得るのです。
今回のコラムでは、今後、コンビニやスーパーで買ったものはどうなるのか?といった身近な疑問も踏まえて、解説をしていきたいと思います。
※なお、このコラムは皆さんに新しく軽減税率のある消費税が導入されることでどのような影響があるかを説明するものであり、詳細な法律の解釈などをお伝えするものではありません。
そのため、一部法律用語とは異なる一般的な用語を用いている場面があります。
また、消費税の軽減税率の適用があるかの個別的判断は具体的事情により異なりますので、その点はご留意ください。
原則と例外
軽減税率
① 飲食料品の譲渡
② 定期購読契約が締結された新聞の譲渡
①は、飲食料品の譲渡ということで、多くの人が毎日のように取引を行っているもので、かつその適用関係が複雑になることが予想されるところだからです。
通常の消費者である皆さんは、お店から提示された金額を支払うだけかと思いますが、個人事業を行っていたり、会社で飲食料品を購入する場合には、どちらの税率が適用されるかを気にしなければならない場面も出てきますので、その点についても後述しようと思います。
軽減税率の対象
「飲食料品の譲渡」とは?
「飲食料品」とは
軽減税率の対象である「飲食料品」は、食品表示法に規定する食品とされています。
ただし、酒税法に規定する酒類は除かれますので、お酒類は基本的に軽減税率の対象ではなく10%の消費税がかかります。
それでは、食品表示法規定する食品とはどのようなものでしょうか、ご飯やパン、野菜や果物をはじめ、添加物などもこれにあたり、一般的に考える飲食料品と考えて問題はありません。
しかし、飲食料品は、「人の飲用又は食用に供されるもの」に限定されますので、その点は注意が必要であり、同じものでも該当する場合としない場合があり得ます。
もっとも、この飲食料品に該当するかが問題となる場面もあるので、その点は後述する具体例で考えてみましょう。
「譲渡」とは
軽減税率の対象は、「飲食料品」全般ではなく、飲食料品の「譲渡」と限定されています。
そのため、単なる飲食料品の「譲渡」ではなく、役務提供を伴うようなものであると、軽減税率の対象ではなくなるのです。
この点も、同じものを同じお店で買った場合に、テイクアウトしてその店以外のところで食べるのか、イートインとしてお店で食べるのかによって税率が異なるなど、適用関係が複雑なところがあるので、後ほど例を交えて解説していきたいと思います。
飲食料品の入れ物の扱い
また、飲食料品を譲渡する際には、その入れ物であったり、ラッピングであったり、送料であったりと、純粋に飲食料品だけの譲渡とはいえないことがほとんどかと思います。
その場合に、いちいち入れ物と飲食料品の値段を区別して税率を変えるのは煩雑ですから、通常必要な包装材には軽減税率が適用されることになります。
一番わかりやすいのは、缶コーヒーでしょう。
缶コーヒーは、厳密に考えれば「コーヒー」と「缶」のセット販売のようなものです。
しかし、コーヒーだけで売ることは現実問題として無理ですし、一般的に考えても缶を含めてコーヒーという飲食料品を買っていると考えることになりますので、缶だけを別に考えるということはせずに、缶コーヒーはそれ全体を軽減税率の対象としています。
「一体資産」の該当性
さらに、飲食料品とおもちゃなどが一体として販売される場合に、どの部分に軽減税率が適用されるのかが問題となります。
これについては、「一体資産」というのが定められており、これに該当すれば、飲食料品ではない部分にも軽減税率が適用されることになります。
一体資産と判定されるのは、①税抜価格が1万円以下であること、②一体資産の飲食料品の価格の割合が合理的な方法により計算した割合の3分の2であること、の2つの要件を満たす場合です。
今回のコラムでは、この一体資産については解説しませんが、詰め合わせ販売や、組み合わせでの販売などがされる場合に、一体資産かどうかで軽減税率の適用の可否が変わることくらいは知っておいて損はないでしょう。
具体例で考えよう!
~飲食料品~
下記では、様々な具体例を交えて、飲食料品に該当するかを考えていきます。
飲食料品とは、「人の飲用又は食用に供されるもの」ですので、これを念頭において考えてみましょう。
水は、当然飲食料品に該当しますので、その譲渡には、消費税の軽減税率が適用されます。水が飲食料品に該当するのは当然と思われるかもしれませんが、一方、水道水は、飲用以外にも炊事洗濯に用いられるということで、軽減税率の対象にはならないとされています。一口に水と言っても、飲食のために用いるかで区別しているのです。
しかし、氷は保冷のために用いられることも多く、その用途のために販売されている場合には、飲食の用に供することが予定されているわけではないので、軽減税率の適用はないとされています。
水と同様に、その用法によって軽減税率の適用があるかが分かれるのです。
もっとも、みりん風調味料などのアルコール1%未満のものは、軽減税率の対象となります。
もっとも、金箔を食用以外の用途に用いるものとして販売されている場合には、軽減税率の適用はされません。
金箔は一見すると飲食料品ではないですが、食品衛生法に規定する「添加物」とされていますので、その限りで飲食料品と言えるのです。
ただし、医薬品等ではない単なるエナジードリンク(清涼飲料水)などは、飲食料品として軽減税率の対象となります。
そのため、酒類については、酒税の関係だけではなく、消費税の関係でも税金が変わってくることになります。
逆に、穀物を人間が食べる前提で売っている場合には、それを購入した人が動物にその穀物を与える目的だとしても、軽減税率の適用があります。
具体例で考えよう!
~外食~
下記では、様々な事例を交えて、軽減税率の適用がある「譲渡」に該当するかを考えていきます。
軽減税率の適用に関しては、飲食料品の「譲渡」だけではなく、「食事の提供」という役務の提供を含む場合を除外しています。
いわゆる「外食」や「ケータリング」を適用除外にしていると考えていただいて結構です。
ただし、どこまでが外食なのかなど問題は多いところです。
なぜなら、そのお店が提供している飲食設備(テーブルや椅子など)のある場所で食べる場合には、食事の提供という役務がありますので、純粋な飲食料品の譲渡ではないからです。
一方、テイクアウトしてお店ではなく、公園や家で食べる場合には、消費税の軽減税率が適用されます。
もっとも、お店側としては、お客さんが「テイクアウト」と言って購入したハンバーガーを店内でこっそり食べていたとしても、消費税が10%に変更する必要はありません。お店としては、販売する時点で意思確認をしていれば足りるのであって、それ以降の事情は消費税の税率に影響しないといえます。
フードコートの飲食設備は、それぞれのお店が提供しているものではなく、その建物の運営者が設置してシェアして使っていると思いますが、お店と飲食設備の設置者が契約に基づいてその飲食設備をお客さんに利用させる予定がされているので、これも食事の提供という役務があるといえるのです。
もっとも、フードコートでアイスクリームを買って外で食べようとする場合など、飲食設備を用いない場合には軽減税率の適用はあります。
例えば、公園の横の土地を借りて屋台をしているお店が販売したものを、お客さんが隣の公園で食べるとしても、それは飲食料品の譲渡であるテイクアウトになりますので、軽減税率の適用はあります。
一方、公園などで行われるイベントなどで、その公園のベンチがイベント利用者しか利用できないようになっており、そのイベントで販売されているものを食べるための場所として提供されているような場合には、公園で飲食することが食事の提供を伴うイートインと解され、軽減税率の適用はないことになります。
具体例で考えよう!
〜コンビニでの例〜
さて、現代人には欠かせないものとなったコンビニの買い物を例にとって、具体的に買ったものが軽減前税率の適用になるかを考えていきましょう。
具体例 コンビニ大好きAさんの一日
コンビニを毎日利用するAさん。
令和元年10月1日に、毎朝の日課のように会社の目の前のコンビニで買物をして会社に出勤しました。
その時のAさんの発言や会話を見てみましょう。
〜Aさんがコンビニに入る。
〜おにぎりコーナーで立ち止まるAさん
あと、大事なプレゼンもあるし、栄養ドリンクも買っておこうかな。
〜税抜き100円のおにぎり2つと税抜き200円の栄養ドリンクを手に持ってレジにいくAさん
あれ、でも、お会計は432円じゃないんですか?
そちらのエナジードリンクだと軽減税率なんですけどね・・・。
まぁ4円だけなんでいいですけど、栄養ドリンクは10%でエナジードリンクは8%って不思議ですね。
他にも軽減税率の対象にならない飲食料品もあるようなので、気をつけないといけませんね。
お買い上げありがとうございました。
〜朝からちょっと頭を使ったAさん。
プレゼンを終えて、お昼を食べに同僚のBさんとCさんとコンビニへ
あ、この唐揚げ弁当(税抜400円)にしようっと。
〜それぞれレジに並ぶAさん、Bさん、Cさん
なんでだろう。今までこんな張り紙なかったのになぁ。
イートインコーナー利用の場合は、消費税が10%となります。
私も詳しいことは知らないのですが・・・。
〜BさんとCさんと合流したAさん
わたしはイートインを使わないから、お弁当は432円だったよ。
Aさんは、440円だったの?
なんかちょっと損した気分だよ・・・。
おれは、レジで何も言わなかったから、432円だったよ!
知ってても、わざわざ言うの面倒だなって思うけど・・・。
~ちょっと落ち込むAさん、帰りもコンビニに寄っていくことに
あと、タローのおやつとしてペットフード(税抜200円)も買っとくか。
〜レジに商品を持っていくAさん
商品を見て、これって軽減税率の適用なのかとふと考える
これって、ビールとペットフードも飲食料品ですけど、消費税は10%なんですか?
ペットフードは、人間が食べるものではないので、飲食料品ではなく、10%だそうです。
まとめ
令和元年10月1日以降は、消費税が8%と10%の2つが混在することになり、その軽減税率の適用関係が問題となってくる事案もあるかと思います。
お客さんとして買う分には消費税の税率で困ることはほとんどないと思いますが、一方で自ら事業や会社をしている場合には、消費税の税率の判断は大変重要になってきますので、その場合は顧問税理士や弁護士に相談しながら、しっかりと対策をされてください。
また、消費税増税にともなって、一部のキャッシュレス決済の場合限定で、支払いに2%か5%のポイントがつくという施策もなされるようです。
ただ、この施策が適用される事業者には要件があり、大手の百貨店は対象外であるなど、その制度も複雑です。
今回の消費税増税は、かなり大きな影響があると思われますので、しっかりとその動向を把握し、その都度対応していくことが求められることになります。
もし不明なことがあれば、税理士や弁護士に早めにご相談ください。
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